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岡田ジャパン/バーレーン戦で求められるもの


 いつもの日本代表のサッカーをすれば勝てる。
 きょう28日に埼玉スタジアムでキックオフを迎えるバーレーンとのW杯アジア最終予選は、「いつもの」が勝利へのキーワードになる。
 ちょうど1年前、敵地マナマで0‐1と苦杯をなめたのを皮切りに、バーレーンとは1年間でこれで5度目の対戦になる。サッカーの国際試合では異例とも言える多さであり、これまでの対戦成績が2勝2敗であることから、野球のWBCにおける韓国戦になぞらえてメディアばかりか日本代表を率いる岡田武史監督までが「何としても決着をつけたい」と力こぶを作っている。
 しかし、これまでの日本の敗因を精査すれば両国の力の差は歴然だ。もはや決着はついていると言っていい。
 0‐1で敗れた昨年3月のW杯アジア3次予選はMF中村俊輔らの欧州組がけがなどで招集できなかった上、敵地での一戦を必要以上に意識した岡田監督が直前で3バックに変更。堅守速攻をテーマに掲げ、キープ力のあるMF遠藤保仁をサブに回した結果、タテに性急すぎる攻撃が空回りしたのが最大の敗因だった。
 2度目の黒星は今年1月28日に同じくマナマで行われたアジア杯予選。国際Aマッチデーではなかったこの試合では欧州組を招集できなかったため、必然的に指揮官も岡崎慎司や興梠慎三らのFW陣を中心に新戦力のチェックに比重を置いた。いわば織り込み済の敗戦だった。
 つまり、2敗とも「いつもの」日本代表とは程遠い姿だったのである。
 では、「いつもの」日本代表とは何か。
 バーレーンに最初の黒星を喫した直後に、岡田監督は「これからはオレのやり方でやる」と宣言したことはこの「論」で何度も触れてきた。その中身は布陣を4‐2‐3‐1とし、前線に玉田圭司、田中達也、松井大輔あるいは大久保嘉人といった運動量が豊富で俊敏性にあふれた選手を重用。小柄な彼らが一の矢、二の矢、三の矢となって執拗にプレスをかけ続け、あるいは相手守備陣をかき回し、決定的なチャンスをより多く作る攻撃スタイルに方針転換した。
 迎えた9月6日。再び敵地マナマで行われたW杯アジア最終予選の初戦では、ちょっとした気の緩みから後半の残り3分で2点を失うまでは、満を持して中盤に中村俊輔、松井大輔、長谷部誠の欧州組を揃えた日本が理想的な「いつもの」サッカーを展開。FKで中村俊、PKで遠藤、そして途中出場の中村憲剛がミドルシュートを叩き込んで3‐2で勝利した。
 日本代表の決定力不足が飛躍的に解消されることはないだろう。ならば、分子をゴール数に置き換え、分母となるチャンスを増やすことはある意味で理にかなっている。スコアレスドローに終わった2月のオーストラリア戦後の記者会見で「このやり方を続けていく以外にない」と宣言したことからも、指揮官の不退転の決意がうかがえた。


 しかし、5度目の対戦を前にした公式会見で、岡田監督は「蛮勇にならないように、リスクを冒していきたい」と語った。おそらくは4試合を終えた最終予選で、ホームではまだ勝ち星なしの2引き分けという結果を少なからず気にしての発言だろう。
 確かにリスクを冒さなければW杯最終予選のような真剣勝負の舞台ではそう簡単にゴールは奪えない。オーストラリア戦ではリスクを冒す勇気が足りなかったがゆえに決定的になりかけても相手ゴール前の人数が足りない、あるいはフィニッシュに持ち込めなかった場面が少なくなかったのも事実だ。しかし、必要以上にナーバスになる必要もない。やり方は変えないことを宣言しているのだから、どっしりと腰を据えて「岡田スタイル」を熟成させればいい。
 負ければ後がないバーレーンは、まさに背水の陣で臨んでくるだろう。指揮官の言う「蛮勇」になりうるのはむしろバーレーンの方だ。ここで教訓にしたいのは、1‐1で引き分けた昨年10月15日のウズベキスタンとのW杯アジア最終予選。緒戦でカタールに大敗し、後がなくなったウズベキスタンは開始直後から闘志をむき出しにして日本に強烈なプレスをかけてきた。
 対峙した日本はどうだったか。
 結論から先に言えば、ホームでありながら「いつもの」プレーができた時間帯はごく限られていた。全員守備、全員攻撃でハードワークを厭わない。これが「いつもの」日本代表の基本原則であるはずなのに、ウズベキスタンの気迫に押された揚げ句、先制点まで許している。
 相手が前に出てくるのは、イコール、日本にとっても敵陣に攻め込むスペースが増えるチャンスでもあるのに、それを忘れたかのように敵に背を向けた戦いに終始した時間帯が目立った。試合終了直後にサポーターから罵声を浴びせられたのは言うまでもない。
 5月下旬に行われるキリンカップで、岡田監督は対戦国にあえてチリ代表を要望したという。前線から絶えずプレスをかけてくるチリのスタイルを絶賛した上で、「日本は強烈なプレッシャーをかけられると、とたんに本来のサッカーができなくなる」と対戦するメリットを強調した。指揮官自身、現在の日本代表が抱える弱点を把握しているのだ。
 だが、W杯南米予選で上位につけるチリ代表うんぬんを語る前に、ホームでバーレーンの気迫に圧倒されてしまうようでは、厳しい言い方になるが、来年のW杯本大会に出場してもドイツ大会同様に出るだけで終わってしまうだろう。
 ピッチに送り出される日の丸戦士のファイティング・スピリットが問われるのはもちろんだが、やる気にはやる中東の新興国をいなし、空回りさせるぐらいの余裕もほしい。そうすれば、格の違いを証明する結果がおのずと転がり込んでくるはずだ。
 W杯アジア最終予選も後半戦に突入するが、ここまでの戦いを振り返れば、前評判とは対照的にグループAでは日本とオーストラリアの2強と残るバーレーン、カタール、ウズベキスタンの3か国の実力差はかなり離れている。
 勝負ごとに絶対はないが、それでも日本は南アフリカ行きの切符はほぼ手中に収めていると言っても決して過言ではないのだから、結果だけでなくW杯本番に期待を見い出せるような内容がそろそろほしい。「いつもの」日本代表が岡田監督が豪語する通りに世界を驚かせることができるのならば、その片鱗がそろそろ見たい。
 バーレーン戦はその絶好の試金石となる。(文=藤江直人)


2009年3月27日 23:59|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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