Home > 本日の論! > 岡田ジャパン:勝利と引き換えに浮き彫りになった課題
岡田ジャパン:勝利と引き換えに浮き彫りになった課題
アジア最終予選の組み合わせが決まった直後の6月下旬に、サッカー評論家のセルジオ越後氏に岡田ジャパンが配されたA組の展望を取材した。セルジオ氏は「日本代表が南アフリカに行けないことも覚悟しておいた方がいい」と十八番の鋭い舌鋒で警鐘を鳴らした上で、最大のキーポイントをこのように挙げていた。
「A組はバーレーンが草刈り場になる。バーレーン相手に取りこぼしたり、あるいは勝ち点を落としたチームが脱落する」
3月の3次予選で日本が苦杯をなめた相手が「草刈り場」になるとは意外に思えたが、実際、6日に敵地マナマで行われたアジア最終予選の初戦を観れば正論だったことがわかる。
ロングボール以外にアイデアが乏しい攻撃。試合中に何度も集中力を欠き、キレた挙げ句にラフプレーを繰り返す未成熟なメンタル。W杯の舞台に立つにはまだまだ時間を要する格下を相手にした日本の90分間は、例えるなら「快晴から一転してゲリラ豪雨」となるだろうか。敵地での白星発進と引き換えに、今後への課題が鮮明になったと言えるだろう。
日本の先発メンバーとシステムは因縁の3月の一戦から大きく変わっている。中澤と阿部の両DF以外は実に9人が入れ替わり、布陣も3‐5‐2から4‐2‐3‐1へ。岡田監督は3月の敗戦を「一生忘れられない屈辱」と位置付け、「これからはオレのやり方でやる」と宣言して波紋を呼んだが、以後の試合の中身を見ればメンバーやシステムの変更以上に特定の「個」に対する依存度を一気に高めていることがわかる。
(1)中村俊のチーム 攻撃の全権はMF中村俊に託されている。厳しい言い方をすれば「丸投げ」だ。岡田監督はバーレーン入り後の最初のミーティングで「大和魂を見せてくれ」と選手に訴えたという。「オレのやり方」については3次予選の全日程終了後に「勝利への執着心を出すこと」と明かしているが、要するに戦術以前の話だ。必然的にチームは故障で3月の一戦に招集されなかった司令塔・中村俊の色に染まり、その体調に左右されるようになっている。
(2)最終ラインのツインタワー 4バックに再変更したのはDF闘莉王の復帰と決して無関係ではない。やはり故障で3月の一戦を欠場した1m85の闘莉王だが、1m87の中澤とセンターバックを組めばアジアのレベルにおいては制空権を完全に掌握できるし、相手の攻撃陣に与える威圧感も増大する。
バーレーン戦の後半42分までは中村俊、中澤、闘莉王の「個」が完全に試合を支配し、交代で出場した選手も含めた他の11人も戦う姿勢を前面に押し出して敵地で3ゴールを奪った。しかし、現状ではこの3人のうち一人でも欠けてしまえばチーム力も極端に落ちてしまう危険性もはらんでいることを見逃してはならない。
6月22日に埼玉スタジアムで行われたバーレーンとの3次予選最終戦は両国ともに最終予選進出を決めた後の消化試合となったが、それでも岡田監督は右足首に痛みを抱える中村俊をフル出場させた。ジーコ元監督が守備の全権を宮本に託したのと同じ構図が、岡田監督と中村俊の間にも築かれているのだ。
しかも、中村俊のバックアップにはまだ着手していないし、この先、着手するとも限らない。対戦国にとってこれほど攻略しやすいチームはない。中村俊を機能停止にするだけで、ただでさえセットプレーへの得点依存率が高いチームの攻撃力が半減するからだ。幸いにも大事に至らなかったが、前半30分に中村俊が痛めている右足にラフプレーを食らって悶絶し、ピッチの外に運び出されるアクシデントに肝を冷やしたチーム関係者は決して少なくないはずだ。
同じことが最終ラインのツインタワーにも言える。ハムストリング系に故障を多く抱える闘莉王は所属する浦和でも欠場することが度々あるし、累積警告による出場停止も想定しないといけない。バーレーン戦のベンチには清水のDF高木が入っていたが、日本代表デビューは8月のウルグアイとの親善試合。サイズは上回っても経験値では中澤と闘莉王に遠く及ばない。
来年6月まで続くアジア最終予選で常にベストメンバーを組める保証はないし、合宿や親善試合を通して底上げを図る機会も代表監督にはほとんど与えられない。「オレのやり方」を貫いて初戦をモノにした岡田監督だが、これからもメンバー選考の段階からタイトロープの上を歩くことを強いられるのは間違いない。
その岡田監督は試合後に「素直に嬉しい」と第一声を発した後で、後半42、43分と連続で失点した点を挙げて「サッカーとは怖いものだ、と改めて感じた」と表情を引き締めた。
1失点目は疲れから出足が鈍ったところを突かれ、2失点目は連携ミスから闘莉王のオウンゴールと、退場者を出して一人少ないバーレーンに完全に主導権を握られていた。この間、浮き足立つチームを引き締められる選手がピッチの中に誰もいなかったことは、2失点目の直後にあわや同点のシーンが続いたことが端的に物語っている。セルジオ氏の警鐘が脳裏をかすめてきたところで、3分間のロスタイムが終わりを告げた。
「試合の中で修正していかないと」
試合後に反省点を挙げた中村俊だが、攻撃の全権を託され、前半18分に得意のFKで先制ゴールを奪い、同44分のMF遠藤のPKにつながるハンドを誘発。守備でも体を張って奮闘するようになっても、チームリーダーという点では残念ながら引退した中田英寿氏やジーコジャパンの不動のキャプテンだった宮本の域までまだ達していないということだろう。それは、バーレーン戦でキャプテンを務めた中澤や、得意とする攻撃参加を最後まで封印して最終ラインに仁王立ちした闘莉王も同様だ。
第2戦は10月15日。ホームの埼玉スタジアムにウズベキスタンを迎える。バーレーン戦でイエローカードをもらい、累積で出場停止になるMF松井の代役となるであろう中村憲は後半25分からの出場で試運転を済ませ、同40分には結果的に決勝点となるゴールも決めた。ゴール奪取という部分で岡田監督が最も期待を寄せるFW大久保も、出場停止から明けて戦列に復帰する。
「ホームでウズベキスタンに勝てば(チームの)形ができる。大事な試合になる」
南アフリカへの航海図を必死に描き続ける中村俊は、自らに言い聞かせるように連勝スタートを誓った。強豪オーストラリアと伏兵カタールを加えた5か国中で2位以内に入れば南アフリカ切符を得られる長丁場のアジア最終予選。敵地で求められた「勝ち点3」を結果をしっかりと手にした一方で、岡田ジャパンは「個人への過度の依存」と「真のリーダー不在」という難題を図らずもさらけ出してしまった。 (文=藤江直人)
2008年9月 7日 08:41|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
トラックバック(0)
この記事のトラックバックURL: http://sv62.wadax.ne.jp/~sports-times-jp/mt/mt-tb.cgi/252
コメント(0)
コメントを書く
- 井上康生 「最後の内また」
(2008/06/08 21:36) - 北京五輪100kg超級代表、石井彗の練習風景
(2008/05/24 22:25) - ばんえい競馬@帯広ばんえい競馬場
(2008/05/07 12:15)
カテゴリー
アーカイブ
編集部より