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雨で覆い隠された北京の大気汚染

 日本マラソン陣にとって大誤算だったと言っていいだろう。
 4月20日午前7時半。北京の中心部、天安門広場に鳴り響いた号砲がマラソンの北京五輪テスト大会のスタートを告げたが、30分もたたないうちに雨が降り始め、時間の経過とともに激しさを増していった。


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 北京五輪のメーンスタジアムで、「鳥の巣」という愛称で呼ばれる国家体育場までの42・195kmが8月の五輪本番と同じとあって、男子の尾方剛、佐藤敦之(ともに中国電力)、女子の土佐礼子(三井住友海上)の3人のマラソン代表が参加。練習の一環として走った中でコースの特徴や勝負の仕掛け所の確認、路面の硬さといった情報は得ることができたが、日本勢がもっとも知りたかった点は雨で浄い流されてしまった。
 北京五輪のマラソン競技においては、2時間4分26秒の世界記録を持つハイレ・ゲブレシラシエ(エチオピア)が不参加を表明している。北京の大気汚染が持病の喘息に悪影響を与えることを懸念しての決断だったが、実際、IOC(国際オリンピック委員会)のジルベール・フェリ五輪執行局長はマラソンなどの長時間競技について「状況に応じて時間変更や延期を検討する」と明言している。
 直前での競技の変更や中止は過去に例がなく、それだけ人体へのダメージが極めて深刻視されていることの証明とも言える。
 選手に最も影響を与えると見られているのは「粉じん」だが、その飛散を抑制する有効な手段がある。昨年8月に北京市内の大気を調査しているJOC(日本オリンピック委員会)情報医科学委員会の杉田正明委員(三重大学准教授)はこう言う。
「雨が降り、風が吹くことです。特に雨が降った後は、空気が極めてきれいになります」
 果たして、プレ大会は最後まで土砂降りの雨。2時間46分26秒の4位でフィニッシュした土佐は「見た目は悪いかもしれないけど、走っていて何も感じなかった」と大気汚染を意に介さなかった。


 しかし、レース後に戻ったホテルの部屋で、尾方は自らの目を疑うような経験をしている。
「雨で濡れたウエアを持ち帰るのが嫌だったのですぐ洗いましたが、絞ると真っ黒い水が出てきて。黒っぽいウエアだったので目立たなかったみたいですけど、かなり汚れていました。大気汚染の影響なんですかね」
 雨のアシストがあっても、粉じんをすべてシャットアウトすることはできなかったのだ。
ましてや、中国はヨウ化銀の粒子を大気中に散布することで、降雨を人工的にコントロールするノウハウを持っている。大会の華の一つであるマラソンが雨に見舞われるようなら、全世界へのテレビ映りなども考慮して、躊躇なく自然を「変える」こともありうるかもしれない。
 雨は翌21日まで続いた。年間降水量が日本の半分以下の700ミリで、その75%が夏季に集中する北京において、これだけのまとまった降水は「非常に珍しい」(市内在住の日本人女性)という。
 大気汚染への批判を覆い隠すためにプレマラソンでは人工的に雨を降らせた、と捉えるのは考えすぎだろうか。
 プレマラソンにはアシックスのシューズ職人、三村仁司氏も同行してコースをチェックし、選手からシューズに対するヒアリングも行った。日本勢が携えた手土産の中にしかし、大気汚染への警戒心や対処法は含まれていない。 (文・藤江直人)
(5月22日発売 「論スポ!」創刊号にて詳細掲載)

2008年5月 7日 12:06|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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