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横浜ベイスターズ/尾花新監督への期待と不安  by 藤江直人

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 理路整然にして単純明快。具体的な数字を駆使しての「所信表明」には十分な説得力があった。
 プロ野球の横浜ベイスターズの尾花高夫新監督の就任会見が13日、横浜湾内を遊覧する観光客船「マリーンルージュ」の船内で行われ、契約が1年残っていた巨人の投手総合コーチを辞して初めての監督業に挑む52歳は「身の引き締まる思い。やるからには頂点を目指す」と宣言。目指す野球のスローガンとして「アナライジング・ベースボール」を掲げた。
尾花監督「僕自身がデータを分析(アナライジング)して、説得力のある数字を選手に伝えることが指導する上での底辺。分析とは選手に安心材料を与えること。僕自身、現役時代は大した投手じゃなかったので、『どうしたら勝てるのか』と分析を重ねたことが出発点になっている。スコアラーの情報に自分の目で見たものを加えて、選手を納得させて、受け止めてもらいたい。自分のやり方で勝負したいと思っています」


 91年の現役引退後に投手コーチを務めたロッテ、ヤクルト、ダイエー、巨人では、分析重視の指導法ですべてのチームの投手力を改善。特に06年から指導した巨人では5点台が目前だった防御率を4年間で19年ぶりとなる2点台(2.94)に飛躍させ、日本一奪回につなげさせた。
 横浜の今シーズンのチーム防御率はリーグワーストの4.36。15年間のコーチ時代に7度のリーグ優勝、4度の日本一獲得に大きく貢献した実績を買われて抜擢された新監督の視線は、当然のように投手陣へ向けられていた。
尾花監督「ブルペンに張り付かないといけないんじゃないかと思っています。僕を呼んでくれたのは投手力を強くしてくれということ。投手陣の潜在能力は高いと思っていた。140キロから145キロのストレートを投げるピッチャーがけっこういるし、いい変化球を投げるピッチャーもそろっている。対戦相手として見てきて『こういうところが出来ていればいいのに』と思っていた。貯金をするためには3失点以内のゲームをいかに多く作れるか。投手陣にはそこを目標にしてもらいたい。野手と作戦に関しては詳しくないので不安はありますが、(コーチ陣に)教えてもらいながらやっていきたい」
 会見前日の編成会議に出席。さっそく今シーズンの選手、特に投手陣のデータにさっと目を通して、ひとつの確信を抱くに至ったという。
 今シーズンの横浜投手陣の総自責点は、これもリーグワーストの612。トップの巨人の427とは実に200点近い差をつけられている。リーグ最多の164本を数えた被本塁打、同ワースト2位の425個の与四球がその最大の原因だが、新監督は十分に改善可能であることを明言した。
尾花監督「自責点は100はよくなる。それでもチーム防御率は3.6くらいですから、これでは頂点を争う戦いには加われない。そこからさらに50点下げられるかどうかがポイント。ホームランは低めへ投げる意識を徹底させることで確実に減らせるし、数字を見た限りでは四球が特別に多いとも思わない。ひどいチームは500を超えますからね。四球がどれだけ失点につながったかをしっかり分析して、選手に伝えたい」
 いわく、現有戦力の底上げで総自責点のマイナス100、今後の補強でマイナス50。民主党政権下における予算の無駄の削減にも似た「所信表明」だが、肝心の現有戦力はどうなのか。
 自由獲得枠および希望入団獲得枠を含めて、横浜のドラフト1位指名選手は03年から07年までは10人全員が投手だった。しかし、現時点で結果を残しているのは、強いて挙げれば今シーズンに18セーブをマークした05年の高校生ドラフト1位の山口俊だけなのが現状だ。
 それでも、伸び悩んでいるかつての金の卵たちに来シーズン以降の可能性を見出したのか。新監督は15日には主力の秋季キャンプが行われている沖縄・宜野湾に入り、自らの目で選手を見極めた上で「適材適所で投手陣の配置を考えたい」と力を込めた。


 優勝した巨人から離されること実に42.5ゲーム。優勝争いはもちろん、クライマックスシリーズに出場できる3位争いにすら一度も加わることなく2年連続の最下位に沈んだ横浜を建て直すのは容易ではないはずだし、尾花監督自身、巨人の首脳陣の一人として、横浜を「申し訳ない言い方だけど、大変おいしいチーム。変化がずっとなかったので、こちらが変わる必要もなかった」と見ていたという。今シーズンの対巨人の対戦成績は6勝18敗だった。
 もっとも、指揮官が絶対の自信と実績をもつ投手力の改善だけでは、他チームにとって脅威となる「変化」は起こりえない。会見ではこうも語っている。
尾花監督「捕手を含めたバッテリー力を上げていくことが大事。野球はバッテリー力。バッテリーのレベルを上げていくことに従ってチームの成績も上がっていく」
 ヤクルト時代は古田敦也、ダイエー時代は城島健司、そして巨人時代は阿部慎之助。コーチを務めたチームでは絶対的な捕手がいて、二人三脚で投手力をアップさせてきた。
 翻って、現在の横浜はどうか。阪神からFAで獲得した20年目のベテラン野口寿浩は故障もあって出場がわずか17試合にとどまり、大きく期待を裏切った。早大から入団したルーキーの細山田武史はいかんせん経験が足りず、シーズン終盤には来シーズンへ種をまく意味で田代富雄監督代行は6年目の武山真吾を重用。FAでヤクルトへ移籍した相川亮二の穴を最後まで埋めることができなかったことも、投壊を招いた原因のひとつだった。
 その相川が加入したヤクルトは、阪神との息詰まるデットヒートを制してチーム初のクライマックスシリーズに進んだ。シーズン中盤には首位巨人の背中をとらえかけた快進撃に、チームリーダーの宮本慎也はこう語っていた。
「相川が入ってくれたことが非常に大きい。彼の存在がバッテリー間だけでなくチーム全体に安心を与えるようになった。やはりキャッチャーですね。(前半戦の快進撃は)彼におんぶに抱っこという感じがしないでもなかった」
 となると、現状の「帯に短し、襷に長し」の横浜捕手陣では心もとないと言うしかない。尾花監督は18日には宜野湾から二軍の野手が秋季キャンプを行っている横須賀に飛び、まずは自らの目で全選手をチェックしたいとしている。
 そういう事情もあって、捕手に対しては慎重に言葉を選ばざるをえなかった。
尾花監督「バッテリーコーチから話を聞いて、誰がレギュラーにふさわしいのか、競争が必要ならば競わせたいと思っている」
 指揮官が現状では力不足と判断すれば、今後の補強のひとつとしてロッテからFA宣言している橋本将捕手の獲得も当然、視野に入ってくるはずだ。


 新体制の船出ということで、球界では異例の船上で設けられた就任会見。同席した加地隆雄新社長は「尾花丸のボンボヤージュ。来シーズンの優勝を目指します」と高らかに宣言し、その直後に汽笛を鳴らせる粋な演出で横浜の「変化」をアピールした。
 監督としての手腕は未知数な指揮官が、席上で冷静沈着に理路整然と表明した所信をいかに実践していくか。契約は3年だが、新監督は表情を引き締めながら1年勝負を強調した。
尾花監督「3年で勝負と思っていたら6年かかる。1年1年を一生懸命戦って、ここまでくるのに3年もかかったんだと初めて思えるんです。我々の仕事は試合に勝つこと。勝つことが最大のファンサービスであることを選手たちにも伝えたい。来年の結果を見て、そういえば就任会見の時はあんなことを言っていたなと思われるか、あんなホラを吹いていたなと思われるか。多分、大丈夫だと思います」
 大命を託された「投手再建請負人」は、見ていてくださいと言わんばかりにニヤリと笑った。

2009年11月14日 04:04|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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