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ガンバ大阪/無冠の危機での反攻宣言  by 藤江直人


■ナビスコカップ準々決勝第2戦
ガンバ大阪(1勝1敗) 2‐1 横浜F・マリノス(1勝1敗)
※2試合合計スコア4‐3で横浜F・マリノスが準決勝に進出
[7月29日午後7時30分キックオフ@ニッパツ三ツ沢球技場/観衆9133人]


 攻めまくるガンバ大阪。自陣のゴール前に人の壁を築いて必死に耐える横浜F・マリノス。もうどちらのホームなのかわからない。前半41分に日本代表DF中澤佑二が負傷退場したこともあり、後半開始から後者が3バックにフォーメーションを変更すると、試合の流れはますます前者に傾いていく。
 18分には右サイドバックの安田理大に代えてサイド攻撃のスペシャリスト、MF佐々木勇人が投入される。自身の後方に広大なスペースが生じるのを承知の上で、佐々木が何度も、何度も、何度も仕掛ける。交代から11分後の29分。これが奏功する。
 MF橋本英郎からのパスを受けた佐々木がゴールライン際までドリブルで攻め上がり、折り返したボールをFWレアンドロが難しい体勢から豪快にボレー。1‐1の均衡を破る一撃がネット右隅に吸い込まれても、ガンバは手を緩めない。
 何がなんでもあと1点。文字通りの執念が込められた総攻撃だったが、さらに守りを固めたF・マリノスを崩すまでには至らない。ボールポゼッションは約60%に対して約40%。放ったシュート数は15本に対して9本。コーナーキックは5本に対して1本。すべてにおいて圧倒したガンバの選手たちが、試合終了の笛が鳴り響くと同時にがっくりと肩を落とした。
 試合には勝った。しかし、ナビスコカップの準々決勝は2戦の合計スコアで争われる。2週間前の第1戦ではホームの万博競技場で1‐3と屈辱的な完敗を喫していた。あと1点を奪えば15分ハーフの延長戦にもつれ込んでいたのだが......試合後の会見で西野朗監督が唸った。
「果敢にチャレンジはできたが、1戦目の万博でのゲームが重かったという気がする。先手を取ればチャンスがある、相手のスキを突くことができる、という中で立ち上がりから攻撃的にやれたと思う。失点しても状況は変わらなかった。3点取らなければならないので。ハーフタイムでも、次の点が取れれば必ず引っくり返せると選手たちは自信をみなぎらせていた。いい試合はできると期待していたが、あと一歩及ばなかった」


 3月の開幕前の時点では最大で5つのタイトルを手にする可能性があった今シーズン。天皇杯覇者として昨シーズンのリーグ王者・鹿島アントラーズと激突したゼロックス・スーパーカップで0‐3と粉砕されたのは、悪夢の序章に過ぎなかった。
 アジア連覇を合言葉にしたACLは1次リーグF組を1位で突破しながら、決勝トーナメント1回戦で川崎フロンターレに屈して夢半ばで姿を消した。2年ぶりの戴冠を目指したナビスコカップもこの夜で終戦。J1リーグに目を向ければ、首位アントラーズに勝ち点で15もの大差をつけられての6位。残り15試合での逆転はほとんど不可能に近い状況だ。
 5冠総なめから一転して無冠の危機。スーパーカップのときは「けが人続出」という情状酌量の余地があった。ならば、どこで歯車が狂ってしまったのか。橋本は6月24日をターニングポイントに挙げた。
「ACLでフロンターレに負けた一戦が正直、響きました」
 一発勝負で行われた決勝トーナメント1回戦。スタジアムはホームの万博競技場。レアンドロの2発で2‐1とリードし、残り時間は15分を切っていた。勝利を確信しかけた矢先のまさかの連続失点で喫した逆転負けは、「もう一度クラブW杯の舞台に立って世界と戦う」ことを目標にしてきた選手たちの心に想像以上の爪跡を残していた。
 橋本自身もまだショックを引きずっている。
「2つとも防げた失点でしたから」
 7月に入るとリーグ戦でなす術なく3連敗。優勝戦線から大きく後退し、F・マリノスに1‐3と完敗した15日の準々決勝第1戦後には万博に駆けつけたサポーターが激怒。西野監督の解任を求める騒動まで発生した。
 しかし、苦戦の予兆は実は開幕直後の3月22日、京都サンガに1‐2でリーグ戦初黒星を喫したときにすでに顔をのぞかせていた。
 言葉は適切でないかもしれないが、その後も大宮アルディージャ、ヴィッセル神戸といった本来ならば格下のチームに苦杯をなめている。その度にチームは自信と勢いを失い、ACL敗退でさらに泥沼にはまってしまったわけだ。


 02年から指揮を執る西野監督の長期政権下で攻撃的なスタイルを着実に築き上げ、昨年12月のクラブW杯では欧州王者マンチェスター・ユナイテッドを相手に3‐5と打ち合いを演じるまでに成長したガンバだったが、今シーズンはその突出した攻撃力ゆえに墓穴を掘ってきた。
 日本代表MFの遠藤保仁は言う。
「毎試合研究されているというか、負けるパターンはいつも一緒なんで」
 ボールを回されたらガンバには到底かなわない。ならば、好きなだけボールをもたせて、ボールポゼッションではあえて花を持たせよう。でも、ゴール前の最も危ない地帯のガードだけは固める。耐えて、耐えて、耐え忍んで、相手が焦ってかさにかかって攻めてきたときがチャンス。ボールを奪ってカウンターを仕掛ければいいんだ。
 遠藤が指摘するガンバ対策を簡潔に説明すればこうなる。西野監督以下、ガンバの選手たちも相手の戦法をもちろん見抜いている。その上で力でねじ伏せることができなければ、アジアを連覇する崇高な目標は果たせない。積み上げてきた意地と誇りが皮肉にも格好の標的となってしまった。
 それでも、遠藤はチーム全員の思いを代弁する。
「チームなので調子がいいときも悪いときもあるけど、やっぱり悪いときでも結果を出していかないと。全力を尽くした末に負けたということは、自分たちにまだ力がなかったということ。ウチは上(前線)でどうにかするチームじゃない。下(中盤)でつないで、つないで、どこかで崩したいんです」
 7月に入って喫した4連敗を機に、ポゼッションサッカーにプラスアルファを求めるチャレンジに取り組んできた。
「ボールをキープするだけじゃなくて、いかに前線に効果的なクサビを入れられるか。佐々木が入れば、サイドからの攻撃がより強化される。いまはいかにボールポゼッションを有効に生かせるか、ということを考えている」
 会見で新たなトライの一端を明らかにした指揮官は、意を決したように残るシーズンを見すえた。
「いまやれるスタイルを次も続けていく。それだけです」


 ゴール裏に陣取ったガンバのサポーターは試合後、挨拶にきた選手たちをこれまでの罵声ではなく拍手で出迎えた。
 最後まで逆転勝利をあきらめなかった姿勢と、後半に入って極端に守りを固めたF・マリノスから1ゴールを奪い、相手のホームで一矢を報いた90分間が称えられたのだろう。
「今日だけ見ればいいゲーム。全体的に気持ちも入っていたし、みんなもだんだん自信を取り戻してきた。この流れをリーグ戦につなげてきたい。開幕する前はタイトルがひとつだけなんて思ってもいなかったし、結果としてあとはリーグ戦と天皇杯だけになってしまったけど、あきらめるにはまだ早い。必ずタイトルは獲りたい」
 遠藤が8月戦線以降の巻き返しを誓えば、橋本は「このままでは終われない」とガンバ魂を振り絞ることをサポーターに約束した。
「2位と3位はまだ近い。ひとつずつ、確実に積み上げていきたい」
 リーグ戦で3位以内に入れば来シーズンのACL出場権を獲得できる。現時点で勝ち点34で並ぶ2位アルビレックス新潟、3位浦和レッズとの差は5。くしくも直接対決も8月15日にレッズ戦、19日にはアルビレックス戦が組まれている。
 確かに、まだ白旗を上げて今シーズンの終戦を迎える状況ではない。過酷な夏場のJ1戦線はフィジカルと同時に、関西の雄・ガンバの心の強さが問われることになる。(文=藤江直人)

2009年7月30日 04:35|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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