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露呈したアジア王者の「アキレス腱」
■フジゼロックス・スーパーカップ2009
鹿島アントラーズ(J1優勝) 3‐0 ガンバ大阪(天皇杯優勝)
[2月28日PM1:35キックオフ@国立競技場/観衆3万6880人]
いわゆる「想定内」の黒星だったのだろう。ガンバ大阪の西野朗監督はさばさばした表情で国立競技場の記者会見室に入ってきた。
西野監督「いいリズムの時間帯もあったが、全体的にはアントラーズにコントロールされていたという気がします」
シーズンの幕開けを告げる前年のJ1王者と天皇杯覇者の激突。2年ぶり2度目のタイトル獲得を狙ったガンバは開始早々の前半6分に先制を許すと、その後もペースをつかみかけては拙攻で手放すパターンを連発する。逆にアントラーズは数少ないチャンスを確実に生かし、14分、39分と前半だけで3ゴール。この時点でスタンドの大半の興味はアントラーズの大物ルーキー、18歳のFW大迫勇也(鹿児島城西高)がいつピッチに送り出されるかに移ってしまった。
前半のガンバの布陣は3‐5‐2。アジアの頂点に立ち、昨年12月のクラブワールドカップでも欧州王者マンチェスター・ユナイテッドに3‐5と敗れはしたものの、派手な打ち合いを演じた時の4バックからこの試合の直前で変更されていた。
3バックを最も得意とし、チームの顔的な存在でもあった元日本代表DF宮本恒靖(現ヴィッセル神戸)がザルツブルグに移籍したのを機に、この2年間、4バックで超攻撃的なサッカーを貫いてきた指揮官がじくじたる思いの末に下した決断だった。
西野監督「できるだけ変えずに入りたいという思いはあった。代表選手の不在やけが人が多い状況あっても、キャンプから4バックのシステムを崩さずやってきた。ただ、ひとつ大きかったのは加地がいなかった。そこを埋められなかったということです。今年はそこのバックアップが一番薄いことを懸念していて、直前にそういう状況になってしまった」
不動の右サイドバック、元日本代表の加地亮が右太ももを痛めて戦線を離れたのが2月17日。以来、ドリブルが得意なFW佐々木勇人や本来は左サイドバックの安田理大をコンバートしてみたもののしっくりこない。このオフに日本代表の高木和道、昨季の韓国Kリーグのベストイレブンに輝いたパク・ドンヒョクの両センターバックを獲得していたこともあり、テストの意味合いも込めて3年ぶりに3バックに戻して臨んだ一戦だった。
しかし、ガンバの選手たちが3バックに違和感を覚えていたのを見抜いたのか、百戦錬磨のアントラーズは3バックの欠点でもある両サイドのスペースをこれでもか、これでもかと突いてくる。サイドを崩されてからクロスを入れられ、数的優位なはずなのにこぼれダマをゴールに押し込まれる。まるで判で押したような展開で喫した3失点に、指揮官は珍しくハーフタイムに選手に対して雷を落とした。
西野監督「ひとつの局面の対応が3バックの3人とも甘かった。イエローカードをもらった中澤もしかり、高木もしかり、山口もしかり。数が揃って十分な状況の中でも甘いミスが出ての失点。後半ははっきりと彼らに伝えながら(パク・)ドンヒョクを入れて、システムを4バックに変更したが、攻撃の迫力がキャンプからあまり出ていない。そのなかで今日も3トップに切り替えたり、それぞれの持ち味が出せるポジションにはめてはいるが、それがまだうまく連動してこない」
ゴール前の攻撃の質を高めたい、という指揮官のたっての希望を受けて元韓国代表で清水エスパルスでも活躍したチョ・ジェジン、過去2シーズンにヴィッセル神戸で23ゴールを挙げたブラジル人のレアンドロの両FWも獲得。クラブ史上最大の補強に成功し、満を持してアジア連覇、そして昨季は8位と不本意な順位に終わったJ1での巻き返しを誓った09年。しかし、チョとレアンドロも故障で離脱するなど、3月7日の開幕を前に青写真は修正を余儀なくされている。特にひざと股関節を痛めたチョは長期離脱が不可避の状況だ。
そこへさらに追い打ちをかけた、加地の代役不在という最大の「アキレス腱」の露呈。サイドバックは日本サッカー界全体でも人材が不足しているポジションでもあり、ガンバも早急には克服できない。この日は後半から複数のポジションをこなせる日本代表MF橋本英郎を右サイドバックに回したが、あくまでもスクランブル的な措置で今後はまずあり得ないという。
幸いにも加地はジェフ千葉との開幕戦(フクアリ)で復帰できる見込みだが、J1だけでなくACLも平行して戦う今季の過密スケジュール下ではこれからも予断は許されない。今後は3バックシステムの精度も磨き、加地不在の事態へ準備することも必要になってくる。
西野監督「システムも少し動かしたり、キャスティングも変えたりという段階で、今季どんなメンバー構成で入れるか模索している状態。キャンプでやってみたいと思っていたことを、こういうなかでトライしたというか、トライさせられたというか。この結果を受け止めて、今の自分たちが見つめられたとは思う。これを必ず次に繋げていかないといけない。いろいろと見極められた部分もあるので、一週間の中で修正できる部分を磨いていきたい」
後半はガンバが圧倒的にボールを支配して攻め込んだ。惜しい場面もあったが、これはガンバが4バックに変更して攻勢に出てくることを見越したアントラーズのオリベイラ監督が「むやみに打ち合いに持ち込むことなくゲームをこのまま終わらせろ」と守りに重点を置くように指示したためだった。いわばアントラーズに踊らされていたわけで、史上初の3連覇を狙う宿敵の経験に裏打ちされたしたたかさ、チーム完成度の高さを余計に引き立たせてしまった。
それゆえに指揮官は90分をこう総括した。
西野監督「確かな手応えというのはありません」
クラブワールドカップで3位に入ったことで自信を獲得し、今年元日には天皇杯を制覇。疲労が蓄積する中でしぶとく勝ち進んだ様は他チームを「クラブワールドカップを経てガンバはタフになった」と驚愕させ、オフの大補強成功で一気に今季の優勝候補と目された。
それが一転して、練習試合を含めた対外試合の成績が1分け6敗と白星なしのまま開幕を迎えるまさかの事態。その3日後の3月10日には連覇を目指すACLの1次リーグも始まる。
アジア王者の苦悩は続く。(文=藤江直人)
2009年3月 1日 00:45|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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