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北京現地発!「裏街の風景」 by 岩本勝暁
慌しい北京の街並みにあって、そこだけ時間がスローモーションで流れている。表向きはオリンピックの派手な横断幕に囲われて、中をのぞき見ることはできない。「城中村」と呼ばれるスラム街だ。
少しの好奇心とかなりの恐怖心を抱えて、足を踏み込んでみた。外の世界と比べて、少し薄暗い感じがする。すえた臭いの原因は、公衆便所があちこちにあるからだ。ハエがたかっているところもある。タイルを積み重ねただけの外壁は崩れかけ、木の板で覆われた屋根はナイロン製のシートをかぶせて雨をしのいでいる。重石を乗せているのは、風で飛ばされるのを防ぐためだろう。
自転車のうしろ籠に果物を積んで売る老婦人が無表情に道端を眺め、靴の修繕屋の親父が退屈そうにタバコをふかしている。角を曲がると、道端で四人組がトランプに興じていた。年かさは40歳前後だろうか。中国提灯がぶら下がった食堂から聞こえる笑い声が、かろうじて生活感を漂わせる。しかし、そこにいる人たちから生気を感じることができない。聞いた話によると、彼らは地方からの出稼ぎ労働者。土地を奪われた農民が、この北京に移住しているという。
カメラを抱えて歩いていると、好奇の視線が突き刺さる。しかし、見知らぬ土地で、見知らぬ人にレンズを向けるのは難しい。そんなとき、元気に走り回る子どもたちの姿があった。トラックの荷台によじ登り、鉄の板をドタバタと踏み鳴らす。カメラの存在に気が付き、少し興味を持ったようだ。遠目から何枚か撮影していると、少し心が通い合ったような気がした。さらに近づくと、様々なポーズを取っておどけて見せる。表情がほぐれ、とびきりの笑顔で応えてくれた。
子どもの笑顔はどこの国に行っても変わらない。撮っているうちにこちらまで楽しい気分になってくる。「バイバイ」と手を振って別れた。再びオリンピックの喧騒に戻ると、またあの場所に行ってみようと思った。
2008年8月17日 02:06|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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