黒田博樹が成功する理由
文/奥田秀樹
黒田博樹はドジャーズの4番手の先発投手として開幕をスタートしたが、じきにエースになるのでは、ふとそう思った。速球が95マイルに届くから、スライダーやスプリッターがいいから、そんな理由ではない。彼の戦う姿勢だ。
2試合目、ダイアモンドバックスに3対4と逆転負けを喫した。ラッセル・マーチン捕手は「今日のスプリッターは前回(パドレス戦)ほど落ちなかった」と話したが、相手打者を追い込みながら決めにいったスライダーやスプリッターを拾われた。2−0なり2−1のカウントで12打数5安打、1死球である。滑るボール、硬いマウンド、初めての球場。環境の変化に、細かいコントロールがつかなかったのだろう。
しかし、今日の調子はどうだったのかの質問にきっぱりとこう返答した。
「調子で野球をやってしまうと難しい。今日が自分の中でベストと思いながらやらないと。ベストを心がけてこういう結果だったので。また次もベストのピッチングができるよう調整しようと思う」。
黒田は言い訳はしない。開幕直前、登板のない日のインタビューで「生活面は問題ないけど、野球に関しては適応に時間がかかる」と珍しく認めたことがあった。「日本なら悪いなりにピッチングができた。ゆえにコンスタントに勝ち星を積み上げられた。こっちでそんなピッチングができるかどうか不安はある」。だが普段は弱音をはかない。どんな環境であろうとチームに勝つチャンスを与えるのが、自分の仕事と考えるからだ。
6回表、ジェームス・ローニーの本塁打でドジャーズが3対2と勝ち越した。このリードを守ってブルペンにつなげなければならない。
6回裏、好調ダイアモンドバックス打線は、セーフティバント、右前打で1死1・2塁と攻め立ててくる。迎えるは投手のミカウ・オーイングス。昨季、打率・333(60打数20安打)4本塁打で、メジャーで最もバッティングがいい投手だ。
黒田はこの時点で球数が百球に近づいていた。今季、球数が三桁に届いたことは一度もないし、ジョー・トーリ監督も「疲れているだろうな」と感じたという。
それでも渾身のピッチングを見せる。速球でコーナーをつき、スライダーをはさんでカウントは2−2。百球目、その日の最速、95マイルを外角低めに投じた。しかし判定はボール。続くスライダーもわずかに外れて四球。「あそこで決めに行って決め切れなかったのが、ああいう結果になった」。2打者後、エリック・バーンズに甘い初球のスプリッターを左前にはじき返され、逆転を許したのである。
でもトーリは黒田のピッチングに納得していた。「あの場面で、ここぞという球を投げていた。投手を歩かせたけど、悪い四球ではなかった。ボールはよかった」と振り返るのである。
プロの投手なら、調子がよければ誰でもいいピッチングはできる。問題は駄目な日、あるいは疲れているときに、いかに投げるかだ。負けた試合に、黒田のエースとしての気質が見えた。広島カープからロサンゼルス・ドジャーズに移っても、それは変わらないのである。
2008年5月 7日 12:04|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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