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オレンジ軍団から突きつけられた現実 by 藤江直人
■サッカー国際親善試合
オランダ代表 3‐0(前半0‐0) 日本代表
[9月5日現地時間午後2時キックオフ@オランダ・エンスヘーデ]
運動量という「鎧」をはがされると、ここまで無残な姿をさらしてしまうものなのか。
オランダに先制点を奪われた後半24分を境に日本代表はまったく別の顔をのぞかせ始め、最終的には0‐3とFIFAランキング3位の底力を見せつけられる完敗を喫した。
親善試合にもかかわらず、前半だけでオランダがもらったイエローカードが2枚。デ・ヨンクとスナイデルが明らかに苛立っていたのが画面越しにも伝わってきた。特に攻撃の起点となる後者にボールが入ると、瞬く間に日本の青いユニホームに取り囲まれてボールを失う。
日本の運動量は特に中盤において完全にオランダを凌駕し、何度もボールを奪うことに成功した。気温18度、湿度45%と絶好のコンディションだったことにも後押しされ、前半終了時にはオランダの不甲斐ない戦いぶりにサポーターからブーイングが浴びせられたほどだった。
しかし、この戦い方を90分間続けるだけの体力はいまの日本代表には備わっていない。個々の能力で劣る中でギリギリの攻防を繰り広げてきたが、後半24分にDF中澤佑二が「日本の課題」と指摘したセットプレーからFWファン・ペルシーにゴールを決められると緊張の糸が切れてしまったのだろう。
全体のラインが間延びし、中盤に生じ始めたスペースを面白いようにオランダに突かれる。28分に落ち着きを取り戻したスナイデル、42分には途中出場のFWフンテラールにゴールを叩き込まれる。せめて一矢でも報いたい、という気持ちをプレーで体現するだけの力は、もはや日本の選手の体には残っていなかった。
6月にW杯南アフリカ大会出場を決めた直後に、岡田武史監督はフィジカルを向上させるプランをこう説明していた。
「選手の所属チームの了解を得ながら、選手に1年間を通してやってもらいたいことを課題として与えていきたい」
全員守備、全員攻撃というコンセプトについては「世界に勝つために作ったもので、変えるつもりはない」という。オランダを本気にさせた部分は確かに評価できるが、体力というベースが完璧に整わなければ、まさに絵に描いた餅になってしまうことがこの日の完敗で明らかになったわけだ。
たらればの話になるが、日本が主導権を握っていた時間帯にゴールを決めていれば、また違った展開になっていたはずだ。
しかし、決定的な場面と言えば、前半20分のゴール左に外れたMF長谷部誠のシュートと相手GKにセーブされた後半17分のMF中村俊輔のFK。他にもチャンスは生まれかけたが、毎回のように同じパターンで潰してしまう。
そのパターンとは何か。シュートまでの最短距離を選ばないことだ。
例えば前半16分。キックオフ直前まで降っていた雨で濡れた芝生に足を取られた相手選手が転倒。FW岡崎慎司がルーズボールをかっさらったが、なかなかトップスピードに乗れないドリブルを見ていると、自分が打つというよりもパスの相手を探しているように映った。最後は自ら右足を振り抜いたが、ミートしなかったシュートは枠にすら飛ばなかった。
前半36分には相手ゴール前の中央で俊輔がボールを受けたが、最初からシュートの選択肢はなかったのだろう。左側に上がっていたDF田中マルクス闘莉王へのヨコパスで、ゴールへの期待は一気に萎んだ。後半12分にも長谷部が高い位置で相手ボールをカットしたが、パスを受けた俊輔がやはりプレーに時間をかけてしまう。
やみくもに攻め急いでボールを失えばカウンターの危険にさらされる。それはそれで理解できるが、ならば相手が最も怖がることは、嫌がることはどんなことか。守備陣形が整わないうちにシュートを打たれることであり、余計な手間をかければそれだけ相手に考える時間を与えてしまう。
オランダも日本と同じ4‐2‐3‐1の布陣だったが、「3」の部分の両翼、ロッベンとファン・ペルシーは前半からボールを持てば最短距離で日本ゴールに迫ってきた。DF内田篤人はロッベンとのマッチアップでスタミナを使い果たしたのか、後半途中から明らかにプレーに精彩を欠いていたほどだ。
翻って、日本の「3」の両翼は、左の岡崎はともかく、右の俊輔はどうしても中央寄りでパスの供給役になることを好む。W杯予選7試合でわずか2失点のオランダにとって、ピンポイントのパスさえ俊輔に出させなければゴールを奪われる心配はなかったはずだ。
岡田監督がこれからも4‐2‐3‐1のスタイルを貫く以上、俊輔の起用位置の再考とウイングのような突破力を持ったストライカータイプの抜擢を痛感させられた一戦でもあった。大久保嘉人と松井大輔を故障で欠く今遠征だが、いまのJリーグを見渡したとき、突破力と得点力を兼ね備えた選手としてはやはりFC東京の石川直宏が浮かんでくるのだが。
後半になってからのオランダは、ロッベンに代わって投入されたエリアが出色のプレーで流れを引き寄せ、1点目と3点目をアシストした。
サッカーにおいては交代選手が大きな役割を果たすことを再認識させられたが、ならば日本はどうだったか。エリアと同じく後半開始からFW玉田圭司に代わってピッチに入ったMF本田圭祐だったが、何もできないまま試合終了の笛を聞くしかなかった。
日本全体の運動量が落ちていたという状況もあるが、だからこそフレッシュな選手が活性化させなければいけないのはエリアを見れば明らかだ。しかし、本田自身の運動量も少なかったし、テレビを見ている限りはボールをもらうための工夫も乏しいし、ゴールに迫っていく闘志も伝わってこない。まるで「オレによこせ」と王様のように振る舞っていた45分間だった。
試合後、俊輔は本田との共存について、不完全だったとこう振り返っている。
「点を取られてから運動量を上げないといけないのに、交代選手が入ったと同時に連係がうまくいかず、運動量も自然と減ってしまった。そこをもっと明確にしていかないといけない」
オランダリーグで開幕から4試合連続でゴールを決めている実績に加えて、 歯に絹を着せない本田のビッグマウスぶりは期待を抱かせる何かを持っている。開始早々に俊輔が足を痛めたときには、アップをしながら「早くオレを出せ」というオーラをプンプンと放っていた。
それはそれでよし。自己主張をせず、小さくまとまる選手が多いからこそ本田の存在感は際立つが、肝心のピッチに立ったとたんに試合から消えているようではビッグマウスぶりがむしろ逆の効果を生み出してしまう。
「ずっと言われている課題、最後のペナルティーエリアに入ってからのプレーが物足りなかった」
岡田監督はいつものように表情を変えずに淡々とした口調で試合を振り返り、自らが望んでいた世界の強豪国との対戦をこう総括した。
「予想通りというか、やりようによっては通用する部分もあると思います」
2001年3月に敵地サンドニでフランス代表に0‐5と惨敗を喫した当時のフィリップ・トルシエ監督は守備重視を打ち出し、フランス戦の前半だけでベンチに下げた中村俊輔をスケープゴートにして翌年の日韓共催W杯へ再出発を図った。
ならば、南アフリカ大会開幕まで残り9か月となった段階で喫した完敗を岡田監督はどのように受け止めたのか。
「いままでやってきたことを詰めるしかない」
自らに言い聞かせるように指揮官は"ブレない"ことを誓った。しかし、コンセプトを完璧に実践できるだけのフィジカル面の強化、ゴールを奪うための選手起用の再考、サブを含めたチーム全体の底上げなど、W杯本番でも同組になる可能性のあるオレンジ軍団から突きつけられた課題は多い。
2009年9月 6日 01:24|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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