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北京のオリンピックは早すぎた?   by 岩本勝暁 北京発最終原稿

 

 

陽気なカナリア軍団が泣いていた。

アメリカのトムが放ったスパイクがエンドラインを割ると、ブラジルのギマラエス監督は両手を重ねたまま、ひざを折って天を仰いだ。いつも冷静な38歳のベテランセッターが、コートに座り込んでリベロのファビアナと抱き合っている。そこに引き寄せられるように皆が集まり、歓喜の輪は瞬く間に小さくなった。

美しい光景だった。

バレーボール女子の決勝戦で、ブラジルがアメリカを3?1で下して金メダルを獲得した。世界選手権、ワールドカップ、オリンピックの三大タイトルで初めての栄冠である。セッターのフォフォンが抜群のトスワークで、相手の守備を揺さぶった。統率されたブロックは、レシーバーとの連携もパーフェクトだった。崩れたときの約束事も明確で、センターが上げた二段トスなどは見事というしかない。

ベンチワークも的確だった。表彰式のあと、チームをまとめたギマラエス監督の体が胴上げで宙を舞った。国旗を背負ってウィニングランする選手たちは誇らしげだった。

 

問題はそのあと、である。

会場の首都体育館を出ると、表の大通りは観戦客でごった返していた。車やバスが往生し、けたたましいクラクションが鳴り響く。歩行者は車と車の間を縫うように幅が50メートルほどもある道路を横断。表示灯が点いているタクシーを見つけては、先を争うように人が駆け寄っていく。最も近い駅でさえ歩けば軽く30分。公共のバスはぎゅうぎゅう詰め。信号機がなければ、誘導する係員もいない。もちろんタクシー乗り場なんてない。人の流れがバラバラだから、まったく収拾がつかない。事故が起きないのが不思議なくらいだ。

バレーボールの試合後はすべてが万事、そんな状態である。会場と駅を往復するシャトルバスがあれば多少の問題は解消されるのだろう。しかし、走っているのはタクシーか公共のバスだけ。様々な路線を行き交うバスにいたっては、どれに乗ればいいのか英語表記の看板さえ出ていない。漢字が理解できる日本人ならともかく、外国人旅行者に対してあまりに不親切だ。

しかもバレーボールの試合開始は遅い。ほとんどの日本戦は夜の10時スタートだった。中には8時開始の前の試合が延びたため、日本戦を終えて会場を出たのが夜中の1時近くになったこともある。それでも自力でタクシーを捕まえなければいけない。

外国人観戦者に対する不親切さは、日常にも表れていた。男女の差にかかわらず、道端やレストランでも平気でたんやつばを吐く。タクシーの運転手でさえ、英語はまったく通じない。メインスタジアム近くにあるマクドナルドもひどかった。注文をするまでに散々並ばされた挙句、意味不明の理由をつけて「こっちの列に並び直せ」と言われた。相手が外国人だと分かると露骨に嫌な顔をして、メニュー表を投げてよこす者もいた。

競技自体はどれも素晴らしかったし、引き立て役のスタジアムも美しかった。動員の応援にはクエスチョンマークが残るが、純粋にスポーツを楽しみ声援を送る人たちが多かった。

しかし、外国人を受け入れる市民に「もてなしの心」はあまりにも希薄だった。最後まで悩まされたチケット不足の問題も、その類である。閉会式を迎え、トランクに荷物を詰めている今になってもなお、こう思っている。

この国でオリンピックを開催するのはまだ早かった、と。

200910月、東京が立候補している2016年オリンピックの開催地が決定する。 0825_02.jpg

2008年8月25日 00:06|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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