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11月にスペイン、イタリアと連戦を組め  by 藤江直人


 オーストラリア戦のキックオフまでまだ4日もある中で、サッカー日本代表が敵地メルボルンで調整を開始した。
 両チームともにW杯切符獲得を決めているとあって、さすがに緊迫感は伝わってこない。アジア最終予選のグループA1位突破がかかるといっても、12月に行われる本大会のドローには何ひとつ関係ない。最終予選の7試合で無失点を誇るオーストラリアに対して、岡田武史監督は「ひと泡吹かせよう」と選手たちを鼓舞して機上の人となった。
 股関節痛で遠征メンバーから外れたMF中村俊輔も「無駄な試合はひとつもないから」とオーストラリア戦の意義について話していたが、どうしても消化試合特有の緩やかな雰囲気はぬぐえない。遠征メンバーはGK3人を含む19人。最終予選のようにベンチ入りできる人数が18人の場合はGK2人制となる。つまりフィールドプレーヤー全員がベンチ入りすることが早くも確定しているわけで、同じアウエー戦でも異例の25人体制でドーハ入りした昨年11月のカタール戦前の緊張感とはどうしても雲泥の差となる。
 そもそも、なぜMF本田圭祐を日本に残したのか、という疑問が残る。
 出場停止中のMF長谷部誠、故障を抱えている中村俊やMF遠藤保仁、FW大久保嘉人を帯同させなかったのは理解できるが、本田自身はコンディションが万全であることを強調。当然のようにオーストラリア遠征参加にも意欲を見せていただけに、10日のカタール戦後に岡田監督からメンバーから外れることを告げられたときには驚きを隠せなかったという。
 実際、試合後のミックスゾーンで本田は苦笑いを繰り返していた。
「オフになるなんてまったく考えていなかったから。オレ、日本のどこに行けばいいんですかね。オランダ人だとこういうときは朝からビールを飲んでいるんだけど、オレにはそれはできないし。温泉にでも行きますか」
 ウズベキスタン戦、カタール戦と途中出場が続いた本田にとって、中村俊が不在のオーストラリア戦は先発でピッチに立てる最大のチャンスでもあった。岡田監督は「欧州組はいましかオフが取れないから」と休養を与えた目的を説明しているが、ならばなぜサンテティエンヌ所属のMF松井大輔は帯同させたのか。松井が故障でフランスリーグの最後の2か月をほぼリハビリに充てていたといっても、説得力に欠けていることは否めない。
 チームのスタイルとは異なる独自のポリシーと存在感を持ち、大いなる可能性を秘めている23歳のレフティーがキックオフからチームの中でどう機能するのか。W杯切符を手にするまではそうした可能性を試すことができなかったが、その機会をむざむざ放棄してしまったのだ。本田自身が拍子抜けしたのもうなづける。


 いくら若いとはいえ、本田にも1シーズンを戦い抜いた疲労が蓄積している。それでも、今後の日本代表の強化日程を見れば「多少は無理をさせても」との思いを抱かざるを得ない。
 次なる日本代表の招集は、現時点では9月に内定している欧州遠征まで間が空く。5日にアウエーでオランダと、9日には欧州内の中立地でガーナと対戦するプランは、岡田監督が描く強化策と合致する。特にすでに欧州予選突破を決めているオランダ戦は、おそらく圧倒される試合内容となるはずだが、「弾丸ツアーでもいいから強い国とアウエーで戦いたい」と望む指揮官には大歓迎となる。
 しかし、10月以降のカレンダーは来年3月まで残念な状況が続いている。
 10月10日にはスコットランドとの対戦が内定しているが、スポンサーの関係で日本国内での開催となり、必然的に相手がベストメンバーで来日するかどうかはわからない。5月に来日したチリやベルギーのような若手主体のチーム編成では、マスコミ受けする大勝こそしても、残念ながら強化につながる保証はない。14日も国際試合が行えるが、現時点では日本代表のスケジュールは空白だ。
 そして、11月14、18日には香港戦がホーム及びアウエーで組まれている。いまさらなぜ香港なのか。イビチャ・オシム前監督に率いられ、大会3連覇を目指して臨んだ07年のアジアカップで日本は準決勝でサウジアラビアに敗退。この大会では3位以内の国に11年1月にカタールで開催される次回大会へのシード権が与えられたが、日本は3位決定戦でも韓国にPK戦の末に敗退。必然的にアジアカップは予選から出場せざるを得なくなっていた。
 香港戦はまさにそのアジアカップ予選であり、来年1月6日にはイエメンのアウエー戦、3月3日にはホームにバーレーンを迎えるスケジュールが組まれている。イエメン戦を除けばすべて国際Aマッチデーであり、特に11月の両日は欧州組の選手を試合の4日前から招集することが可能となる。失礼な言い方になるが、チーム強化には最適となるチャンスで対戦相手が香港では、日本が得るものはほとんどないだろう。
 まさにオシム氏が残した「負の遺産」となるが、アジアカップで4位になったときから指摘されてきた問題でもあった。実際にW杯出場を決めたいま、ただでさえ全員がそろっての活動時間が限られる代表チームに大きな影を落とし始めている。


 だからといって、手をこまねいているだけではダメだ。可能性がある限り、あらゆる手段に打って出なければW杯ベスト4はただの夢物語に終わってしまう。
 そして、その仕事は岡田監督ではなく日本サッカー協会の管轄となる。
 アジアサッカー連盟および対戦国の香港とバーレーンと交渉し、あらゆるパイプを駆使して水面下で根回しをして試合の日程をずらす了解を取り付ける。そして、日本自らがアウエーに出向いて強化試合を組む交渉を同時に進めるのだ。
 11月の両日はW杯切符の最後のイスをかけたプレーオフが行われる。つまり、全9組で1位突破を決めた欧州勢、4位までに入った南米勢はスケジュールが空いている。現在、グループ5の1位を独走する世界ランク1位のスペイン、グループ8の1位・前回W杯王者イタリアと連戦することも決して絵空事ではない。グループ6の1位のイングランドとの対戦も可能だ。これほどの千載一遇のチャンスをむざむざ逃す手はない。全世界でW杯本大会をにらんだ強化試合が一斉に行われる来年3月3日も同様だ。
 ジーコ時代の06年3月1日にも、サウジアラビア・リヤドで行われる予定だったアジアカップ予選を同年9月にずらし、日本はドイツ・ドルトムントに渡ってボスニア・ヘルツェゴビナと対戦した。このときもセルビア・モンテネグロとの強化試合を先に決めたのはサウジアラビアで、日本も慌ててマッチメークに動いた経緯がある。そのときに得た教訓をいまこそ生かすべきではないか。
 香港およびバーレーンとの試合は、例えば来年1月6日のイエメン戦に続けて組むのもひとつの手だろう。欧州組以外の主力の疲労を考慮するのであれば、それこそ鹿島アントラーズのFW大迫勇也や浦和レッズのMF原口元気、ガンバ大阪のMF宇佐美貴史といった20歳以下の若手を思い切って招集。出場機会の少ないA代表組も含めて底上げを図るのもいい。
 乱暴な言い方になるが、イエメン、バーレーン、香港を含めた4チームの中で2位以内に入ればアジアカップ本大会に出場できる。バーレーンには今年1月に敵地で苦杯をなめたが、それでもイエメンや香港とは地力に違いがある。若手主体のチーム編成でも取りこぼすとは思えない。
 しかも、ここで結果を残せば南アへの扉も開く。こうした図式にすれば選手たちのモチベーションも必然的に上がるし、休養中の主力への刺激にもなる。若手を中心に新戦力が台頭すればメディアも活気づく。一石が二鳥にも三鳥にもなる可能性もある。
 すべては、日本サッカー協会の「交渉力」にかかっている。


 カタール戦から一夜明けた11日、日本サッカー協会の犬飼基昭会長がポルトガルから親善試合の申し込みを受けたことを明かしたが、具体的なスケジュールに触れたメディアは少なかった。
 ポルトガル自体が欧州予選グループ1の3位に甘んじ、W杯切符獲得への視界が不良であることもあるが、それ以上に現時点で日本のスケジュールに空きがなかなか見つからないという現状が大きく影響していたことは否めない。
 とにかく、現状のままでは強化は遅々として進まない。他の国も同じようなことを考えている以上、日本協会は迅速に行動を起こさなければいけない。これまでに挙げた11月14、18日、来年3月3日だけでなく、例えば次回の国際Aマッチデーである8月12日も、現時点で全世界で20試合が組まれている中に日本の名前は見つからない。
 8月8日に韓国・ソウルでKリーグ選抜と対戦するオールスターJOMOカップが組まれているが、その韓国が4日後の12日にパラグアイをソウルに招いて親善試合を組んでいるだけに、日本が試合をしない理由にはならない。
 オランダ対イングランド、スイス対イタリアなど欧州の主だった強豪国がすでに注目のカードを組み、オーストラリアもアイルランドに乗り込んで強化への第一歩を踏み出す。残っている強豪国はロシア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビアに南米アルゼンチンなど。いまからでも遅くはない。相手が来日して、というのでは難色を示されるかもしれないが、日本が乗り込むとなると話は別だろう。
 敵地ウズベキスタンで4大会連続のW杯出場を決め、翌7日に凱旋した記者会見で、犬飼会長は「岡田監督以下、チームが満足できる準備ができるように最大限のバックアップをしていく」と明言した。時間は限られている。ピッチの上だけでなく、いわゆる「背広組」も含めた日本サッカー界全体の総合力が問われる戦いはすでに始まっている。(文=藤江直人)

 
 

2009年6月13日 20:37|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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