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日本代表が再確認すべきサイド攻撃の意図 by 藤江直人
■サッカー・アジアカップ予選
日本代表(勝ち点6) 6‐0 香港代表(勝ち点0)
[10月8日午後7時20分キックオフ@アウトソーシングスタジアム日本平/観衆1万6028人]
試合後の公式会見。その最後に岡田武史監督が残した言葉が、実力差通りの結果となったこの試合のすべてを象徴していた。
「6ゴールのうち最も印象に残るものは」
報道陣からの問いに「僕は何でもいいです。ゴールが入れば」と会場の笑いを誘った指揮官は「それ以上に」とこう続けたのだ。
「駒野がディフェンスラインの裏に鋭いクロスを入れたのを大久保が入れなかったのと、前半に右サイドから長谷部だったと思うんですけど、素晴しいクロスに3、4人飛び込んでいったのに誰も触れなかった。それから、後半に左から俊輔がディフェンスラインの裏に素晴らしいクロスを入れたのに、やはりシュートミスだった。そういう方が印象に残っています」
3つ挙げたプレーのうち2つ目のクロスを放ったのはMF中村俊輔だったことを報道陣から確認されると、岡田監督は「もういいよ、忘れた」と苦笑いを浮かべながら会場を後にした。すべてがサイドからのクロスを含んだ場面。07年12月の再登板以来、口酸っぱくその重要性を唱えてきたサイド攻撃で結果を出せなかったことが、大量6ゴールを挙げての快勝の余韻を吹き飛ばしていた。
時間軸で追えば、まずは前半19分。右サイドから俊輔が右足で相手GKと最終ラインの間に低く早いパスを通す。ニアへ岡崎慎司、中央へ玉田圭司の2トップ、ファーにMF大久保嘉人が飛び込むもボールにはかすらず、中央をフォローしてきたMF長谷部誠と交錯した玉田が肋軟骨を痛めて15分後に退場するアクシデントまで招いてしまった。
次は後半8分。俊輔がボールをキープする間に右サイドを抜け出したDF駒野友一が、パスを受けてから超高速のクロスを通す。味方の誰かがボールに触れるだけでゴールが生まれる展開だったが、ファーサイドにいた大久保の反応がわずかに遅れる。左足ボレーで弾かれたボールは、ゴールの枠のはるか上を通過してスタンドのため息を誘った。
最後はその3分後。俊輔が今度は左サイドから巻くようなグラウンダーのクロスを入れる。岡崎が十八番のダイビングヘッドでゴールを狙うもわずかに額にヒットせず、ボールはゴールラインを割った。
香港戦を前に6日に静岡市内に集合した日本代表は、北上してくる台風18号の影響で大荒れとなった天候の中で左右からのクロスを何度も繰り返して練習した。
その意図を岡田監督はこう説明している。
「クロスの成功率がどうしても日本の場合低い。これから強いチームと当たっていく時に、中央というのはなかなか難しくなる。サイドの裏からどうしてもクロスで合わせていかないといけない。クロスのキックの質も当然あるんですが、いいポジションを取っていても、入るタイミングがあるので、今回は共通の意識を持とうということでトライしていた」
3つのシーン以外にも、日本代表は何度も両サイドからクロスを放っていた。しかし、ゴールに結びついたものはわずかにひとつ。後半30分に右サイドをオーバーラップした初キャップのDF徳永悠平がガラ空きとなったゴール前に低いクロスを入れ、走り込んだ岡崎がヘディングで叩き込んだ5点目だけだった。
そもそも、サイド攻撃の意図とは何なのか。額面通りに両サイドからクロスを上げることなのか。その答えがNOであることは、FIFAランキング128位でアジアカップ予選でも未勝利の香港守備陣にいとも簡単に跳ね返されていたことからも明白だ。
ゴール前の守りはどこの国も高く、強い。日本代表でも中澤佑二と田中マルクス闘莉王が不動のコンビとなっているし、FIFAランクが上がるほどに日本代表がこじ開けるべき城壁は難攻不落になる。
ならば、どのように城壁に風穴を空けるのか。相手ゴール前の守りを手薄にするしかない。サイドで起点を作り、数的優位を作り、相手のセンターバックを誘き出す。そうすれば相手ゴール前の脅威も軽減し、攻め込むスペースも生まれ、クロスだけなく多彩な攻撃を仕掛けられる。サイド攻撃が重要視されるゆえんがここに凝縮されている。
つまり、クロスを放り込むことを目的としているような日本代表のパターンは、サイド攻撃の本来の意図から外れていることになる。時間と空間が与えられたセットプレーならともかく、インプレーの状況でゴール前の味方にピンポイントでクロスを合わせることは至難の業だ。
何のためにスタミナが豊富で、どんどん攻め上がってくる両サイドバックを配置しているのか。両サイドのMFあるいはFWと連動し、サイドで数的優位に立って起点を作るためのはずだ。しかし、その意図を持ってプレーしていた攻撃陣は、残念ながら途中出場のMF松井大輔くらいだった。
俊輔もサイドで絡んではいたが、点差がついた後半は中央でのプレーを好む傾向がより鮮明になった。サイドをしつこく何度も攻めた後の中央ならまだ効果はある。しかし、スルーパスという言葉自体が死語になりつつある中で、この姿勢は逆にボールカットされてのカウンターを招きやすい。この日は香港が相手だから無傷で済んだ、とも言えるだろう。
実際、岡田監督も「我々にとって貴重な選手」と評価した上で、俊輔のプレーにはあえてこんな言葉で苦言を呈している。
「ちょっと狙う意識が強かった。彼は決定的なパスを何本も通していたと思うんですけど、もうちょっと楽にプレーして良かったところもあったかもしれません。ミスがちょっと目立ったというところもある」
幸いにも日本には松井、この日はベンチ入りしなかったが石川直宏と、サイドで相手の脅威になり、守備網に混乱を引き起こせる選手を擁している。ボランチの長谷部もどんどん前へ出る積極性とスタミナを兼ね備えている。長友佑都、明日のスコットランド戦は出場するであろう内田篤人の両サイドバックも然り、だ。
日本代表では実に9年ぶりとなるハットトリックを達成した岡崎の成長は著しいし、彼の泥臭い姿勢がある限り、まだまだ進化してくだろう。しかし、香港戦での1点目(岡崎)、2点目(長友)、6点目(岡崎)のように中央から相手守備陣を攻め崩せるパターンは、すべてが日本より格上の対戦となる来年のW杯ではまず実現しない。
3点目(中澤)、4点目(闘莉王)を生んだセットプレーにしても、世界の列強相手にCK一発で崩すのは難しい。中澤自身も「セットプレーは日本の最大の武器なので引き続き精度を上げていきたい」と当然のように満足していないし、FKと言っても百発百中の成功率を誇る名キッカーを擁していれば話は別だが、ないものねだりはできない。
だからこそ、サイド攻撃がクローズアップされてくる。
果敢な攻撃参加を何度も見せた長友は試合後、クロスについて「もっと精度を上げないと世界とは戦えない」と反省していたが、精度うんぬんも大切だが、重要なのはサイド攻撃を仕掛ける手段ではなく目的だ。繰り返して言うが、上背のない日本のFW陣にピンポイントでクロスを合わせることは、それこそ10本蹴って1本あればいいという確率のはずだ。
南アで最低でも1次リーグを突破するためには、当然のことながらゴールを決めることが求められる。岡田監督はこれからもサイド攻撃を重要視するはずだが、青写真を現実のものとするためには、選手の起用を含めた発想の根本的な転換が求められることになる。 (写真=田口有史)
2009年10月 9日 12:03|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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