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川崎フロンターレが突如として覚醒した舞台裏
■J1第4節
川崎フロンターレ(勝ち点5) 3‐1 名古屋グランパス(勝ち点7)
[4月4日午後3時キックオフ@等々力陸上競技場/観衆2万148人]
殴り合いなら絶対に負けない! 溜まっていたフラストレーションを一気に爆発させるかのように、川崎フロンターレが十八番の攻撃サッカーを展開。スタンドの大半をサックスブルーに染めたサポーターたちを狂喜乱舞させる逆転劇で、4戦目にして今シーズン初勝利を挙げた。
開幕3試合で2分け1敗となかなかエンジンがかからなかったフロンターレを一転して全開のレッドゾーンに導いたのは、意外にも対峙した名古屋グランパスだった。
2トップの日本代表・玉田圭司と現在得点ランク首位のダヴィ、2列目のマギヌンとストイコビッチの背番号「10」を継承した小川佳純、左右のサイドバックの阿部翔平と横浜F・マリノスから移籍した田中隼磨の顔ぶれからなるグランパスの攻撃陣がこれでもか、これでもかと波状攻撃を仕掛けてくる。迎えた前半23分には小川に左サイドを突破され、低く鋭いクロスを飛び込んできたマギヌンにゴールに押し込まれてしまった。
また勝てないのか。ホームの等々力陸上競技場に嫌な雰囲気が漂った中で、フロンターレのゲームキャプテンを務める日本代表MF中村憲剛は心を躍らせていた。
「打ち合いだと力を出せる。(名古屋が)本来のウチのよさを引き出してくれた」
相手が攻めに人数を割けば、必然的にフロンターレにとっての敵陣にスペースが生じる。狙い目は両サイドバックがオーバーラップした背後。先制されてからわずか1分後。右サイドでボールを持ったMF中村が前方のスペースへボールを送る。飛び出したのはオシム前監督時代に日本代表候補に選出されたこともある快足の右サイドバック森勇介だった。
その直前に小川の突破を許して失点の原因を作っていたこともあって、森は「自分が何とかしないと」と心に誓っていたという。やられたらやり返す。まさに殴り合い。低く鋭いクロスにFWヴィトール・ジュニオールが左足を合わせた。電光石火の同点弾だ。
これまでに対戦してきた柏レイソル、ヴィッセル神戸、そしてジェフ千葉はすべて守備を重視し、引き気味の布陣でフロンターレに臨んできた。合計65ゴールと昨シーズンのJ1最大の破壊力を誇るフロンターレの攻撃陣を畏怖した消極的な布陣。しかし、攻めあぐむのは承知の上のはずなのに決まって焦燥感を募らせ、カウンターからやらずもがなの失点を献上し、引き分けるのが精いっぱいというのが過去3戦に共通するフロンターレの自滅パターンだった。
だからこそ、同点弾をアシストした森が言葉を弾ませながらグランパスを称えた。
「相手が引かないチームだったからね。そういうチームに対してウチは強いから」
前半29分には左CKを逆サイドでDF寺田周平が折り返したところへ、走り込んできたMF谷口博之が渾身のヘディングシュートを見舞う。カウンター攻撃からのシュートをグランパスの日本代表GK楢崎正剛が何とかCKに逃れた直後の逆転弾だった。
後半16分には中盤で相手ボールを途中出場のMF横山知伸がカット。1日に韓国とのW杯アジア最終予選を戦ったばかりの北朝鮮代表FW鄭大世がこぼれダマを拾うと、その前には広大なスペースが広がっていた。結果的にこれもカウンターとなり、楢崎との1対1から鄭が冷静に左足でフィニッシュして怒とうの3連続ゴール。守っても全員が素早く自陣に戻り、体を張った守備でグランパスに前半23分以降は「殴らせ」なかった。
「スペースを与えたら速いし、上手いし、最後まで攻め切ってくる。ウチはそこまで(フロンターレに)プレッシャーを与えなかったけど、こっちは常に感じていた。そこの差です」
楢崎が脱帽した口調で3失点を振り返れば、ドラガン・ストイコビッチ監督もむしろサバサバした表情を試合後の公式会見で見せた。
「フロンターレがカウンターを狙っているのは分かっていたが、中盤であまりにもボールを失い過ぎたことで、相手にギフトのようにゴールを贈ってしまった。あれでは後ろの守備陣はたまらない。今日は私たちの日ではなかったということだ」
ジュニーニョと鄭の2トップにヴィトール・ジュニオール、レナチーニョ、中村、谷口、森と前線に絡んでくるフロンターレの選手の顔ぶれは昨シーズンと変わらない。まさに「あうんの呼吸」があるからこその正確無比なカウンターだったが、手放しで喜んでばかりはいられない。
勝って兜の緒を締めたのは森だ。
「引いて守ってくるチームにも勝てないと上位には行けない。もっとボールを回して相手を動かすサッカーをしないと、僕らが支配する時間を増やさないといけない。今はまだ涼しい季節だからいいけど、夏場になるとこのサッカーはできない」
J1の中で攻撃力に自信を持っているチームは、グランパスの他にはガンバ大阪、鹿島アントラーズ、浦和レッズなど数えるほどしかない。大半の試合でフロンターレは殴り合いではなく、守備的な相手との対戦を余儀なくされるだろう。グランパス戦のように相手が中盤でボールを失ったとたん、まるで「ジャックナイフ」のような切れ味鋭いカウンターを繰り出されれば相手により警戒され、今まで以上に慎重に試合を運ばれることも予想される。
「これをひとつのきっかけにしたい。いいイメージで臨める。このきっかけを得るのに1か月かかった。長かったけど、次に勝たないと意味がないからね」
まだ課題は多いものの、消化不良気味の試合が続いたフロンターレが「ツボ」にはまった時の強さと破壊力をようやく証明できたことで中村の言葉も弾んだ。
グランパスに初黒星をつけたことで、4節を終えて無敗は3勝1分けと好調な伏兵アルビレックス新潟ただ1チームと今シーズンも大混戦の予感が漂うJ1戦線。勝ち点5に伸ばして暫定9位に浮上した暴れん坊軍団・フロンターレが本当に目覚めたのか、あるいはもうしばらく惰眠を貪るのか。その答えは昨シーズン終盤戦で立て続けに痛恨の黒星を喫し、最終的にアントラーズと勝ち点3差の2位で優勝を逃す原因となった因縁の相手、清水エスパルス、大宮アルディージャと続く第5節以降の2連戦ではっきりしてくるはずだ。 (文=藤江直人)
2009年4月 5日 01:41|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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