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日本女子バスケットが北京五輪に出れなくなった日 特別現地レポート 三上太
【FIBA女子オリンピック世界最終予選/2008年6月14日@スペイン・マドリッド】
応援団は最後まで声援を送り続けていた。その声を受けてもなお、最大18点まで開いた得点差をひっくり返すまでには至らない。吉田亜沙美(JOMO)が放った3ポイントシュートがゴールにかすることもなくコートに落ちると同時に、試合終了のブザーが鳴る――58対66の敗戦。北京オリンピック出場を目指し、世界最終予選に臨んだ女子バスケット日本代表がキューバ代表に敗れ、その道を完全に絶たれた瞬間である。
2日前の大会休息日、相澤優子(シャンソン化粧品)は予選リーグの戦いぶりをこう振り返っていた。
「もっと試合に出たい。特定の人に負担がいきすぎているから疲れちゃって、1本のリバウンドだったり、1回のディフェンスだったりが勝負になってくるときに踏ん張りがきかないっていうのがあるかな。もう少しお互いが協力し合って、勝負所に焦点を合わせられればって思うんですけど...」
予選2試合で平均7分しか出場していない相澤だが、その言葉の真意は単純にゲームに出たいというものではない。サッカーや野球と違い、5つのファウルで退場しない限り、何度でも交替が可能なバスケットにおいて、ベンチメンバーは必要不可欠な存在である。そのベンチメンバーとしてゲームを見る中で、今コートで出さなければいけないプレイを発揮できるのは自分ではないか、その思いが相澤のこの言葉には込められている。
「代表選手は12人の集まりだけど、そのなかにはボールが来るのを待ってシュートを打つ人と、ほかの選手を生かすために動く人っていうのが、意識はしてないけど、自然とそういう役割に分かれるんです。12人の選択肢の中でコートに立つ5人が、今は誰がどの役になるのかっていう組み合わせがうまくいってない。組み合わせがよくないからボールの回りもよくなくて、本来の日本の攻めができてないって思うんです。だからシュートを入れたくて出て行くんじゃなくて、ほかの選手を生かすために試合に出たいんです」
バスケットボールはけっして広くはないコートの中で、5人対5人で戦うスポーツである。個人技に優れた国ならば何の問題もないのだろうが、上背はない、パワーも劣る、跳躍力も低い、強いていえばスピードはあるが、それとて海外のチームと同等である、という日本である。となれば、「1+1+1+1+1」が5ではなく、6にも7にもなるような組み合わせが必要になるわけだ。
「166cmの私からしてみると、相手の180?以上も190?以上もみんな一緒なんですよね。その身長差なんて最初からわかりきっていることだから、試合に出るメンバーの1人が166cmから172cmになったから何だっていう問題でしょ(笑)。何かを生かそうと思えば、それぞれの役割が必要になってくるんです。ボールを受ける人と渡す人とがうまくかみ合ったほうが、本来の日本の形が出てくると思うんです」
大神雄子(フェニックス・マーキュリー)がアメリカでWNBAに挑戦しているとき、合宿中の日本代表で「司令塔」ともいうべきポイントガード(以下PG)を務めていたのが34歳の相澤である。しかし大会本番を迎えるにあたり、内海知秀ヘッドコーチが下した判断は「スタメンPG・大神」。1ヶ月半に渡りチームを牽引していた相澤だったが、自分がスタメンの席を譲ることで北京の切符を取れるのなら甘んじてその判断に従おうと考えた。だが、それはベンチメンバーであっても、自分が必要とされる場面が必ずあり、そこで自分の力を発揮すれば、大神の力もさらに生きると考えたからだ。
しかし、オリンピック出場の最後の1枠をかけた戦いでも、相澤の思いが実を結ぶことはなかった。ヘッドコーチの判断とはいえ、流れを変える役割として相澤がキューバ戦でコートに立った時間は4分23秒。もう一人の控えPG・吉田の動きが冴えていたということも要因としてはある。しかし、世界で勝つためには「得点力が必要」と常々言っていた内海ヘッドコーチの言葉を鑑みれば、相澤の出場時間がもっとあってもいい。いや、得点力アップのために相澤を代表入りさせたはずだ。結果としてだが、予選リーグから4試合、日本の得点は71、69、64、そしてこの日の58と徐々に下がっている。にもかかわらず、攻撃の流れを作る相澤が起用されることはなかった。
キューバ戦後のミックスゾーン。
「こういうことを言ってはいけないのかもしれないけど、今ほしい戦力が、自分ということではなく、コートにいないような気がします。今後の日本については、やっぱり合宿が短い期間ということもあるけど、やっぱり選手の特徴がコートの上で発揮されるような試合をしなければいけないと思いましたね。批判ではなく...」
目には涙を浮かべている。そういう意味でも悔しいゲームでしたねと話を向けると、溜まっていたものが一気に流れ始めた。
「結果が見えているのに...手をこまねいて見ていなければならないのが悔しかった...」
流れのあるスポーツには必ず「勝負所」がある。その勝負所で勝負を仕掛けるには、そこに至るまでの選手起用が絶対的にものをいう。身体的に劣る日本が世界で戦うためには、選手の技術やスタミナももちろんだが、大局観を持ったベンチワークも必要になってくる。突きつけられた課題はとてつもなく大きい。(文責・三上太)
2008年6月16日 00:32|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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