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サッカーU‐23日本代表の敗因とこれから
U‐23日本代表の北京五輪が1試合を残して終焉を迎えた。ナイジェリアに1対2で敗れ、グループBの4か国中で2位以内に入る可能性が消滅。最低でも引き分けなければいけない試合で後半29分までに2点のビハインドを背負い、点差以上の実力の差を見せつけられての完敗だった。
天津のピッチに立った選手たちはよく戦った。現時点での実力のほとんどすべてを出し切った。それでもナイジェリアとは絶対的な差があった。一矢を報いたFW豊田のゴールも、2点をリードしたナイジェリアが油断していた部分は否定できない。その実力差を埋められる可能性を秘めているオーバーエイジだったが、反町康治監督がその起用を見送った時点でこの結果は見えていた、と言っても決して過言ではない。
6月12日のカメルーンとの親善試合をスコアレスドローで終えた直後に、反町監督は淀みない口調でチームが抱える課題を明確にしていた。
「ゴールを奪うところの部分ですね。例えばペナルティーエリアの近くでボールをもったときに仕掛けて、点を決められる選手。そうした力を持つことは、どうしても必要だと感じました」
それゆえにMF遠藤保仁(ガンバ大阪)とFW大久保嘉人(ヴィッセル神戸)に白羽の矢を立てたが、前者は肝機能障害で無念の辞退を強いられ、後者は所属チームの代表招集を固辞した。遠藤の体調不良は仕方ないにしても、大久保の場合は本人に直接打診したために神戸側が態度を硬化させたのが事の発端だった。
チームの預かり知らぬところで話が進めば不信感が生まれるのは当然だ。この間、日本協会の技術委員会は何をしていたのか。会長交代の端境期だったとはいえ、この前代未聞の不手際を検証しない日本協会の姿勢もおかしいと言わざるを得ない。
なぜならば、惨敗のショックは北京五輪だけにとどまらないからだ。
2戦を通じて反町監督はFWをワントップとし、MF谷口博之をシャドーストライカー的なポジションで起用した。所属する川崎フロンターレではボランチだが、横浜F・マリノスのユース時代はFWで非凡な得点センスを持ち、1m82、73kgとフィジカルにも恵まれている。実際、アメリカ戦でもナイジェリア戦でもゴール前で得点の臭いがする場面に何度も顔を出していたし、体格を生かして守備でも貢献した。ナイジェリア戦の最後は足がつるほど、攻守でピッチを走り回った。
しかし、指揮官が指摘していた「ペナルティーエリアの近くでボールをもったときに仕掛けて、点を決められる選手」という役割を求めるには、谷口はあまりにもタイプが異なっていた。何より、北京五輪代表に選ばれた18人の中にその役割を担える選手は見当たらない。強いて挙げればFW岡崎慎司となるが、2試合とも途中出場、それも不慣れな左サイドで投入されている。
反町監督はオーバーエイジでファーストチョイスがかなわなかった場合を想定していなかったのだろうか。プライドが高い指揮官だけに、意固地になったとも考えられる。オーバーエイジを起用すれば必ず勝てた、という保証はないが、チームが抱えていた弱点は確実に埋まった。そうすれば、アメリカ戦にしろナイジェリア戦にしろもう少しまともな戦い方ができたはずだし、そうなれば23歳以下の選手たちが得る今後への手応えや自信も異なってくるだろう。
4年前のアテネ五輪もパラグアイ、イタリアに無残な敗北を喫し、1試合を残して決勝トーナメントへの道を閉ざされた。選手たちの心に刻まれた傷跡が大きかったことは想像に難くない。その2年後のドイツW杯の代表選手でアテネ五輪を経験したのはわずかに2人だった。
DF駒野友一は左右両方のサイドバックをこなせる器用さが重宝されたからであり、DF茂庭照幸に至っては田中誠の故障離脱で開幕直前に交代で招集されていた。92年のバルセロナ大会から開幕時で23歳以下という年齢制限が設けられた五輪サッカーは、以来、W杯への登竜門としての意味合いも持つようになった。しかし、アテネ経由ドイツ行きというルートにおいては日本は例外だった。
「情熱と誇りを持った18人を選んだ」
反町監督はオーバーエイジ起用を見送った理由をこう話したが、今となっては自らの不手際を覆い隠す詭弁だったことがよくわかる。だからこそ、天津のピッチで戦った選手たちは下を向く必要はない。責任を痛感するのは2年間もチーム作りを任されながら最後の段階でドタバタ劇を演じた首脳陣であり、それを看過した日本協会だ。
もちろん選手も勝利を求められる立場ではあるが、年齢制限がある大会である以上、ワールドユースなどと同様に通過点でもある。胸に募らせた悔しさは所属チームでさらに精進し、その先に招集されるであろうA代表の戦いの場でいくらでも晴らす機会がある。
だからこそ、13日の強豪オランダとの最終戦は単なる消化試合ではない。2年後の南アフリカW杯へ向けた戦いの一環となる。 アメリカ戦やナイジェリア戦で見せたような、形にこだわる上品なサッカーをする必要はない。リードされてから初めて見せた気迫や執念を開始からぶつければいい。ボールポゼッションにこだわるのが反町ジャパンのスタイルかもしれないが、プレッシャーから解放された今こそ、シュートを打たなければゴールは生まれないというサッカーの大原則を思い出し、金メダル候補に真っ向勝負を挑めるまたとない機会だ。
しかも、反町ジャパンにはDF内田篤人、長友佑都、安田理大、MF本田圭佑、香川真司とすでに岡田ジャパンに招集されている選手が5人もいる。9月6日からは南アフリカ切符獲得をかけたアジア最終予選も始まる。打ちひしがれている時間も余裕もない。
アテネ五輪ではガーナとの最終戦で1対0と意地の白星を挙げている。決勝ゴールを叩き込んだ大久保は、ドイツW杯の代表には選ばれなかったものの、オシム及び岡田ジャパンでエース的な存在に成長している。
オランダは強い。全力で立ち向かってもかなわない恐れもある。しかし、同じ3連敗でも予選リーグ敗退のショックを引きずり、闘志と覇気を欠いたサッカーを瀋陽のピッチに刻むことだけは許されない。オランダ戦は若き日の丸戦士の未来をかけた戦いになる。 (文=藤江直人)
2008年8月10日 22:16|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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