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J1初陣・モンテディオ山形の初黒星とこれから

■J1第3節
FC東京(勝ち点3) 1‐0 モンテディオ山形(勝ち点4)
[3月21日午後2時キックオフ@味の素スタジアム/観衆2万179人]


 ひとまず小休止と言ったところか。
 開幕戦でジュビロ磐田に6‐2と大勝して衝撃を与え、ホーム初戦だった2戦目では雪が降り積もる中で昨シーズン3位の名古屋グランパスと大健闘のスコアレスドロー。J1に旋風を巻き起こしつつあったモンテディオ山形が敵地・味の素スタジアムでFC東京に0‐1で惜敗し、今シーズンから初めて昇格したJ1における初黒星を喫した。
 敗因は明快だった。ジュビロとグランパスを苦しめた執拗なプレスがFC東京の頭脳的なプレーの前に空回りさせられ、攻めに転じても長谷川悠、古橋達弥の2トップが強烈なプレッシャーを受けてボールをキープできない。前線でタメをつくり、両サイドが果敢に押し上げていくパターンが封じられると、悲しいかな、あとはDFの選手をFWに投入してパワープレーを仕掛けるしか攻撃の型がない。そのパワープレーも相手ゴールをこじ開けることはできなかった。
 開幕連敗、しかも7失点と大きくつまづいたFC東京はリスクマネージメントを徹底してモンテディオ戦に臨んできた。相手のプレスをいなすようなロングボールを背後に蹴ったかと思えば、カウンターから失点した過去2戦の反省を生かし、攻めるにしても枚数をかけて来ない。
 モンテディオの小林伸二監督は自軍の攻撃バリエーションの乏しさを認めながら、「今までと違ってリスク管理をした中で飛び出してくるイメージだった。堅く入った中での相手守備を崩せなかった」とFC東京の変身ぶりを敗因に挙げた。
 後半10分に献上した決勝点にしても、空回りが続いたプレスの余波からか、モンテディオの足が鈍りかけた直後だった、と小林監督は振り返る。
「無理せずにボールを回せと指示を出した矢先だっただけに残念。相手にスピードのあるカウンター攻撃をやらせてしまった」
 ボールを持った右サイドバックの宮本卓也に対して、FC東京のMF石川直宏が強烈なプレッシャーをかけて奪取。すでに宮本の背後に空いたスペースに飛び出していた日本代表DF長友佑都がトップスピードのドリブルで敵陣に迫り、FWカボレを経たボールをMF羽生直剛がゴール左隅に流し込んだ。すべてはモンテディオがやろうとしていた攻撃だった。
 すでに2試合を終えただけでモンテディオの戦法は丸裸にされていたわけだ。


 しかし、10年間に及ぶJ2での戦いを経て、悲願の夢舞台に立った選手たちに落胆の色はない。12月の第1週まで、まだ31試合も残っている今シーズンへの「授業料」を払ったかのように、その視線はしっかりと上を見据えていた。
 2トップの一角、古橋は言う。
「相手のプレッシャーが速くて自分たちのプレーができなかった。ガツガツ来るチームや、ボール回しがうまいチームに対してどう戦うか。まだ始まったばかり。落ち込まないように戦うだけです」
 FC東京戦で先発した11人の中では、今シーズンにセレッソ大阪から加入した28歳の古橋が最もJ1を経験している選手となる。それでも、わずか76試合に過ぎない。一方では、実に6人が今シーズンにJ1デビューを果たしている。
 その一人、21歳のFW長谷川は力を込めた。
「J2の時よりも(相手は)人に強いし、能力も高いですけど、自分がもうちょっと積極的にやれればチャンスはあると思う。まだ自分は若いし、積極的にチャレンジすることで昨シーズンも伸びた。そういう意味で、今シーズンも伸びていければいいと思う」
 失礼な言い方になるかもしれないが、モンテディオで顔と名前が一致する選手は、32歳の精神的支柱、FW財前宣之ぐらいだろうか。試合後の取材エリアでも「あれが●●?」と記者同士が確認する光景が目立ったほどだ。
 そんな無名の雑草集団が2月の長崎キャンプから徹底的に鍛え上げてきたフィジカルを武器に愚直なまでにプレスをかけ続け、不器用ながらサイドから徹底して相手ゴールに迫るサッカーはなかなかどうして、観ている側を応援させたくなる「魅力」を放っている。
 横浜FCのFWカズについて書いた時にも触れたが、Jリーグ創成期の選手たちが見せてくれた必死さ、Jの舞台に立って戦える嬉しさ、拙い技術を補って余りある闘志がそう思わせるのかもしれないが、モンテディオから感じるのは決してノスタルジーばかりではない。
 例えば長谷川。流通経済大柏高から柏レイソルに入団。以後、FC岐阜、アビスパ福岡、そしてモンテディオと期限付き移籍を繰り返してきた彼のサイズは1m87、78kg。現在の日本代表FWの誰よりも大きな体に足元の技術の柔らかさ、前線からのチェイシングにいっさいの労を厭わない献身さも兼ね備えているが、ジュビロ戦ではGK川口能活から2ゴールをゲット。J1のレベルに触発され、点取り屋としての非凡な才能も開花させつつある。
 実際、決勝点の起点になった長友もこう振り返っているほどだ。
「あの2トップは非常に強力。あそこが起点になると危ないシーンが何回かあった」
 ここまで3試合、計270分にフル出場させていることからも、小林監督も13ゴールで昨シーズンのチーム得点王となった長谷川を攻撃の軸に育てたい方針が伝わってくる。


 今後は日本代表がW杯アジア最終予選を戦う関係で、ナビスコカップ1試合をはさんで次戦のリーグ戦は4月5日まで日程が空く。
「攻撃のバリエーションも欲しいので、次回からは守備もそうだけど、1点を取ることを考えていかなければならない。3月は1勝1分け1敗で勝点が取れたということは上出来だと思うが、今日の試合で勝つことができればまた状況が変わってくると思っていた。(ジュビロに)1勝した、(グランパスに)引き分けということはOKだが、十分ではない。いい形で4月に入れるように、次のナビスコもいい形で戦っていきたいと思う」
 J2でも中位から下位が定位置で、戦力的にも決して恵まれているとはいえないモンテディオを就任1年目で2位に押し上げて昇格させ、「策士」たる異名も頂戴した小林監督はすでに4月戦線以降をにらんでいる。幸か不幸か、日本代表に招集された選手がゼロなのでチーム全員で戦術を確認しながら練習ができるメリットもある。
 かつて06年にJ1に初昇格したヴァンフォーレ甲府も徹底したプレッシングサッカーを仕掛け、対戦相手を辟易とさせた。特にホームではサポーターの後押しでプレスが増幅されるのか、この年に優勝した浦和レッズと引き分け、ガンバ大阪、鹿島アントラーズ、横浜F・マリノスからは金星をゲット。下馬評を覆して見事にJ1残留を果たした。
 そのヴァンフォーレを彷彿とさせるモンテディオだが、当時のヴァンフォーレは後にガンバ大阪でも活躍したFWバレーという「核」がいた。
 つまり、モンテディオがさらにJ1戦線をかき回すかどうかはバレーの位置にいる選手の肩に、長谷川の成長にかかっていると言えるだろう。
「ここまで3試合を終えて、J1でできると感じた部分とまだまだと痛感した部分がありました。相手を背負ってもしっかりとボールをキープできた場面もありましたし、もっと積極的にシュートを打たなければいけない。すべては自分次第。もっとチャレンジしないと。今日の試合は、何だか手堅く安パイなプレーを選択してしまった」
 決意を新たにする長谷川だが、テレビカメラを含めた大勢の報道陣に囲まれる取材の雰囲気に慣れていないのか、その声は小さく、大きな背中も丸まり気味。ピッチの上で見せる無骨で勇猛な姿とのギャップがこれまた新鮮で初々しい。
 東北発の旋風が小休止を経てこのまま終息するのか、それとも相手を次々と巻き込む危険な突風に発達するのか。ホームのNDソフトスタジアム山形にジェフ千葉を迎える4月5日までの2週間は、モンテディオにとってJ1昇格元年を左右する時間となりそうだ。(文=藤江直人)


2009年3月22日 01:51|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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