北島のシミュレーション勝利術
「何も言えない・・・」
4年前に「チョー気持ちいい」との流行語を発した青年が、北京の地で発した最初の言葉は、涙ぐんで言葉にならなかった。アテネでは敬語や挨拶やそんな世間の常識などお構いなしに感情をそのまま第1声に代えた22歳は、この4年で地獄を知りプレッシャーを知る。大人になった北島康介の第一声が涙に詰まったのは、背負ってきたものの大きさと、それと対峙してきた彼のメンタルの凄まじさの証だったのかもしれない。
平井コーチは、シミュレーションを大切にする。室内プールで、ほぼ環境に左右されることのない水泳という競技の特性上、レース想定は非常に大事である。ライバルのレース展開の特徴も一定で突発的なことが起こる可能性が極めて低いからである。
平井コーチは「一度見た映画をもう一度見るようなイメージ。ここでこんな場面があった、ここでこんな場面、そして最後はハッピーエンドみたいなね」と表現していた。
100でのシミュレーションは、スタートは、横一線、もしくは、少しリードを奪えればベスト。50までで、少しリード。ターンからスパートをかけ、残り25メートルで抜け出すというもの。北島は、オリンピックという大舞台で、金メダルを想定したレースシミュレーションを現実のものとしたのだ。そこに裏付けされているテクニックもさることながら、なんのためらいもなしに実行してみるメンタルの強さと言ったらどうだ。ブルペンエースや、スパーリングチャンピオンはよく聞くが、北島は、3度の五輪経験で、ついに、理想的緊張状態をコントロールする手段を身につけたのかもしれない。
世界新で奪った金メダルの自信と余裕は、200mに大きなプラスになるだろう。もう200mの予想はナンセンスである。北島のシミュレーション実践を確認するだけでいい。 (文責・本郷陽一)
2008年8月11日 23:40|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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