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湘南ベルマーレ/初の3連敗で誓い合ったこと  by 藤江直人


■J2第30節
徳島ヴォルティス(勝ち点46) 2‐1 湘南ベルマーレ(勝ち点60)
[7月26日午後7時キックオフ@平塚競技場/観衆6503人]


 さながら熱血感あふれる教師とその教え子たちが心をひとつにして、真夏の夜空を見上げながら誓いを立てている光景だった。
 終了6分前に献上した勝ち越し点を挽回できずにヴォルティス徳島に屈し、今シーズン初の3連敗を喫した湘南ベルマーレの選手たちがサポーターへ挨拶するためにフェンス沿いを歩み始める。その列に「選手たちだけに頭を下げさせたくない」と反町康治監督も加わり、一周した直後だった。ピッチに円陣を組んだ中央で指揮官が訴えた。
「誰も助けてくれない。ここからい上がるのは自分だし、自分たちだぞ」
 かつてアルビレックス新潟で5年間も苦楽をともにし、今シーズンから再び師弟の関係になったGK野澤洋輔は反町監督の言葉の意図をかみしめていた。
「反省するのと下を向くのとは違う。反省はするけど、オレたちには落ち込んでいるヒマはない。本当にJ1に昇格したいんだ、という気持ちを出すのはここからですよ」
 ひょうきんな言動でサポーターから愛され、いまもアルビレックスのユニホーム姿のファンから熱い声援を受ける29歳のベテランは、公開中の人気映画『ごくせん』で登場するセリフを用いながら選手たちの思いを代弁した。
「反町先生と一緒に、あの太陽に向かって走っていくぞ!」
 野澤が苦笑いしながら指をさした先には太陽ならぬ星が輝いていたが、まあいいか。不退転の決意は十二分に伝わってきた。


 第28節でアビスパ福岡に、第29節ではベガルタ仙台にともに残り10分を切ってからの逆転負けを喫し、迎えたヴォルティス戦。敵将・美濃部直彦監督は「3‐4‐3」と説明したが、実質的には5バックでベルマーレが攻め込むスペースを消し去る相手のプランにまんまと付き合わされてしまった。
 終始主導権を握りながらCKからのセカンドクロスをねじ込まれ、0‐1で迎えたハーフタイムでも指揮官は選手たちを「たかがサッカーじゃないか。ビクビクしてやるな」と大声で諭している。
 試合後の記者会見で、同監督は「たかが......」の意味をこう説明した。
「攻撃をしているのに、どこか後ろ髪を引かれているようなところがあった。あきらめが早いというか、すぐにネガティブに考えてしまうような部分がったので」
 アビスパ戦は2点をリードした心のスキを突かれ、ベガルタ戦では守備の要ジャーンの一発退場で大きくリズムを狂わせた。相手のシュートがDFに当たり、コースが変わって決勝点となってしまったヴォルティス戦を含めて、結果はともかく決して内容は悪くない。
「それでも勝てないのがサッカーの不思議なところ」と振り返った指揮官は、現状を打開する方策について強気な姿勢を崩さなかった。
「決して腰を引かずに、相手の懐に入っていくサッカーを我々は志向してきた。3連敗したからといって自信をなくし、それができなくなる悪循環だけは避けたい。相手はウチを研究してくるだろうけど、それを上回る迫力、ゲームプラン、攻撃的スタイルを創り上げていかないとこれからも勝ち切れない。これからも創作意欲がわくようなトレーニングを、笑って走れるようなメニューをこなしていくしかない」


 守りを固めるよりも攻める。4‐3‐3のスタイルのもと、ボールも選手も流動的に動き、常に主導権を握るサッカーで快進撃を果たしてきた今シーズン。第2クールに入って失点が急増してもポリシーを曲げず、初の3連敗と泥沼に入りかけてもブレない指揮官の背中は付き合いの長い野澤だけでなくJ2に甘んじて久しい選手たちをも強烈に後押しする。
 チーム最古参の30歳、MF坂本絋司は言う。
「ここから守りに入ってJ1に上がれるほど甘いリーグではない、ということ。もう一回強気になる。監督の姿勢をもちろん選手たちも感じている」
 幸いにも勝ち点60で並んでいたセレッソ大阪がFC岐阜に苦杯をなめ、前節でベルマーレを撃破したベガルタもヴァンフォーレ甲府に敗れた。J2戦線の約6割を終えた時点で、首位のセレッソから4位のベガルタまでが勝ち点3差以内にひしめく大混戦となった。
 残りは21戦。反町監督は会見で決意を新たにした。
「もうひとつ不思議と言えば、3連敗しても勝ち点でトップに並んでいること。4強と言われたチームすべてが苦労している。いままでが順風満帆で、いまは逆風満帆。このときに初めて監督としての資質が問われると思っている。特効薬などない。いままでやってきたことは間違いない、という自信をもとにマネジメントしていくしかない」


 勝負と位置づけていた7月の6試合を3連勝後の3連敗で終えた。再び6試合が組まれている酷暑の8月へ。試合後のピッチで組んだ円陣は指揮官の咆哮で解かれた。
「もう一度、8月に勝負するぞ!」
 後半11分に一時は同点に追いつくミドル弾を豪快に叩き込んだFW田原豊は言う。
「長いシーズンでこういう時期は必ずあるし、それがたまたまいまということ。思い切りのあるミスはしてもいい。正直、ここから先で問われるのはメンタルですから」
 映画『ごくせん』では、主人公の教師(仲間由紀恵)が問題児ばかりの3年D組をまとめるのに四苦八苦したが、09年の湘南に産声をあげた「反町組」には3連敗を喫しても不協和音は生じていない。
 ハッピーエンドとなるJ1復帰へ。「攻撃は最大の防御を合言葉」に、45歳の青年指揮官と10シーズン連続もJ2暮らしを余儀なくされてきた軍団は走り続ける。(文=藤江直人)


2009年7月27日 06:18|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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