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加油!日本 北京現地発 「チケットと北京の空」 by 岩本勝暁
空が泣いている。
今にも降り出しそうな曇り空のもと、朝からビーチバレー会場に向かった。北京での移動はもっぱらタクシーである。初乗りは10元(1元は約16元)。噂されていた交通渋滞はそれほどでもない。整備された幹線道路を順調に走り、約20分で入場口までたどり着いた。距離にして15kmといったところか。日本の感覚で考えれば、32元ならめっぽう安い。
会場に入ると、セキュリティチェックに長蛇の列ができていた。観客は全員が荷物検査を受け、金属探知ゲートを通る。試合開始まであと5分。なのに列は一向に前へ進まない。弱り目に祟り目。ぱらぱらと泣き出した空は、次第にその雨粒を大きくしていった。
ようやくゲートをくぐって、いざスタンドへ。すでに試合開始から10分が過ぎている。しかし、容赦なく強まる雨足。そのとき、皆の目がいっせいに会場の一角に集まった。雨合羽が無料配布されているのに気付いたのだ。そこを目掛けて大勢の観客が集中する。列を作って並ばない中国人が、我先にと黄色い雨合羽を奪い取る。まるで、デパートのバーゲンセールで、安売りワゴンに群がるオバチャンのようだ。
女子の佐伯・楠原の試合はすでにはじまっていた。相手はアテネの金メダリストで、今大会も大本命のウォルシュ・メイ(アメリカ)。抜群のテクニックに加えて、高さとパワーを兼ね備えた女王だ。
序盤、日本はアメリカのサーブに苦しんだ。持ち前のテクニックで楠原が立て直し、佐伯が相手コートのわずかな隙間にボールを落とす。しかし、女王の牙城を崩すには至らない。第2セットはアメリカのウォルシュが高い壁となって立ちはだかった。佐伯・楠原も中盤まで粘りを見せたが、要所でブロックを決められて万事休す。試合時間はわずか36分。12?21、15?21でストレート負けを喫した。
それでも、点差ほど実力に差があるかと問われれば、否、である。楠原のサーブで相手の守備を崩す狙いは見えた。佐伯の動きも悪くない。12日にノルウェー、14日にキューバと対戦。まだまだチャンスはある。
空が怒っている。
いったん投宿しているマンションに戻った。ようやく回線が開通し、インターネットが閲覧できる環境が整った。ついでに朝が早かったので少し横になる。30分ほどで目を覚まして、溜まっていた雑務を淡々とこなした。
夕方になって再びビーチバレー会場へ。男子の朝日・白鳥の登場である。オリンピックは2人とも初出場。この晴れの舞台を見逃すわけにはいかない。しかし、マンションを出る間際になって再び降り出した雨は、次第に大粒になってタクシーの窓をたたく。到着したころは、激しい雷を伴っていた。果たしてこの状況でも競技が行われるのか。
北京ではチケットを購入して取材する、いわゆる"チケット取材"である。しがないフリーランスに取材IDは発行されない。しかし、国内はもとより北京に来ても、チケットの入手は困難だ。この試合の観戦チケットも持ち合わせていなかった。現地でダフ屋から調達できればと思っていたが、ますます激しくなる雨と雷。もはや持っていた傘さえ役に立ちそうにもない。人影はほとんどなく、雨合羽を着て会場を出て行く人が、慌ててタクシーをつかまえる。しばらく粘ってみたが、試合時間が過ぎてもラチが明かず、無念の撤退を余儀なくされた。
チケット問題は北京で観戦するファンにとって深刻だ。一緒に行動している女性ライターは、日本から事前に代理店を通して申し込んでいた。しかし、定価の10倍近い金額を振り込んだにもかかわらず、現地に来てからチケットが足りないことが判明した。いまだにすべてのチケットはそろっていない。担当者は雲隠れし、電話は何度かけてもつながらない。一般客の中には、チケットがないという惨状を北京に到着してから知らされた人もいるという。
チケットに泣き、チケットに怒る。僕の心は今日の北京の空のようだ。
2008年8月11日 23:23|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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