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アメフト「相模原ライズ」旗揚げ会見で覚えた違和感
記者会見場に入り、配られた資料に目を通した。その最後のページの一番下の欄を見た瞬間、違和感を覚えずにはいられなかった。そこには「本件に関する報道関係者様からのお問い合わせ先」として、聞き慣れた上場企業の名前が記されていたからだ。
サニーサイドアップ。
スポンサー撤退で昨年12月に解散に追い込まれた日本社会人アメリカンフットボールリーグ(Xリーグ)の名門、旧オンワードオークスが練習グラウンドのある神奈川県相模原市を拠点とするクラブチームとして再出発することは現在発売中の弊誌『論スポ』でも報じているが、その新体制が14日に発表された。
注目の新チームの名称は『相模原ライズ』に決まった。
「元オンワードオークスメンバーによるチーム再建への挑戦ブログ」上でチーム名称を公募したところ、地元相模原市在住の8歳の女の子が「陽はまた昇るので頑張ってください」という激励を込めて『ライズ(RISE)』と応募。「こんなにも僕らのことを考えてくれるファンが地元にいたのか」と現役選手と新チームの代表の「二足のわらじ」をはくRB石井光暢が感銘を受け、即決した。
会見場所は相模原市役所。くしくも石井と同じ2月18日生まれの同市の加山俊夫市長も駆けつけ、「市としてできる限りの支援をしていきます」と祝福した。しかし、正午に5分間の音声なしのイメージ映像の上映で始まった記者会見は、サッカーの中田英寿氏や競泳の北島康介らスポーツ選手を中心としたマネージメントでよく知られるサニーサイドアップ社によって仕切られていたのだろう。その内容やタイムテーブルを含めたすべてが見栄えよく洗練された、言い換えれば「血」が通っているとは感じられない内容だった。
会見場に陣取ったテレビカメラは10台。用意されたテーブルも、集まった約50人の記者ですべて埋まった。オンワードオークス時代はこのような会見の開催にはおよそ縁がなかったはずで、その点ではPR活動を熟知しているサニーサイドアップ社のノウハウが十分に生かされたことは、一般紙の運動部やスポーツ新聞の記者はもちろん一般紙の支局の記者やアメフト専門誌の記者までが相模原市まで足を運んだことでもよくわかる。
イメージ映像に続いて新チーム名のお披露目となったわけだが、登壇した命名者の女の子は除幕を終えるとすぐに退席。このあたりから違和感は増幅する。本人の希望で氏名は非公表とした点は理解できるとしても、『ライズ』と命名するに至った女の子の思いをひと言でいいから聞く段取りにしてもよかったのではないだろうか。
さらに、新チームの特徴に関しては石井がスクリーンパネルを使いながら説明したが、書面化されて報道陣に配布されることはなかった。
(1)特定の一企業に依存しないチームにする
(2)住民参加型のチームにする
(3)社会に貢献するチームにする
特徴として挙げた以上の3か条は、石井の言葉を借りれば「企業とスポーツの在り方に一石を投じる」ものであり、理想としては素晴らしいものであるのだが、説明に与えられた時間が10分弱ではあまりに短い。実際、石井も語り足りない表情を浮かべていたし、(3)の社会貢献では全国で清掃を行うNPO団体『green bird』と提携することも石井から説明されたが、しっかりとした文書でフォローされていない以上、その概要は聞き手にしっかりと伝わったのか疑問だ。
フォトセッション後には囲み取材が設けられていたからそれでいい、という問題ではない。100年に一度の経済危機に見舞われる中でその煽りをまともに受けているのが企業スポーツであり、スポンサー企業の撤退で突然の解散を告げられた名門チームがまったく異なる形態で再出発を図ろうとしている。その旗揚げ会見だからこそ大きな注目を集めるのであって、その「肝」となるべき部分が外部組織の思惑によって軽んじられてはまさしく本末転倒だ。
会見場にはサニーサイドアップ社の社員数人がいたが、開始前にはテレビ局の幹事社を必死に探すなど、要は同社がこれまで同様に映像メディアを最重要視した紋切り型のPR戦略を描いていたことは想像に難くない。テレビ映えするイメージを前面に押し出した結果、将来的には相模原市に根ざした総合クラブチームを一から作り上げていくはずなのに、その船出となる記者会見から「手作り感」がまったくと言っていいほど消え去ってしまったわけだ。
もちろん、石井をはじめとする新チームのチャレンジは応援していきたい。
2月に38歳となった石井は東京都中央区に本社を置く『株式会社エコグリーン』の経営者でもあり、一時は現役引退を考えたという。しかし、4万通に迫ったチーム存続嘆願署名に心を動かされ、「ここでやらなきゃ男じゃない」と現役選手のまま新チームの代表に就任することを決意。新チームはXリーグの関東地区3部からのスタートとなるため、1部復帰には最短でも2年を要することになる。
「もちろん、もう一度日本一になるまで絶対に引退しません」
石井は以前にはこうも語っていたが、この日は不惑になってもプレーを続けるという熱い胸の思いを垣間見せることも、さらには3部リーグの形態や参加チーム、今後のスケジュールなどといった基本的な事項を発表する場も設けられなかった。専門誌の記者ならわかる事柄かもしれないが、新聞記者、特にスポーツに不慣れな支局の記者にとっては不親切だったと言わざるを得ない。こうなると、必然的に新聞の紙面における扱いは小さくなってしまう。
チームの陣容は、昨年在籍した70人から8人が引退し、4人が他チームに移籍。残った58人からさらに引退者が出るものの、新加入を希望する選手もいて総勢で約60人になるという。チアリーダーも12人中で7人が残り、専従のプロコーチは7人減のわずか1人になるが、昨年までのコーチの多くがボランティアで駆けつける。これらもすべて会見後の囲み取材で明らかになったことだ。
今季を戦うのに必要な約2000万円のチーム運営費は、全国のファンからの寄付と選手たちが自腹を切って持ち寄った額で何とかめどが立ったという。
今後は子供も楽しめるフラッグフットボールやアメフト式メタボ解消キャンプといった独自のプログラムが提供されるクラブ会員「RISEメイト」からの会費、ファンクラブからの収入、協賛企業からの協賛金の3本柱を収入としていく方針だが、どうしたら「RISEメイト」になれるのか、会費はいくらなのか、といった基本的な情報に関しては「チームのウェブサイトを見てください」と説明されただけだった。
しかし、配布された資料には会見中の立ち位置やフォトセッション時の並び順などが微に入り細で記されていたものの、残念ながらウェブサイトのアドレス(http://www.sagamihara-rise.com/)は記されていなかった。
記者会見は囲み取材を含めて約50分で終了した。その後は場所を約2キロ離れたオンワード樫山総合グラウンドに移しての第2部がスタートしたが、「我武者羅応援団」なる団体が参加してのチーム始動セレモニーや全員でのフォトセッション、練習風景の公開など映像メディアを念頭に置いたスケジュールが組まれていたのは言うまでもない。
「できる、できないは今は考えていないし、ネガティブなことも考えていない。やらないで後悔するよりは、前向きにチャレンジしていきたい。4万人(の署名)の重みを受け止めて、だからこそ趣味のレベルで終わらせることはありません」
石井の志は高い。しかし、その熱いハートが十分に伝わらなかった記者会見が残念でならない。描いている構想のすべてを、不退転の決意のすべてを、もっと懇切丁寧に石井の言葉で説明できるようなスケジュールを組むべきではなかったのか。聞けば石井の夫人がサニーサイドアップ社に務めていた縁がコトの始まりというが、同社の力を借りるにしても、記者会見開催を各マスコミ媒体に広く告知することに留めるのが得策だったのではないか。
オンワードの好意で相模原市内の現在の練習グラウンドを無料で使用できるのは今年限り。来年以降の練習拠点は現時点で未定だが、それでも石井は「相模原市を離れることはあり得ない」と力を込める。
「ただ助けてください、ファンクラブに入ってくださいでは何も生まれません。その意味では、僕らがどれだけ地域に貢献できるか、どれだけ地域から必要とされるチームになれるかなんです。そうすれば自然とファンクラブの人数も増えるだろうし、RISEメイトも増えるだろうし、何かしてくださいということじゃなくて、僕らに何ができるんですか、ということです。これは市に対して、行政に対しても同じ姿勢で、まず僕らができることをしていきたいと考えています」
サニーサイドアップ社が今後どのように絡んでくるかはわからないが、この日の旗揚げ会見における「KYぶり」がこれからも発揮され、結果として『相模原ライズ』の崇高な挑戦がスポイルされないことを祈るばかりだ。 (文=藤江直人)
2009年3月15日 00:48|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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