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「モズレイスキャンダルは、なぜ笑える」
文/柴田久仁夫
確かに、深刻な事件である。世界中のモータースポーツ組織を統括するだけでなく、加盟百数十カ国の自動車クラブの頂点に立つFIA(国際自動車連盟)。その会長であるマックス・モズレイが、売春婦5人とナチまがいの集団プレイをしていたことが暴露されたのだ。
その報道直後の4月4日から中東で開催されたバーレーンGPでは、当然ながら関係者の話題はそこに集中した。それ以外のことは、ほとんど考えてなかったと言っていい。「この週末は、やっぱりフェラーリが優位のようだ」などと話していても、最後には「ところでマックスの一件だけどさ」で締めくくられるという具合。
モータースポーツにとどまらず、自動車業界全体のイメージダウンを憂える声も多かった。しかし、である。真面目な話をしていても、みんなどこか目が笑っているのである。このスキャンダルにまつわるジョークも、週末だけでずいぶん量産された。たとえば「レギュレーション違反は今後、罰金の変わりにむち打ち100回」とか。あまりレベルの高いジョークではないが、言っていたのはFIA関係者であった。モズレイ会長が常日頃、いかに部下たちに慕われていたかが窺えて面白かった。
あるいは、マクラーレンのピットウォールに並んだモニターに集団プレイの映像が映し出され、その前でロン・デニス代表がガッツポーズを決めている画像が、またたく間にメールで配布されたりもした。蛇足ながらこれは去年のスパイ疑惑事件で、マクラーレンが100億円の罰金を科された事件を踏まえての「傑作」である。
こんな風にみんながこの一件を笑わずにいられなかったのには、いくつか理由があると思う。娼婦との集団プレイを自ら録画し、あるいは隠しカメラに撮られていたのを、全世界に公表されてしまったマヌケさに対して。そしてFIA会長ともあろう人が、あんなことをしていたという意外さ。笑いは意表を突かれた時に、しばしば起こるものである。
そして何より、「笑ってでもいないと、やってられない」という、やり切れなさもある。あれだけ他者を厳しく糾弾し、容赦ない罰を加え続けていた男が、実はこんなことをしていた。「私はナチプレイはしてない」と本人は抗弁しているが、もはやナチ風だったかどうかが問題ではないことに、彼は気付いていない。
さらにモズレイ会長は、「陰謀にはめられた」とも言っている。確かに、そういう面はある。しかし去年のスパイ疑惑の際、会長自身が「入手経路、あるいは入手方法がどんなものだったかではなく、事実そのものが重要である」として、マクラーレン以下を断罪している。今回のセックススキャンダルも、その言葉が完全に当てはまるはずだ。だが、そのことに気付かない、あるいは気付かないふりをしているモズレイ会長が哀しくて、われわれは嗤うしかないのである。(了)
2008年5月 7日 12:03|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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