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泥沼にはまった浦和レッズのこれから  by 藤江直人


■J1第20節
清水エスパルス(勝ち点32) 1‐0 浦和レッズ(勝ち点34)
[8月2日午後6時キックオフ@埼玉スタジアム/観衆4万5186人]


 負のスパイラルに陥っているときは、だいたいこんな結末になってしまう。
 細かいパスをつなぎ、常に主導権を握る浦和レッズ。守備を固め、カウンターを狙う清水エスパルス。前後半で合わせて13本を数えたレッズのシュートは、なかなかゴールの枠をとらえることができない。その一方で、カウンターから後半25分にエスパルスのMF枝村匠馬が放った一撃はブロックに飛び込んだDF坪井慶介の足をかすめ、微妙にコースを変えてそのままネットを揺らしてしまう。
「90分間の中で必ずチャンスはあると選手たちには言っていた。ラッキーな部分もありましたけど、枝村がよく決めてくれた」
 値千金の決勝点にエスパルスの長谷川健太監督が思わず相好を崩す。一方のレッズの選手たちは文字通りの茫然自失。まさかのリーグ戦3連敗。同じエスパルスに完敗した7月29日のナビスコカップ準々決勝第2戦を含めれば4試合連続ノーゴールという非常事態の中で、フォルカー・フィンケ監督は何とも意外な言葉で会見を始めた。
「もしかすると皆さんは不思議がるかもしれないが、今日の試合の内容に関して言えば、私は不満というわけではない」
 

 ただの虚勢なのか。偽らざる本音なのか。今シーズンから指揮を執る61歳のドイツ人指揮官の真意は次のコメントから推察できる。
「もちろん結果を求められていることは理解しているし、ここ数試合、ゴールを挙げていないという状況をしっかり分析しなければいけないが、ここで言いたいのは私たちが今年に入って進もうとしている全体像を把握してください、ということです。今日はゴールを奪うことこそできなかったが、決定機はたくさんあった。これは私たちが進む道は間違っていないことを証明しています」
 どうやら虚勢が3割、本音が7割といったところか。最終的なボールポゼッションが62%に達した試合内容に及第点を与えたいとしているが、この論法、どこかで聞いたことがある。
 圧倒的に試合を支配しながら決定力を欠き、2月のオーストラリア戦をスコアレスドローで終えた直後の岡田武史・日本代表監督の持論とそのほとんどが重なるのだ。
 岡田監督はその他のホームの試合でもボールポゼッションが常に60%を上回っている点を指摘。その上で日本代表は決して決定力不足ではないと断言し、今後に進むべき道を「チャンスの数を増やしていくしかない」とひとつに絞っている。
 翻ってフィンケ監督はどうか。会見で「肝心な場面でシュートの数が少ないのでは」という質問にこう反論している。
「できる限りシュートに持ち込む努力はしているが、数ということにおいては悪くないと思っている。いま入り込んだ穴はいつか必ず終わるし、ゴールを決められる試合も訪れる。そのためには多くの得点チャンスを作り出していくことが必要だ」
 なるほど、両者の持論は確かに似通っている。

 
 その一方で決定的に異なる部分もある。
 現時点でいっさいの申し開きをしていない岡田監督に対して、フィンケ監督がふたつの言い訳を用意していた点だ。「今日ももう少し幸運が手伝えばゴールできた」と見えざる要素にすがったのはともかく、疲労とけが人を引き合いに出した次のコメントはちょっと筋違いのように思えてならない。
「8日間で3試合という日程を何度も消化してきて、選手たちにはどうしても疲労がたまっている。それが原因でなかなかいいプレーを見せられない。疲労以外にも、けが人が多いという台所事情もひとつのポイントだ。このような状況の試合ではメンタルが強い選手が必要なのは明らかで、我々にとってそういった質をもった選手は闘莉王であることは間違いない」
 公式戦4連敗はくしくもDF闘莉王の故障離脱から始まっているが、疲労やけが人は何もレッズだけに限ったことではない。例えばFC東京の城福浩監督は高温多湿の夏場の連戦で蓄積した疲労について聞かれると、決まって「条件は同じ」と同じ言葉を返してくる。
 会見にはパートナー企業のトルコ航空の招きで来日したトルコ人記者も出席。「疲労などは別にして、監督としてチームをどのように前へ進めるのか」と核心を突く質問も浴びせられた。
 指揮官の答えはこうだった。
「この状況でこのような質問をされることは理解できる。確かにゴールを決めるということにおいて、決定力不足と言わざるを得ない。私のチームはエジミウソンが決めなければゴールは生まれない。高原や原口はチームのために走り回ってくれている。毎年20ゴールを決められる選手を買うことも解決策だが、私は自分の仕事をしてチームを成長させていきたい」
 決定力不足であること、特定のFWに頼っていることを認めた点も岡田監督とは異なる。最後まで指揮官から現状打開への処方箋が示されることはなかった。


 しかし、実際にピッチで戦った選手たちは打開策を肌で感じている。
 右太もも痛が長引き、3月7日の開幕戦以来の出場となった左サイドバックの平川忠亮は、スタンドからチームの戦いを見てきた経験を踏まえて現状をこう指摘した。
「ショートパスをつなぐサッカーはできてきているけど、結局、それを目標にしているだけの部分がある。別にロングシュートを打ってもいいし、シュートを打てるところでもパス、パスという感じ。見た目は綺麗に見えるかもしれないけど、泥臭くシュートを打って、相手に当たって方向が変わることもある。やっぱり点が入らないとサッカーは勝てない」
 19歳の山田直樹、18歳の原口元気といった若手が先発を名前を連ね、世代交代も進められているレッズだが、指揮官の影響力が強ければ強いほど、手段が目的と入れ替わってしまう弊害が起こりかねない。
 ここでパスをつながないと怒られるのではないか。得意のドリブルで仕掛けたいんだけど。いまのシーン、シュートを打てたかもしれない――試合こそ支配していても、特に若手に閉塞感が募っていることは想像に難くない。
 実際、レッズ社長出身の日本サッカー協会・犬飼基昭会長も、原口について「フィンケにドリブルをするなと言われたら、おとなしくパスの相手を探している」と最大の持ち味がスポイルされかかっている点を不安視していた。
 だからこそ、キャプテンのMF鈴木啓太は山田直や原口を「アグレッシブだし、プロとしての戦術眼ももっている」とチームに欠かせない戦力と認めた上でこう続けた。
「彼らを気持ちよくプレーさせることも必要。肝心なポイントは経験のある僕たちがしっかりと抑えればいいんですから。監督の考えのもとでプレーすることも大事ですけど、ピッチにたった11人のハーモニーも大事。ひとつの手法もそうですけど、もっと自分たちで考えることが、何を感じてどうすれば崩せるのかを考えることが大事だと思う」


 今後は日韓オールスター対抗戦「JOMOカップ」が8日に開催される関係で、リーグ戦は15日まで中断される。
 フィンケ監督は「非常に喜ばしいことだ」と中断を笑顔で歓迎し、3日から3日間にわたって全選手にメディカルチェックを施すことを明言。各自の疲労度を把握した上で数日間のオフを与え、疲労を完全に取り除きたいとしている。
「できる限りの準備をしてガンバ大阪戦に臨みたい」
 指揮官は敵地に乗り込む再開後の初戦へ必勝を期したが、疲労という要因が消去されれば、クローズアップされるのは監督としての手腕となる。開幕からの10戦で23の勝ち点を積み上げたものの、その後の10戦では11にとどまってしまった現状を見れば、もはや「まだチームを作っている段階」という理由は受け入れられなくなるはずだ。
 選手たちが手段と目的の関係をもう一度見つめ直せるかどうか、監督の戦術を踏まえた上で個々の色を上塗りできるかどうかを含めて、15日の大一番はレッズの今シーズンを占う上で非常に重要な90分間となってきた。(文=藤江直人)

2009年8月 3日 11:27|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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