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高原直泰の復活と日本代表復帰の可能性 by 藤江直人
■J1第17節
浦和レッズ(勝ち点34) 2‐1 サンフレッチェ広島(勝ち点23)
[7月11日午後7時キックオフ@埼玉スタジアム/観衆4万4149人]
よほど体がキレているのだろう。1点を追う前半34分。DF闘莉王が前線へ送ったロングボールに対し、FW高原直泰が難易度の高いアクロバティックな動きで反応した。後方からくるボールに対してジャンプ一番、空中でボレーの体勢に入る。ボールをうまくヒットさせることはできなかったが、コンディションのよさが伝わってくるシーンだった。
3月のリーグ開幕からノーゴールが続いていたが、6月に入るとナビスコカップを含めた公式戦5試合で5発。誰よりも本人が手応えを感じ始めている。
高原「体は動いてきていると思う」
コンディションのよさとの相乗効果で集中力も研ぎ澄まされる。後半23分。相手のクロスをMF阿部勇樹がヘディングで跳ね返したこぼれダマに誰よりも早く反応。センターサークル付近でボールを持って前を向いた瞬間、サンフレッチェ広島の守備陣と2対2の状況が生まれた。ドリブルで仕掛けながら、タイミングを見計らってFWエジミウソンにスルーパス。大声援を送り続けたサポーターを狂喜乱舞させる同点ゴールをアシストした。
高原「いいところにボールが来た。あとは相手の最終ラインとエジが出るタイミングを自分の中で計るだけでした。ホントにエジがよく決めてくれた。あれでチームが動き出した」
同点から6分後には右サイドからドリブルでペナルティーエリア内に侵入。DFストヤノフのファウルを誘ってPKを奪取した。このPKはエジミウソンが右ポストに当てて失敗してしまったが、39分には自陣の左サイドで厳しいマークにあいながら前方のMF原口元気に絶妙のロングパスを一閃。原口がファウルを受けて獲得したFKから、エジミウソンの逆転ゴールが生まれた。
体だけでなく、心も技も高いレベルで融合しているオールラウンドなFWの復活。試合後の会見で、レッズのフォルカー・フィンケ監督は同点となったシーンを振り返りながら高原を絶賛した。
「あれは本当に素晴らしいプレーだった。私としては、アシストをするFWというのは得点をするFWと同じ価値があると思っている」
高原の状態に信藤健仁チームディレクターも太鼓判を押す。
「動きが全然違う。とくに守備によく動くし、その流れの中からうまく攻撃に切り替えている。結果を残すことで自信も取り戻している。すべてがいい回り方になっている」
リーグ戦3試合連続ゴールはならなかったが、2位で後半戦にターンする貴重な逆転勝利に30歳となったFWの言葉も弾んだ。
高原「得点に絡むことが大事。いまはエジといい感じでプレーできるシーンが多いので、相手に十分脅威を与えていると思う。自分自身としては今日の出来はあまりよくなかったが、悪ければ悪いなりに何か仕事をしないといけない。この勝利を次につなげていきたい」
日本代表に名前を連ねなくなって、すでに1年以上が経過している。
オマーンとのW杯アジア3次予選を前に高原が岡田ジャパンから離脱した08年5月30日、日本サッカー協会から配信されたりリースには「所属クラブで調整するため」と理由が記されていた。
ブンデスリーガのフランクフルトからレッズに移籍したのが08年1月。ひざのけがで出遅れ、さらに首脳陣と起用法で対立して出場機会が激減していたことから約6年ぶりのJリーグ復帰を決意したが、失われたコンディションを取り戻すのは容易ではなかった。
周囲との連携も不足し、レッズというビッグクラブゆえにプレッシャーも圧し掛かる。描いていた理想と現実のギャップが、さらに焦りを増幅させる悪循環。日本代表でも精彩を欠いた昨シーズンは結局、公式戦であげたゴールがわずか8。年が明けても復調の気配はなかなか見えなかった。
その間に、日本代表の岡田武史監督は独自のコンセプトを構築。攻撃陣には玉田圭司、田中達也、大久保嘉人、岡崎慎司ら高さはないものの運動量と敏捷性のある選手を配置し、「全員守備、全員攻撃」を標榜して4大会連続のW杯切符を獲得した。
チームの骨格がほぼ固まったいま、1年間の空白を埋め、高原が戻る場所が日本代表にあるのだろうか。あるチームのスタッフがこんな情報を明かしてくれたことがある。
「狭いエリアで仕事ができる選手を優先的に探しているようですね」
同じ4‐2‐3‐1でも、オランダのように絶対的なFWを1トップにすえる形とはあくまでも一線を画したいようだ。レッズとサンフレッチェの試合を観戦した岡田監督は、「サンフレッチェはいいサッカーをしていたけど負けちゃったね。あとは特に何もないよ」とだけ言い残して埼玉スタジアムを後にした。その目に映っていたのは高原ではなく、前半6分に先制点を決めたFW佐藤寿人の運動量と敏捷性だったのだろうか。
岡田監督が観戦していたことを高原自身も知っていた。
高原「誰が来ようが自分がやることは変わらないし、誰かが来たからといって特別なことができるわけでもない。(岡田監督を)意識しても仕方ないし、この1試合で(W杯代表が)決まるわけでもないから」
発売中の『論スポ』でスポーツライターの玉木正之氏と対談している岡田監督は、日本代表のFWについてこう言及している。
「出場試合数の3分の1のゴールを獲ったらストライカーとして認めよう、と言っているんですけどね」
高原の今シーズンの成績は、ナビスコ杯を含めて22試合に出場して5ゴール。指揮官が掲げた最低限のノルマにはまだ足りない、ということなのだろうか。
その対談では、岡田監督は「外国人はターンしてシュートするけど日本人は前を向かない」という点にも触れた上でこう続けている。
「彼ら(日本人)が前を向くようにするには何年かかるのか。現状の中でどうやって勝つのかを考えるのは当たり前のことなんです」
しかし、サンフレッチェ戦を観戦したレッズ関係者は「ようやくペナルティーエリアの中でボールを持って前を向けるようになった」と高原の復調ぶりに目を細めている。背番号を「7」から、初心に戻る意味でジュビロ磐田に入団した98年から01年までつけていた「19」に戻して臨んだ今シーズン。ターンを含めた動きの質の高さ。豊富な運動量。相手ゴール付近における存在感。閉塞感を漂わせていた5月までの姿とは明らかに異なっている。
高原「自分はチームのために最善を尽くすだけ、やるべきことをやるだけです」
代表通算23ゴールと現役では三浦知良(横浜FC)に次ぐ結果を残し、岡田ジャパンのキーマンでもあるMF遠藤保仁からも「帰ってきてほしい」とラブコールを送られるFWは、短い言葉に今後への決意を込めた。「やり方は変えない」と頑固一徹を貫く指揮官を振り向かせるには、公式戦出場30試合で26ゴールと驚異の決定力で得点王とMVPを獲得した02年シーズンのような輝きを取り戻すしかないのだろうか。(文=藤江直人)
2009年7月12日 09:58|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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