Home > 本日の論! > 日本代表/中村俊輔がスタメンから消える日が近づいてきた  by 藤江直人

日本代表/中村俊輔がスタメンから消える日が近づいてきた  by 藤江直人


■サッカー国際親善試合
南アフリカ代表(FIFAランク80位) 0‐0 日本代表(FIFAランク40位)
[11月14日午後3時半キックオフ(現地時間)@南アフリカ・ポートエリザベス競技場]


 これって、ひょうたんからこま、となるんじゃないだろうか。
 試合前日の13日にポートエリザベス入りしたMF中村俊輔のコンディションを考慮し、ジーコ監督時代の北朝鮮とのW杯アジア最終予選以来、約4年9か月ぶりに不動の背番号「10」をベンチに置いて臨んだW杯ホスト国との一戦。岡田武史監督は「新しいオプションを試したい」として初めてのフォーメーションを選択した。
 4バックの前に稲本潤一をワンボランチとして配置し、その前方にこれまで不動のダブルボランチを組んできた遠藤保仁と長谷部誠を並べる布陣。4‐3‐3のフォーメーションはスムーズに機能したとは言い難いが、稲本の存在によって遠藤と長谷部がより攻撃に比重を置けるという部分で新たな可能性を示したと言っていいだろう。
 現在の日本代表メンバーにおいてワンボランチを任せるとしたら、最も適任なのは稲本だ。フィジカルの強さ、1対1における守備力、そして豊富なW杯や海外での経験。守備力を見れば今野泰幸も候補に挙げられるが、攻撃陣とのリンク役の部分では稲本に軍配が上がる。ミドルレンジからのシュート力も兼ね備えているし、181センチの上背もチームにプラスアルファをもたらす。
 岡田監督も稲本のそうした点を評価しているからこそ、たとえ試合で起用しなくてもコンスタントに代表へ招集してきたのだろう。11日にスペイン国王杯を戦っていた俊輔に疲労がたまっていたこともあり、中盤の構成をがらりと変えざるを得なくなった末のいわば「窮余の一策」的な新システムだったが、試合後に指揮官が「ベターではない」と厳しい評価を下すほどの内容ではなかった。
 ほとんど練習すらしていないシステムなのだから、むしろギクシャクしない方がおかしい。後半14分に稲本に代えて松井大輔、本田圭佑に代えて俊輔を投入し、システムを遠藤と長谷部のダブルボランチを軸とする4‐2‐2に戻してから「ボールがうまく回りだした」とも岡田監督は付け加えたが、慣れ親しんだやり方なのだからそれも当然だ。
 何よりも、その4‐4‐2で臨んだ9月のオランダ戦で0‐3と完敗を喫し、ガーナ戦でも相手が息切れする後半途中まで攻守両面で圧倒的な差を見せつけられた。「W杯でベスト4」を公言している以上、W杯アジア予選で通用した戦い方が世界に跳ね返されたのであれば新たな手段を探さなければならない。そのひとつが稲本のワンボランチであるのならば、10月の国内3連戦で試しておくべきだった。


 ならば、新たにトライした4‐3‐3システムのメリットはどこにあるのか。
 前述したように遠藤と長谷部がいままで以上に前線に顔を出し、3トップとともに相手守備陣にプレッシャーをかけられる。ここに左右どちらかのサイドバックが絡んでくれば攻撃はより厚くなり、その分、相手ゴールを陥れる確率が高くなる。
 実際、南アフリカ戦では不慣れな連携の中で前半30分過ぎまでに長谷部のミドルシュート、FW岡崎慎司の左サイドからのシュート、ゴール前に抜け出したFW大久保嘉人と3度の決定的なチャンスをつくっている。
 岡田監督は「ベターではない」と斬った理由を「メンバーの問題もある」としたが、右足首の故障で辞退したFW森本貴幸がいればまた違った展開になったはずだ。
 3トップを組む場合、中央にはFWらしいどっしりとした選手が求められる。今年だけで14ゴールと代表で著しい結果を残している岡崎だが、3トップの中央となると残念ながらそのタイプではない。森本を中央、岡崎を左に配する3トップならばそれも解決する。
 その場合、浮かび上がってくるのが俊輔のポジションの問題だ。
 右サイドでボールをこねくるプレーばかりが目立つ現状では、本田が務めていた3トップの右は任せられない。3トップの右にしろ4‐4‐2の右サイドハーフにしろ、求められるのは相手ゴールへ迫る突破力。テクニックの高さ、戦術理解度の高さ、状況判断力の高さは誰もが認めるところだが、相手ゴールから遠いところでプレーしている限りは脅威でも何でもない。
 だからといって、昨年5月からほぼ不動のコンビを組み、あうんの呼吸を身につけつつある遠藤と長谷部のどちらかに代わることも考えにくい。特に長谷部の運動量はチームでも出色で、10月のトーゴ戦を中継したTBSによる集計ではチームトップの12キロ近くを走っていた。日本最大の武器であるセットプレーにおいても、遠藤と本田がいればキッカーは十分だ。
 つまり、4‐4‐2はともかく、今後も稲本をワンボランチとした4‐3‐3にトライを続ける場合、日本代表における背番号「10」の居場所はなくなることになる。俊輔がペナルティーエリア付近で貪欲にボールに絡んでいけばまた状況は変わってくるが、それは横浜F・マリノス時代から彼が築き上げてきたスタイルを捨て去ることになる。一朝一夕にはいかない。
 

 試合終了直後の中継テレビでのインタビューでほとんど見せ場のないスコアレスドローを「この雰囲気、アウェーの中でできたことは大きい」と振り返った岡田監督は、ワンボランチの新システムに対してこう言及していた。
「この場合はこうなるというのがだいたい分かったので、収穫はありました」
 所属チームとの兼ね合いで当初は出場が微妙だった18日の香港戦(香港)にも俊輔を帯同させるなど、現時点における岡田構想は「まず俊輔ありき」の感はぬぐえない。もっとも、その香港戦を終えれば、次に欧州組を招集できるのは早くて来年3月3日の国際Aマッチデーの前となる。
 W杯本番までの時間が刻々と減っていく中で、俊輔不在の緊急事態を受けて図らずもトライした新システムを指揮官が今後にどう生かすのか。あくまでもオプションのひとつとしてとどめておくのか。それとも、稲本のワンボランチを土台にして戦い方をがらりと変えていくのか。
 来年6月の本大会ではおそらく欧州、南米、アフリカの格上の強豪国と同じ組になる。世界に勝つためには、当然のことながらゴールを奪わなければいけない。そのためには、相手によりプレッシャーをかけられる4‐3‐3の方が適していると言わざるを得ない。
 岡田監督が決断を下す時は確実に迫っている。

2009年11月16日 04:19|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

トラックバック(0)

この記事のトラックバックURL: http://sv62.wadax.ne.jp/~sports-times-jp/mt/mt-tb.cgi/353

コメント(0)

コメントを書く