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得点ランク首位/石川直宏の覚醒の秘密  by 藤江直人

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■J1第17節
FC東京(勝ち点28) 3‐0 名古屋グランパス(勝ち点22)
[7月12日午後6時30分キックオフ@味の素スタジアム/観衆2万4736人]


 ニュータイプとオールドタイプ。2人の石川直宏がピッチでまばゆい輝きを放った。
 開始早々の前半3分。まずはニュータイプが躍動する。GK権田修一のゴールキックをFW平山相太が後方に巧みに流すと、ボールは中央に位置していた石川の元へ。迷うことなくドリブルを開始し、一度左に進んでから右に急旋回すると、体を寄せてきた名古屋グランパスの守備陣3人が完全に振り回されてしまう。日本代表GK楢崎正剛の必死のダイブも届かず、右足から放たれた低く強烈な弾道がゴール右に吸い込まれた。
 01年にFWアマラオが達成したチーム記録に並ぶリーグ戦5試合連続のゴール。通算でも自身初の2けたとなる10の大台に乗せ、得点ランキングでもダヴィ(グランパス)、エジミウソン(浦和レッズ)のFW勢に並んでトップに浮上した。
 しかし、勢いはまだ止まらない。同34分にはオールドタイプが発動する。石川の代名詞でもあるスピードを駆使しての右サイドの疾走。平山が右サイドのオープンスペースにパスを出した瞬間は、グランパスのDF阿部翔平の方がボールとの距離が近かった。しかし、グングンと加速する石川があっという間に阿部を抜き去り、相手ペナルティーエリア近くでトップスピードに乗ったままマイナス方向に折り返す。ノーマークで飛び込んできたMF羽生直剛のシュートは楢崎に防がれたが、こぼれダマをFWカボレが押し込んだ。これで勝負ありだ。
 いまやボールを持って前を向くだけでサポーターを熱狂させられる、数少ないJリーガーの一人。28歳のミッドフィールダーの表情には充実感があふれている。
「右サイドが仕事場のときはロングボールを受けるとサポーターの歓声が起こり、1対1を仕掛ける楽しさがあった。いまはボールをうまくつないでいく中で、いい場面で自分が顔を出せば、その分だけ声援も大きくなっていく。それもまた楽しいですね。今日は以前の僕と最近の僕の、両方のいいところを見せられました。これからもワクワクするサッカーを求めていきたい。自分たちが楽しいサッカーをすれば、お金を払って観に来てくれるファンの方々も楽しんでくれると思うので」
 これまでは最も多くて年間5ゴールどまりだった男の突然の変貌。その背景には、昨シーズンから指揮を執る城福浩監督に告げられた事実上の「最後通告」があった。


 前身の東京ガス時代から育成を担当してきた城福監督は、監督就任に当たってチームスタイルを180度変換させることを決意した。カウンター狙いのリアクションサッカーから、パスワークで相手を崩すムービングフットボールへ。自ら主導権を握らないと悲願の優勝は狙えない、と選手個々に改革の意図を説明する中で石川にはこう伝えた。
「いままで通りに右のタッチライン際でボールを待っているだけではダメだよ」
 指揮官自身、石川の最大の長所であるタテへのスピードをスポイルするつもりはなかった。その上でどんな味付けができるのか。必要不可欠な選手になるためには何が足りないのか。サイドを突破するだけのプレーに限界を感じ始めていた石川にとっても歓迎すべき試行錯誤が始まった。
「サイドから中央に入っていったときに、自分の持ち味をどう生かせるか。チームが目指すサッカーの中で自分が消えないためには、そのことを考えなければいけなかった」
 スペースがあるサイドに比べてゴール前のエリアはマークも厳しくなり、タッチライン際で発揮していたトップスピードを駆使することはできなくなる。必然的にスピードを抑えてプレーしてみると、思わぬ副産物を手にすることができたという。
「スピードを落とすと、その分、イメージが浮かんでくるんです。相手がこう来たらこうしよう、というのがひとつだけでなく、ふたつもみっつも。自分に一番しっくりくるスピードというものがあるんですね」
 イメージ通りに決めたゴールが1点目だった。平山からのパスを受けて前を向くと、まずはゴールに向かって左側にドリブルで進み、直後に右に急旋回した。
「最初に打とうとしたシュートコースにDFが入っていたので、左に仕掛けて相手を寄せてからシュートを打つイメージだった。ナラさん(楢崎)は反応が早いので、相手をかわしたらすぐシュートを打つことだけを考えていた。イメージ通りのコースに行きました」
 平山の高さを生かして落としたボールを中で拾う形は、これまで何度も成功させていた。スピードを落とした石川のドリブルにグランパスの守備陣は翻弄され、最後はマークにいった3人とも振り切られた。横浜マリノスユースでは司令塔を務めていたことも、中央でのプレーに必要な創造力をもたらしているのだろう。城福監督は「日々の練習を見ていれば彼にシュート力と決定力があることはわかっていた」とも付け加えた。
 なるほど、ゴールラッシュの土壌は整っていたのだ。となれば、石川の大爆発は変貌というよりも、昨シーズンから背水の陣であることを胸に刻み、試行錯誤を積み重ねてきた中で「覚醒」したと見る方がいいのかもしれない。


 スタンドでは日本代表の岡田武史監督が試合を視察していた。群を抜くスピードでサイドを駆け抜け、中に切れ込んでは自ら仕掛けることができて、高い決定力も誇るMFは指揮官の目にどう映っていたのか。
「トータルで考えます。いますぐ何かあるわけではないので。点を取ったから調子はいいんじゃないですか」
 いつものJリーグ視察時と同様に選手個々には具体的に言及せず、結果として石川への評価も素っ気ない。いまの岡田ジャパンのフォーメーションに石川を当てはめれば、4‐2‐3‐1の「3」の右、中村俊輔のポジションと重なる。オランダで実績を残した本田圭祐も虎視眈々とレギュラー獲りを狙っているポジションだ。
「代表チームというものは、所属チームでいい結果を残したからといってすぐに入ってくるところではない。代表にどんなプラスを与えられるかだ」
 新たな選手の招集については同じ言葉を繰り返す岡田監督だが、せめて8月12日の国際Aマッチデーに強化試合を組み、石川をはじめとする「いまが旬」の選手たちを試してほしいというのが偽らざる本音だ。しかも、FC東京の鈴木徳彦強化部長は石川の原点でもあるサイド突破にも進化の跡があると指摘する。
「いままでみたいにただ上がり切るのではなくて、2点目のシーンでは中の味方をしっかりと見てマイナスにセンタリングを送っていた。成長していますよ」
 将棋の駒に例えれば、以前がタテに一直線の「香車」だったのに対し、いまでは「飛車」であり「角行」であり、ペナルティーエリアの中では「王将」としてゴールへの鋭い嗅覚を研ぎ澄ます。プレーの幅を大きく広げた石川は、相手にとって非常に厄介な存在であることは間違いない。
「岡田監督が来られていることは知っていました。特に何もないといいますか、僕をどう思われているのかもわかりませんからね。代表のこともあるけれど、僕がやるべきことは(FC東京の)ピッチの上で整理されている。いまは組織の中で生かされている実感がある」
 現時点で見ていて一番面白いJリーガー。フォア・ザ・チームを何度も強調したが、サッカー選手として、ゴールを量産して嬉しくないはずがない。
「ここから先は僕にとって未知の世界だけど、もっともっとのぞいてみたい。ここで終わりにしたくない」
 折り返しの段階ではかなり気の早い話と言われるかもしれないが、石川が得点王になればFWの選手以外では史上初、日本人では02年の高原直泰以来となる。ライバルの一人であるダヴィは、カタールのウム・サラルへの移籍でまもなくグランパスを離れることが決まっている。
                                        (文=藤江直人/写真=高須力)


2009年7月13日 05:20|記事URLコメント(1)トラックバック(0)

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コメント(1)

連続得点は止まりましたが
石川直宏の覚醒は本物でしょう。
これからマークはきつくなるでしょうが
その壁を乗り越えれば代表も視野に入ってくるのでしょうか


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