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悲願の頂点が見えた!/川崎フロンターレ・鄭大世の咆哮  by 藤江直人


■J1第30節
川崎フロンターレ(勝ち点55) 7‐0 サンフレッチェ広島(勝ち点46)
[10月25日午後6時キックオフ@等々力陸上競技場/観衆1万8946人]


 シーズン終了後に振り返ってみれば、J1通算7チーム目となる優勝チーム誕生へ向けた大きなターニングポイントとなる試合だったと言えるのではないか。
 前節で今シーズン初の首位に浮上した川崎フロンターレが、4年目を迎えたペトロヴィッチ監督体制下で人もボールも動くモダンなサッカーで上位に進出してきた難敵・サンフレッチェ広島をホームに迎えた一戦。首位に立った翌節から連敗を喫し、優勝戦線から後退した清水エスパルスを引き合いに出しながら、FW鄭大世はサンフレッチェ戦をこう位置づけていた。
鄭大世「エスパルスには絶対にプレッシャーがあったと思う。オレたちもそう。だからこそ、この試合が大事だと、ヤマ場だと思っていた」


 首位に立って初めて感じるプレッシャー。追う側と追われる側の違い。そんな重苦しい空気を、スタンドを埋めたサポーターの大声援が振り払ってくれたのか。前半18分にエース・ジュニーニョのゴールで先制すると、その7分後にはサンフレッチェDF森脇良太が2枚目のイエローカードをもらって退場となる。数的優位に立った瞬間、ベンチで指揮を執る関塚隆監督の脳裏には4月26日に喫した「悪夢」がフラッシュバックしていた。
 広島ビッグアーチで行われたサンフレッチェ戦も前半34分にフロンターレが先制し、前半終了間際にはMFミキッチが退場。一気呵成に攻めたいシチュエーションで逆に後半に入って同点ゴールを奪われ、そのままドローに終わっていた。
 実際、昨晩も退場者が出た後の試合の主導権を握ったのはサンフレッチェだった。ボランチの森崎和幸をそのまま森脇がいた3バックの右に下げ、攻撃的MF柏木陽介と青山敏弘でダブルボランチを組ませ、MF高萩洋次郎を加えた3人でゲームを作る。対峙するフロンターレのボランチは谷口博之の出場停止で急造で組んだ横山知伸、田坂祐介の2枚。中村憲剛、レナチーニョの攻撃的MFは左右の両サイドを基本ポジションにしているので、必然的に10人のサンフレッチェがピッチの中央では数的優位に立ついびつな構図が生まれていた。
鄭大世「相手の方が逆に一人多いようなサッカーをやられてしまった。このままだと試合の行方は分からなくなる。だからこそ、次の1点が早く欲しかった」
 前半も残り10分を切ったところで、関塚監督は中村憲にサイドから中へポジションを取り、ピッチ中央における数的不利を解消させるように指示を出す。それでもサンフレッチェの攻勢は続いたが、前半の残り時間とそれに続くハーフタイムで選手全員が指揮官の意図とサンフレッチェへの対処法を落ち着いて理解できたのだろう。
 次第にペースを取り戻して迎えた後半16分。再三の好守を見せてきた相手GK中林洋次のクリアミスに乗じ、ゴール前の混戦を華麗なステップで抜け出した鄭大世が利き足とは逆の右足で貴重な2点目をゲット。この一撃がサンフレッチェの戦意を根こそぎ奪ったことは、後半25分からの約20分間でフロンターレが叩き込んだ5ゴールが何よりも物語っていた。
「前半はバタバタした部分はあったけど、後半に落ち着いてゲームを進めてくれたところに成長が見られたかな、と思います」
 今シーズンのJ1最多、チームの歴代最多タイとなる7ゴールでの快勝で、前日に暫定首位に立った鹿島アントラーズから1位の座を奪い返した関塚監督は、ちょうど半年前のサンフレッチェ戦を踏まえながら手応えを感じ、及第点を与えていた。
 もっとも、選手たちは貪欲だ。笑顔こそあれ、決して満足はしていない。
鄭大世「2点目で相手は崩れたと思うけど、今日の中ではオレが一番ダメ。1点で満足していてはダメ。チャンスはあった。もっと、もっと取らないと」


 3月から続くシーズンも残り4試合。史上初の3連覇を目指す2位アントラーズに勝ち点1差をつけているフロンターレがこのまま悲願の初優勝へと駆け抜けるのか。
 アントラーズがガンバ大阪、浦和レッズとの対戦を残しているのに対し、難敵サンフレッチェを一蹴したフロンターレの今後の対戦カードを見れば、その確率は非常に高くなったと言えるだろう。
   ・第31節 ジェフユナイテッド千葉(ホーム)
   ・第32節 大分トリニータ(アウエー)
   ・第33節 アルビレックス新潟(ホーム)
   ・第34節 柏レイソル(アウエー)
 J2降格が決まった大分トリニータを含めて、ジェフユナイテッド千葉、柏レイソルといずれも降格圏にあえいできた3チームとの対戦が残っている。上位につけるアルビレックス新潟にしても、FWペドロ・ジュニオールをガンバ大阪に引き抜かれた夏場以降は苦戦の連続。リーグ最少の28失点で踏ん張る守備陣に頼っている部分が大きい。
 首位を独走していたアントラーズの未曾有の失速で、一転して大混戦になった今シーズンのJ1戦線。大量7ゴールで得失点差でもダントツで優位に立ったフロンターレにここにきて強烈な追い風が吹いてきたが、選手たちからは慢心の類は伝わってこない。
鄭大世「4戦全勝しか考えていない。もちろん簡単なことではないし、アゲインストはあるだろうけど、それをどう乗り越えていくか。楽な戦いにはならない。それでも試合を支配して決めるべきところで決める。シーズン開幕当初は受け身に回る試合が多かったけど、ここにきてやっとフロンターレらしさを出せるようになった。今日もオレたちの勝負強さが問われる試合だった。今までとは違うフロンターレが見せられたと思う」
 次節で対戦するジェフは、負ければ自動的にクラブ創設以来初のJ2降格が決まるだけに目の色を変えて捨て身で臨んでくるだろう。残留の夢が散ったトリニータも、地元のサポーターの前では絶対に恥ずかしい試合はできない。レイソルも然り、だ。
 2年前も優勝をほぼ手中に収めていたレッズが最終節ですでに降格が決まっていた横浜FCに0‐1で苦杯をなめ、アントラーズが奇跡の逆転優勝をなしとげた。
 フロンターレ自身も、昨シーズンはJ1最多の65得点と攻撃陣が猛威をふるいながら、優勝したアントラーズに勝ち点で3及ばない2位。振り返ってみれば、シーズン終盤でJ1残留に必死だった大宮アルディージャに喫した黒星があまりにも痛かった。
 第30節を終えた時点で57得点は、ガンバに4差をつけてリーグ最多に浮上した。もっとも、選手たちはまったく意に介していない。
鄭大世「総得点は関係ないこと。優勝できなければ意味がない。敵は自分たちの中にあると思っていますから。油断が一番怖い。この先、アントラーズは絶対に復活してくる。だからこそ、残り4戦全勝。果てるまで、灰になるまでオレは走り続けます」
 サンフレッチェ戦後のロッカールームでは、鄭大世が発した「浮かれるな、足元を見ろ」の檄に誰もがうなづき、心をひとつにしたという。
 このまま歓喜のフィニッシュを決めれば、ヴェルディ川崎(現J2東京ヴェルディ)、横浜F・マリノス、アントラーズ、ジュビロ磐田、ガンバ、レッズについで7チーム目、93年のJリーグ元年に参戦していないチームではジュビロについで2チーム目、J1昇格とJ2降格をともに味わった後で頂点に立った初めてのチームとなる。

2009年10月26日 14:18|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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