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危機感を煽らない岡田武史監督の硬直さい配  by 藤江直人


■サッカー国際親善試合
日本代表 5‐0 トーゴ代表
[10月14日午後7時半キックオフ@宮城スタジアム/観衆3万2852人]


 後半開始とともにピッチに送り出されたFW大久保嘉人の目の色が明らかに変わっていた。親善試合にもかかわらず後半18分にもらってしまったイエローカードは、はやる闘志が空回りしたからにほかならない。
 同じく後半から投入されたMF内田篤人も前へ、前へと積極的にトーゴ守備陣に圧力をかけた。「闘志が前面に出ないとよく言われるんです」と自らを草食系男子に位置づける21歳は、何かに後押しされるように果敢な攻撃参加を繰り返した。
 2人に共通する意識とは何か。それは危機感。大久保、内田の位置で先発したFW森本貴幸とDF徳永悠平がそろって及第点のプレーを見せれば、発奮するなという方が無理だ。
 特に森本はFWに求められる「結果」を完璧な形で残していた。
 前半11分。左サイドのDF長友佑都からの低く、速いクロスを、相手DFを背後にしながら左足でトラップ。そのまま左に体を反転させ、上半身を使って巧みに相手のプレッシャーを軽減させ、もう一人のDFが飛び込んでくる直前に右足を一閃。代表2戦目にして初ゴールを叩き込んだのだ。
「点を取れてよかったです。代表のサッカーをやるように心掛けた。動けばズバッとパスが来るのですごくよかった。自分のいる場所で毎日しっかりと努力して頑張っていきたい」
 試合後のインタビューの初々しさとは対照的に、ゴール前における自信満々の「仕事ぶり」には21歳にしてすでに風格すら漂う。まず守備から固めて入るセリエAの戦場で昨シーズンは7ゴール、今シーズンも出場7試合で3ゴールを奪っている経験が、東京ヴェルディ時代から非凡と評価されてきた得点感覚をさらに研ぎ澄まさせているのだろう。
 要するに「強くて、上手くて、鋭い」のだ。ツートップを組んだ岡崎慎司ほど守備に泥臭く奔走しないのも、つまりは「点を取ればいいんだろう」というFWの矜持を感じさせる。ポジショニングも常にオフサイドラインぎりぎり。久々に日本代表に現れた、ふてぶてしくも頼もしい点取り屋だ。
 

 4日前に2大会連続のW杯出場の夢を絶たれたトーゴ代表は、危惧していた通りに真剣さのかけらもない陣容とコンディションで試合に臨んできた。
 仙台入りは試合前日の深夜で、当然のように公式練習もキャンセル。この時点で10日に日本代表が2‐0で一蹴したスコットランド代表より始末が悪い。FWエマニュエル・アデバヨールをはじめとする主力の姿もない。日本協会の犬飼基昭会長はトーゴ協会に対して激怒していたが、日本国内で親善試合を開催する限り、このような事態が繰り返されるのはもはや避けられないだろう。
 それでもキックオフの笛は待ってくれない。ならば、トーゴ代表を相手にする90分間のテーマとは何か。生中継したテレビはしきりに「融合」を連呼し、既存のメンバーと森本に代表される新顔のコンビネーションを課題に挙げていたが、ちょっと違う。
 そもそも、既存のメンバー、つまりW杯アジア最終予選を戦った陣容がそのまま来年の南アフリカ行きを約束されているとは限らない。本番まで残り8か月。成長著しい新しい戦力がとって替わるには十分すぎるほどの時間だ。
 ならば、テーマは「融合」ではなく「進化」となるだろう。その進化への触媒となるのが競争意識。アジア最終予選ではほぼ不動のレギュラーだった大久保、内田がより積極的なプレーを見せれば、森本や徳永もさらに発奮する。この繰り返しがチームを成長させる。
 だからこそ、肝心なポジションが「無風」だったことが残念でならない。
 その一人がMF中村俊輔。明らかにコンディションが悪いし、らしくないミスも少なくなかった。それでも献身的で労を惜しまないハードワークでチームを支えてようとしていたが、石川直宏と交代したのが残り9分。もっと早く、それこそ後半開始からベンチに下げるべきではなかったのか。
 俊輔をアンタッチャブルな存在としているのか、と思いたくなるほど、岡田武史監督は背番号10を中心としたメンバー構成にこだわっている。それは中田英寿と俊輔の2人を頑ななまでにチームの中心にすえ続け、結果として特に中盤の選手起用が硬直化し、最後はチームそのものが崩壊してしまったドイツW杯時のジーコジャパンをほうふつとさせる。
 逆に俊輔でも例外はないという姿勢を見せればチームは引き締まると思うのだが、選手起用を見る限りは指揮官にその考えはないようだ。


 より深刻なのがセンターバックだ。中澤佑二と田中マルクス闘莉王のコンビは高さ、強さ、経験値のどれをとっても確かに現時点においては最強となる。だからこそ、バックアップのメンバーが不安視されてきた。このまま来年の6月を迎えられれば何も言うことはないが、サッカーは何が起こるか分からない。特に闘莉王は太もも系の故障で何度も戦列を離れているし、中澤も来年2月には32歳を迎える。不安がないとは言えない。
 ベンチには清水エスパルスの岩下敬輔が入っていたが、トーゴ戦を含めて、フィールドプレーヤーでただ一人、出番がないまま10月の3連戦を終えた。W杯予選などの公式戦ならいざ知らず、親善試合、それも二軍以下のトーゴ代表ならば国際Aマッチを初体験する上でまたとない相手のはずだ。
 初招集した岩下について、岡田監督は「フィード力も高いし、ヘディングなどボール際をつぶす力もある。CKでのゴールも多くて、闘莉王に似たようなところがある」と評価。一度試してみたいとも語っていたのは何だったのか。J1では怒とうの快進撃で清水が首位に立ったが、その原動力の一人が堅守を支える岩下。自信と勢い。代表デビューにはうってつけの条件が整っていたのだが、これではさい配が硬直していると言わざるを得ない。
 今年に入ってからはサンフレッチェ広島の槙野智章、ガンバ大阪の山口智がセンターバックとして招集されたが、試合でほとんど起用されることなくフェードアウト。10日のスコットランド戦では鹿島アントラーズの岩政大樹がA代表デビューを果たしたが、コンビを組んだのはボランチが本職の浦和レッズの阿部勇樹。中澤や闘莉王とのコンビは未知数だ。
 親善試合ということでフィールドプレーヤーの交代枠は6つあった。つまり6つのポジションで競争意識を煽り、チームの進化を促すことができたはずだが、相乗効果を発揮していたのは森本&大久保、徳永&内田の2か所だった。
 今後はダーバンのW杯新スタジアムのこけら落としとして11月14日に南アフリカ代表戦が行われる予定だったが、建設工事の遅れなどが理由でヨハネスブルクのW杯未使用スタジアムに急きょ変更された。アウエーで行われる同18日の香港とのアジアカップ予選は公式戦なので交代枠は3。これでは新しい戦力の起用は難しい。
 スコットランド代表、トーゴ代表ともに放ったシュートは1本ずつだった。ヨーロッパの強靭な高さとパワー、アフリカ特有のバネと身体能力を肌で感じるプランもこれでは空回り。年内の日本代表の活動は残り2試合となった中、強化プランとチームの進化には決して無視できない「影」が落ちていると言わざるを得ない。

2009年10月15日 00:07|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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