Home > 本日の論! > CS出場決定!東京ヤクルトスワローズを支えた原点回帰 by 藤江直人
CS出場決定!東京ヤクルトスワローズを支えた原点回帰 by 藤江直人
東京ヤクルトスワローズが球団史上初のクライマックスシリーズ出場を決めた。8月4日で最大「14」を数えた貯金が瞬く間に目減りし、借金生活に突入し、4月中旬から死守してきた3位の座を明け渡し、負債が「10」にまで膨らんだのが9月21日。この時点で5位。終盤戦に入ってからの阪神タイガースの勢いとけが人続出のヤクルトのチーム状況を考えれば、そのままズルズルと終戦を迎えても決して不思議ではなかった。
昨シーズンも同様のパターンだった。9月の声を聞いた時点でクライマックスシリーズ出場の可能性を残していたが、8連敗を喫した時点で戦意を喪失。その後も黒星を重ね、最終的には5位に終わった。翻って今シーズンはどうか。9月5日の巨人戦から15日の横浜戦までシーズンワーストの9連敗を記録しているだけに、前半戦の快進撃も反動もあり、このまま終われば「昨シーズンよりも退化している」と言われても何ら反論はできなかったはずだ。
9連敗の渦中で発売中の「論スポ」のインタビュー取材に応じてくれた38歳のベテラン・宮本慎也内野手は、「プロである以上は結果がすべて」と天国から地獄に突き落とされた現実を甘んじて受け入れた上で、残された戦いで原点に回帰する必要性を訴えた。
宮本「けが人がどうこうといった言い訳はせずに全員でしっかりと受け止めて、チームのためにやるべきことをやる。例えば、チャンスで打てなかった時のことを考えればやっぱり打てない。打てなかったら『すみません』で僕はいいと思っている。絶対に打たなきゃいけない場面で必ず打つ選手はいないでしょう。長嶋さんが勝負強いと言われていますけど、打てなかった場面もあるはずなんです。人間がやることなので、だからこそしっかりとした準備のもとで、自分が責任を取る覚悟と言ったら大袈裟ですけど、打てなかったら自分の力不足と感じてもっと練習すればいい。準備さえしていればバットも出るだろうし、守備では足も出てくる。それでミスをしたら練習すればいい。腹をくくるんです」
9連敗の後に連勝したものの、再び4連敗。ここがターニングポイントになったのではないか。どん底のさらに底で宮本が言うように腹をくくったのか。4年目の高木啓充、育成からはい上がってきたユウキ、右のエース館山昌平が3試合連続の完投勝利をマーク。球団史上で13年ぶりとなる快挙には、荒木大輔投手コーチが今シーズンから導入した「先発投手はタマ数を首脳陣に聞くべからず」というルールが好影響を与えていた。
100球に達したからお役御免といったメジャー流ではなく、先発投手は自覚と責任感を持って限界まで投げ抜くのがヤクルト流。春先にまいた種が勝負どころの終盤戦になって芽を出し、すくすくと育ったことは、8月末までリーグワーストの3完投だった投手陣が9月以降で7完投をマークしたことが証明している。昨シーズンまでの未勝利から一転、9月以降で初完封を含めて3勝を挙げて救世主となった高木はその象徴だ。
宮本を3番、安打製造機の青木宣親を4番にすえ、ヤクルトの特徴である「つなぎ」を重視した新打線もうまく機能した。2年連続の盗塁王をほぼ確定させた1番の福地寿樹は、広島東洋カープ、西武ライオンズ時代に敵として対峙してきたヤクルトを「相手が嫌がる野球をやるチーム」と見てきたという。そのチームの一員となったいま、嫌らしさは「さらに増した」と誇らしげに語る。
昨日の阪神戦。7番川本良平が執念で放ったタイムリーで二死から1点を追加した6回と、四球で出塁した福地が盗塁と犠打、右手親指の裂離骨折をおして出場を続ける宮本の右前打で生還した7回の攻撃は「嫌らしさ」が十二分に凝縮されていた。特に「二死から点を奪う」は今シーズンのチームスローガンであり、大一番でそれが見事に実践された形だ。
さらに付け加えれば、川本はわき腹の肉離れで登録を抹消された正捕手・相川亮二の代役。内野のキーマンとなる二遊間も、田中浩康、川島慶三が故障でファームに落ちた後は一軍で実績のない8年目の梶本勇介、2年目の鬼崎裕司が必死に穴を埋めた。宮本が必要性を訴えてきた「準備」が土壇場になって奏功したと言えるだろう。
インタビューでは宮本はこうも語っていた。
宮本「例えばある選手が満点で60点しかもっていなかったら、僕は60点を出す努力と準備が大事だと思っている。その選手は100点を出せませんし、100点を出そうと思うから苦しくなる。クライマックスシリーズに出るか出ないかはもちろん重要ですけど、ウチは若い選手が多いチームなので、もっと大事なところで言えば今年で終わりじゃないし、来年、再来年に優勝争いができるチームになるかならないか、強くなれるかどうかが残りの試合にかかってくる。目の前のすべてをしっかりと経験して、昨日よりは今日、今日よりは明日とみんなが強くなっていかなきゃいけない。一日たりとも疎かにすることはできないんです」
言葉通りに、一時は「10」を数えた借金を昨日の時点で「3」にまで減らした点はチーム全体が心技体で前進した跡と言えるだろう。勝率5割以下でのクライマックスシリーズ出場には異論も出てくるだろうが、当事者のヤクルトにとっては関係のないこと。阪神とのデットヒートの緊張感から解放されたいま、失うものが何もない分だけ、むしろ伸び伸びと本来の「嫌らしい」野球ができるメリットもある。
17日に開幕するクライマックスシリーズ第1ステージの相手は中日ドラゴンズ。レギュラーシーズンでの対戦成績はヤクルトが12勝11敗と勝ち越している。
満を持して登板するのは左右のエース。石川雅規は今シーズンの対中日戦で3勝0敗、特にナゴヤドームでは2勝0敗、防御率0.61と抜群の相性のよさを誇る。館山も3勝1敗、防御率2.48と安定している。夏場に故障で離脱した中継ぎエースの五十嵐亮太、韓国代表の守護神・林昌勇も万全の状態でスタンバイしている。
中日有利の下馬評が覆る可能性は決して小さくない。
2009年10月10日 15:48|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
トラックバック(0)
この記事のトラックバックURL: http://sv62.wadax.ne.jp/~sports-times-jp/mt/mt-tb.cgi/341
コメント(0)
コメントを書く
- 井上康生 「最後の内また」
(2008/06/08 21:36) - 北京五輪100kg超級代表、石井彗の練習風景
(2008/05/24 22:25) - ばんえい競馬@帯広ばんえい競馬場
(2008/05/07 12:15)
カテゴリー
アーカイブ
編集部より