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幻の日韓対決が組まれていた10月10日の憂鬱 by 藤江直人
■サッカー国際親善試合
日本代表 2‐0 スコットランド代表
[10月10日午後7時20分キックオフ@日産スタジアム/観衆6万1285人]
国際Aマッチという舞台を肌で経験する場にはなった。しかし、来年のW杯を見すえた強化という面では何のプラスにもならない90分間だった。
代表初キャップのDF岩政大樹、FW森本貴幸、実に5年8か月ぶりのA代表戦出場となったMF石川直宏をはじめとする選手たちには本当に申し訳ないが、対戦相手のスコットランド代表の陣容があまりに酷すぎた。
90分間を通じて放ったシュートはわずか1本。得点の予感が漂ったシーンは、後半28分にFWスティーブン・フレッチャーが最終ラインの裏に抜け出したプレーだけで、これも代表5キャップ目のGK川島永嗣がペナルティーエリアの外に果敢に飛び出して未然に防いだ。
後半37分の日本代表の先制点もオウンゴール。試合後の会見で岡田武史監督が絶賛したように、左サイドバックの駒野友一が放ったクロスは素晴らしかった。GKと最終ラインの間を狙った低く速い弾道は、相手が触れなければその背後に走り込んでいた森本がゴールしただろう。
その森本は後半ロスタイムにゴール前でパスを受けて、振り向きざまに右足を一閃。相手が辛うじて弾いたボールをMF本田圭佑が蹴り込んでダメを押した。セリエAで昨シーズンは7ゴール、今シーズンも6試合で3ゴールを確実にステップアップを果たしている21歳のFWは非凡な才能を見せつけたし、実際、後半11分に森本がピッチに送り出された時にはスタジアム全体が大歓声で揺れた。もちろん、森本も期待の大きさを感じていた。
「嬉しかったし、自分のパワーになりました」
それでも、物足りない。すでに南アフリカ行きの夢を絶たれたスコットランド代表は、来日直前になって次々と主力選手がキャンセル。その数は7人にのぼり、当然のように代表初キャップ組は6人となった。これでは、コンビネーションも何もない。はるか彼方の東洋の地まで遠征して試合に臨むモチベーションも上がってこない。
「スコットランド協会側から直前のメンバー変更について何か説明はあったのか」
試合後に報道陣から質問された日本協会の犬飼基昭会長は、こう返すしかなかった。
「いや、何もありません」
いつまでこんな時間とお金の「浪費」を繰り返すのだろうか。
国際親善試合でヨーロッパや南米の強豪国を招いたはずが、来日してみると将棋で言う「王様」はおろか「金銀飛車角」のすべてが欠落というパターンがお決まりとなって久しい。今回のスコットランドはさらに「桂馬」や「香車」もいない陣容だった。
これが日本代表の新監督によるデビュー戦ならば、所信表明を兼ねたアドバルーンを打ち上げる意味で格好の相手となる。しかし、来年6月に開幕するW杯までの時間が刻々と減っていく中で、ヨーロッパ組を招集できる貴重な国際Aマッチデーを使ってまで行うべき試合かと言えば、おのずと答えはNOとなるだろう。
本来は10月10日には韓国代表との対戦が水面下で内定していた。開催を打診してきたのは韓国協会側で、マンチェスター・ユナイテッドで活躍するMF朴智星、日本の中村俊輔らヨーロッパで活躍する主力を勢ぞろいさせた上でで「ガチンコ勝負を」と要望。強豪国との対戦を熱望していた岡田監督も「ぜひやりましょう」と大歓迎していたという。
しかし、意外なところから「横やり」が入ったことでプランは頓挫する。
来年2月に東京で東アジア選手権決勝大会が開催され、日本、韓国、中国、香港が総当りで対戦することが決まっている。その大会を主催する東アジアサッカー連盟が、日本協会に対してこんな注文をつけてきたという。
「日韓戦の価値がなくなるので、10月の日本と韓国の試合はやめてほしい」
東アジア選手権は国際Aマッチデーに行われない。つまり、朴智星や俊輔はもちろん、森本も本田も含めてすべてのヨーロッパ組を招集できない状況下で行われる。しかも、日本はシーズンインしたばかりでフィジカルコンディションも整っていない。こうなれば価値も何もないし、4か月後に控えるW杯へ向けて、国内組の主力選手が大きなけがをしないことの方が重要になってくる。
2年に一度開催される東アジア選手権の盛り上げ方には毎回苦労の跡がうかがえるし、開催時期も毎回異なる。東南アジア、中東の西アジアで大規模な国際大会が行われている以上、この東アジア選手権を発展させていくことは非常に大切であることも分かる。だからといって、日本代表の強化よりも損得勘定を優先させてしまうのは本末転倒だ。
東アジアサッカー連盟の事務局は日本協会と同じ東京・本郷のJFAハウス内にある。会長を務めるのは日本協会の小倉純二副会長だ。いわば「身内」といっていい組織の身勝手な都合で、日本代表は永遠のライバルとの貴重な真剣勝負の場を奪われてしまったのだ。
結局、日本が慌てて契約にこぎつけたスコットランド代表はこの体たらく。来日メンバーに関して「縛り」をかけなかったのも、対戦相手探しに四苦八苦したからだろう。なぜ9月に続いてヨーロッパへ出向くことを選択しなかったのか。日本協会のメーンスポンサーへの配慮であれば、これまた本末転倒と言わざるを得ない。お金の使い方が根本的に間違っている。
韓国代表は10日には国際Aマッチを組まなかった。本当にもったいないことだと思う。
日本代表は14日には場所を宮城スタジアムに移してトーゴ代表と対戦する。
来日予定メンバーの中にはマンチェスター・シティーに所属するFWエマニュエル・アデバヨールも含まれているが、あくまで「現時点」での話だ。トーゴ代表は10日のカメルーンとのアフリカ最終予選で0‐3と完敗し、南アフリカ行きの夢を絶たれたばかり。モチベーションが極端に低下していることは容易に察しがつくし、スケジュールを見れば来日は前日の13日。仙台入りが正午とあっては、まともなコンディションで試合をしろという方が無理だろう。
直前での来日キャンセルが続出しそうな中で、日本代表はどう戦うべきか。
8日の香港とのアジアカップ予選では、岡田監督は「公式戦なので勝利を優先せさた」とアジア最終予選からの固定メンバーで臨んだ。一転して、スコットランド戦はサブメンバーと新戦力をピッチに送り出した。ならば、トーゴ戦はレギュラーに新戦力を組み合わせて実戦に臨めるまたとない機会となる。2戦を通じて現時点のベストの11人を下記のように選んでみた。
GK 川島永嗣(川崎フロンターレ)
DF 駒野友一(ジュビロ磐田)
DF 中澤佑二(横浜F・マリノス)
DF 岩政大樹(鹿島アントラーズ)
DF 長友佑都(FC東京)
MF 長谷部誠(ボルフスブルク)
MF 遠藤保仁(ガンバ大阪)
MF 本田圭佑(VVVフェンロ)
MF 松井大輔(グルノーブル)
FW 岡崎慎司(清水エスパルス)
FW 森本貴幸(カターニャ)
岩政には岡田監督も「高さでほとんど負けていなかった」と及第点を与えていた。田中マルクス闘莉王に故障が多いことを考えると、ここで中澤とのコンビネーションを試さないと今後はその機会がどんどん少なくなるだろう。
前線は2トップ気味にした方がパスコースも増えることは9月のガーナ戦でも証明済みだ。初代表ながら存在感を発揮した森本はぜひとも先発で長い時間を与えて、泥臭い仕事を厭わない岡崎とのコンビネーションを見てみたい。
となると4枚となる中盤だが、パッサータイプは2人でいい。昨年5月のコートジボワール戦からダブルボランチを組む遠藤と長谷部の呼吸がより円熟味を増している中、2列目にはコンディション不良なのかやや精彩を欠く中村俊輔ではなく、自ら仕掛けてゴールも決められる松井と本田を起用したい。
2戦を通じて松井のできは非常によかった。前所属チームのサンテティエンヌで出場機会が激減し、精彩を欠いた昨シーズン終盤の不調から完全に脱出したと見ていいだろう。彼には先発でどんどん仕掛けてもらい、疲れたら岡田監督が「流れを変える時に十分使える」とそのスピードを生かして長い距離を走るスタイルを絶賛した石川直宏を投入する。
スコットランド戦後は「自分の中では不完全燃焼」と反省を忘れなかった本田は、同時に自らの仕事場について「いまのところは右の方がやりやすい」とあらためてポジションが重なる中村俊輔を意識した発言を残した。ならば、遠藤&長谷部のダブルボランチと組ませた上で、もう一度チャレンジの機会を与えてみるのもいいだろう。
年内の国際Aマッチデーはトーゴ戦を含めて残り3日。W杯開催都市ダーバンに乗り込んで南アフリカと対戦する11月14日は絶好の強化の舞台となるが、続く18日にアウエーで行われる香港とのアジアカップ予選にヨーロッパ組が参加するかどうかは現時点で未定だ。
時間が限られているのは全世界のナショナルチームに共通した宿命でもある。だからこそ、3日後のトーゴ戦を有意義に使わなければいけない。そうでなければ、ドイツW杯に続いて南アフリカも出場するだけの大会になってしまう。 (写真=田口有史)
2009年10月11日 15:53|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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