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超大物ルーキー・大迫に感じた才能と物足りなさ


■J1第3節
鹿島アントラーズ(勝ち点6) 2‐1 サンフレッチェ広島(勝ち点3)
[3月22日午後4時キックオフ@カシマスタジアム/観衆1万7492人]


 自分がシュートしていいのか。
 失敗して外したらどうしようか。
 マルキーニョスの方が確実なんじゃないか。
 鹿島アントラーズの大物高卒ルーキー、FW大迫勇也の脳裏には、こんな思いが駆け巡っていたのだろう。リーグ戦初先発を果たしたサンフレッチェ広島戦の開始わずか3分。ペナルティーエリア内にいた自身へのスルーパスのごとく、相手が致命的なパスミスを犯す。強運もまた才能の証なのか。そう思った矢先だった。
 鹿児島城西高を卒業したばかりの18歳の選択は、ゴール中央にいたFWマルキーニョスへのパスだった。突如として転がり込んできたチャンスに慌てたのか、足元がややおぼつかなかったという状況ではあったが、FWならば躊躇することなくシュートを選択していい場面だった。
 しかも、マルキーニョスには相手のマークが集中していた。案の定、昨シーズンのJ1得点王にしてMVPへのパスが通るはずもなく、開始早々のビッグチャンスは潰された。大迫がゴールする予感が漂ったのも、この瞬間が最初で最後だった。
 大迫は確かに上手い。
 自身の頭上を越しそうな後方からのロングボールを難なくトラップし、ボールを自分の間合いに入れ、相手のマークを引きつけ、十分にタメを作った上でオーバーラップしてきた左サイドバックのパク・チュホにヒールでパスを送った前半12分のプレーは、18歳とは思えない完成度の高さを感じさせた。
 同じように同42分には体を巧みに反転させて、相手をブロックした上で攻め上がってきた右サイドバック内田篤人に絶妙のスルーパス。後半開始早々には右サイドを突破し、ゴール前へ絶妙のクロスを放り込んでMF本山雅志のあやわゴールのヘディングシュートを導いた。
 しかし、それだけだった。
 18歳のルーキーに対しては酷な注文になるかもしれないが、大迫には「怖さ」がなかった。それは強引なまでのシュートへの意識。前半3分の選択に象徴されるように、ストライカーの原点とも言うべきプレーが決定的に欠けていた。ボールをもらおうと、マークが比較的薄い両サイドに流れるシーンも少なくなかった。
 1月の全国高校選手権で大会新記録となる10ゴールをマーク。アントラーズ入団後もキャンプで結果を残してベンチ入りを勝ち取り、公式戦初先発となった18日のACL、上海申花戦では1ゴール1アシストでチームの全得点に絡んだ。持っている才能は間違いなく非凡。だからこそ、サッカーファンはこの超新星がアントラーズの点取り屋から日本代表のストライカーへ羽ばたくことを期待する。
「ACLの時のように頑張ろうと思ったけど、不足でした。これからもっと頑張ります」
 後半22分にベンチに退くまでに放ったシュートはわずか1本。大迫本人が誰よりも物足りなさ、もどかしさを感じていたようだ。


 アントラーズそのものもエアポケットに入りかけていた。
 2月28日のフジゼロックス・スーパーカップでガンバ大阪を3‐0で一蹴して今シーズンの初タイトルを獲得。1週間後の7日に行われた浦和レッズとの開幕戦も2‐0で完勝し、史上初の3連覇へ順風満帆なスタートを切ったかに見えた。
 しかし、11日のACL初戦で韓国王者・水原に1‐4とまさかの力負けを喫すると、悪い流れを断ち切れないまま15日のアルビレックス新潟とのJ1第2節も落とした。迎えたACLの上海申花戦。ここでオズワルド・オリヴェイラ監督が荒療治を敢行する。
 日本代表の常連にまで成長しながら今シーズンは開幕から精彩を欠いていたFW興梠慎三を、故障以外では約3年ぶりにベンチからも外し、その代役に第3FWの元日本代表・田代有三ではなく大迫を指名。その高卒ルーキーがしっかりと結果を残したのだから、興梠のハートに火がつかないわけがない。
 その興梠はサンフレッチェ戦でサブに復帰し、大迫と交代でピッチに投入された。
「今週1週間を通した中での彼の練習態度や意欲、姿勢を見てですね」
 審判の判定への不満から会見への出席を拒否したオリヴェイラ監督に代わり、奥野僚右コーチが興梠をベンチに復帰させた理由を説明した。要は成長著しい22歳から首脳陣は慢心の類を感じたのだろう。施された荒療治の効果は、1‐1のままロスタイムに突入する間際に興梠が決めた右足ボレーでの決勝ゴールと試合後のコメントが端的に物語っている。
「試合で取り戻すことしか考えなかった。(上海申花戦は)メンバー外で逆によかった。ヤバイという危機感が生まれたから。プロの世界は実力のある人が試合に出る」
 長いシーズンをにらんでチームの核となる日本代表FWに「お灸」を据え、将来を背負って立つ18歳の逸材には実戦の中でプロの厳しさ、FWとしての心構えを身をもって体に染みこませることでさらなる成長を促す。オリヴェイラ監督の一石二鳥の選手操縦は、結果としてチームをエアポケットから脱出させる劇的な勝利をも導いた。3シーズン目を迎えた58歳のブラジル人指揮官は、なかなかの策士と言えるだろう。
 もっとも、興梠の目を覚まさせるためだけにオリヴェイラ監督が大迫を抜擢しているわけではない。大迫を含む全国高校選手権の優秀選手で構成される高校選抜チームが派遣される恒例の欧州遠征が4月1日から15日まで組まれているが、この間にJ1を2試合、ACLを1試合戦うアントラーズは大迫の参加辞退を高体連側に申し込んでいるという。
「この時期に持っていかれるのは困る」
 その背景には、リーグ3連覇とACL初制覇を狙うチームの貴重な戦力として、すでに18歳のルーキーを計算している指揮官のたっての要望があることは言うまでもない。
                                       (文=藤江直人/写真=高須力)

2009年3月23日 01:44|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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