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未来なき舌戦/犬飼プランのナンセンス
Jリーグのナビスコ杯の実施方式を巡って異例の舌戦を繰り広げていた日本サッカー協会の犬飼基昭会長とJリーグの鬼武健二チェアマンが、一応の手打ちを見せた。27日に両者が都内で約30分間会談。犬飼会長の言葉を借りれば「真意が伝わらずに言い合いになった。いがみ合っているようなことはまったくない」と表面上は一件落着となったが、そもそも騒動の発端となり、さらに拡大させた原因は日本協会のトップにある。
8月の北京五輪で男子代表は3戦全敗と惨敗を喫した。アテネ五輪に続く1次リーグ敗退という現実を重く見た日本協会は、大会開催時で23歳となる五輪代表世代の実戦不足が低迷の大きな原因になっていると分析。代表チームだけでなく所属するJクラブでも出場機会が乏しい現状の打開策として犬飼会長が打ち出したのが、ナビスコ杯を「23歳以下+オーバーエイジ3人」の五輪方式に変更するプランだった。
浦和レッズの社長時代には独自の経営路線でアジアを代表するビッグクラブにまで育て上げた同会長にとっては満を持しての改革案だったはずだが、その提案方法がまずいただけなかった。鬼武チェアマンを頭越しにするような形で、大会スポンサーのヤマザキナビスコに非公式に打診したという報道まで飛び交ってはJリーグのトップが不快感を抱くのも無理はないし、それが同チェアマンの「変える気は毛頭ない。JのことはJで決める」という発言につながったのは想像に難くない。
何よりも、ナビスコ杯はJリーグが華々しく開幕した1993年の前年から行われてきた歴史と伝統のある大会だ。しかも、バブル崩壊後の構造的な不況の中、サントリーなどJ創設当時のメーンスポンサーが続々と撤退していった一方で今もヤマザキナビスコは冠スポンサーとして大会を支え、今年は大分トリニータのチーム初タイトル獲得、九州地区のチームの初戴冠という感動的な1ページが新たに刻まれた。
日本サッカー界の発展という点では誰もが同じ思いを抱いているはずだが、だからといって17年も続いてきた大会の実施方式を大幅に変えるというのはあまりに短絡的過ぎる。まずは日本協会とJリーグがしっかりと話し合い、もし変更するとしても両者の間で十分なコンセンサスが得られた上でヤマザキナビスコに打診するのが本来の筋道なのではないか。
リーグ戦と同時進行で開催中の天皇杯でメンバーを大幅に変えたチームに対し、犬飼会長は怒りにも近い不快感を示している。天皇杯を軽視したというのがその理由だが、ならばナビスコ杯を23歳以下に限定するのはどうなのだろうか。
しかも、犬飼会長は鬼武発言を伝え聞いたドーハの地でこのように激怒した。
「Jリーグは日本協会傘下の一組織じゃないか。頭が混乱しているとしか思えない。本当に言ったとしたら大変な問題。常軌を逸している。あの人は日本協会の副会長だよ。相当低次元の話」
これがこの日の会談につながったわけだが、こうした暴走的な事の流れは浦和レッズ社長時代に、原稿の中に「金満チーム」と浦和を揶揄するひと言を用いた新聞社を即座に出入り禁止にした同会長の「豪腕ぶり」が顔をのぞかせたとも言える。
Jリーグのチェアマンが日本協会の副会長を兼ねてきたように、確かに組織図の上では日本協会が最上部団体となるが、実際の日本サッカー界は両者が車の両輪として牽引していかなければ発展しない。どちらかが回転数を上げても、車はスピンしてしまうだけだ。今回は鬼武チェアマンが「大人の対応」をしたことが一応の手打ちにつながったが、傘下組織だから黙って従えという理論はあまりにも強引過ぎる。
「若手育成の一案として言っただけ」
プランを事実上撤回した犬飼会長の「現状をどうにかしたい」という気持ちはもちろん理解できる。しかし、ナビスコ杯うんぬんに触れる前に、Jリーグのサテライトリーグに改革のメスを入れることも考えられるのではないか。
トップの試合で出場機会に恵まれない若手に実戦の場を与える、と謳われて1992年からスタートしているサテライトリーグだが、今年は各チーム年間8試合を戦ったのみ。この試合数では本来の目的はまったく果たされていない。海外に目を向ければ、サテライトチームを2部以下のリーグに所属させて強化を図ったスペインのバルセロナのやり方は大いに参考になるはずだ。
あるいは、U‐21欧州選手権を独自に開催しているUEFAに倣い、アジアで新しい代表カテゴリーの大会を創設するのはどうだろうか。
UEFAの場合は、ユーロと同時進行で約2年をかけて行われるU‐21欧州選手権が五輪の欧州予選を兼ねている。財政面などの問題は確かにあるが、このカテゴリーが創設されればU‐17、U‐20を経験した若手たちが確実に新しいステップを踏める。もちろん、実現へ向けてアジアサッカー連盟をリードしていくのは日本協会の役目だ。
「お互いに反省しないといけない。言葉が足りなかった部分もある」
鬼武チェアマンはこのように振り返るとともに、若手の出場機会を増やすための具体策に着手する意向を示した。欧州リーグに歩調を合わせたJリーグの秋春制(秋開幕・翌年春閉幕)への移行など、日本協会とJリーグがタッグを組んで取り組む今後の課題は少なくない。
今回のように両者が意志の疎通を欠き、感情的になった末の「舌戦」ばかりがクローズアップされては、日本サッカー界にとって何らプラスにならないことは言うまでもない。(文=藤江直人)
2008年11月27日 23:13|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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