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W杯組み合わせ決定/岡田武史監督「ベスト4」発言の真意  by 藤江直人


 まるで何かに憑りつかれたかのような表情と口調で、今までと同じ目標を掲げる日本代表の岡田武史監督の姿がケープタウン発で伝えられてきた。
「我々はこの大会で4回目のW杯なのでベスト4を狙うつもりでやってきた。その目標を変えるつもりはありません」
 来年6月に行われる南アフリカW杯の組み合わせ抽選会を終え、E組に入った日本が同14日にカメルーン、19日にオランダ、24日にデンマークと戦うことが決まった直後の映像だ。
 志を高く持つことはいいことだと思う。しかし、実際にW杯本大会の組み合わせが決まり、岡田監督自身も「ようやく明確な目標ができた。ここからだな、という感じです」と臨戦体勢に入った段階においては、掲げる「ベスト4」という目標は荒唐無稽に思えてならない。南アフリカ大会が何回目のW杯だから、というのは強引なこじつけのようにも聞こえてくる。


 岡田監督が「ベスト4」という言葉を発するようになったのは今年の春あたりからだった。その真意を聞いても、決まって抽象的な答えしか返ってこなかった。
「日本の選手の能力を考えた場合、僕はいけると思うんですよ」
 時期はちょうど全員攻撃、全員守備でハードワークを厭わないコンセプトがチームに浸透し、2月のオーストラリア戦でスコアレスドロー、3月のカタール戦ではMF中村俊輔のFKで1対0の勝利を収めた直後。当時の岡田監督は試合後の会見で賛辞を連発していた。
 ならば、指揮官の「ベスト4」の真意はどこにあったのだろうか。


 非常に興味深い謎解きをしてくれたのが、かつて横浜F・マリノスにおいて指揮官とチームリーダーという師弟関係を築き、03年、04年とJ1総合優勝を達成したDF松田直樹だ。
「岡田さんは負けるということが大嫌いでしたから」
 自身を日韓共催W杯からの燃え尽き症候群から救い出してくれた恩師の性格をこう解説した上で、元日本代表DFは「ベスト4」の目標を「意外だった」とこう続ける。
「ベスト4を目指すと言っているけれど、岡田さんとしてはホントは優勝という言葉を使いたいんだと思う。マリノスの監督だった時はいつもそうだったからね。(W杯で)優勝する可能性は限りなく低いかもしれないけど、サッカーは何があるかわからないし、絶対というものがないスポーツだから。ベスト4ということは、つまり準決勝で必ず負けるということでしょう。あの人に限っては絶対にそういうことは言わないと思っていた(笑)」


 負けず嫌いという性格は、イビチャ・オシム前監督から急きょバトンを受け継いだばかりの08年3月、敵地で行われたバーレーンとのW杯アジア3次予選で0対1と苦杯をなめた直後に表情を硬直させながら「これからはオレのやり方でやる」と宣言。日本サッカー協会の川淵三郎キャプテン(当時)をして「なぜ言わずもがなのことを」と驚かせた一件がよく物語っている。
 だからといって松田の推察通りに「優勝」という目標を掲げれば、優勝国がヨーロッパと南米の両大陸以外からは生まれていないW杯の歴史を鑑みればあまりにもおこがましい。ブラジルやイタリアといった、いわゆる大国へのリスペクトもさすがにはたらいたのだろう。
 ならば「準優勝」とするとこれもどこか締まらないし、負けて終わるイメージがベスト4よりはるかに増幅される。W杯初勝利も決勝トーナメント進出も日韓共催大会で達成している。
 そこで「ベスト4」とすれば、かつてアメリカと韓国が達成した非ヨーロッパ・南米大陸勢の最高位に並ぶことで指揮官の負けず嫌いの虫も少しは封印できるし、一方で単純明快な言葉は選手たちへの格好の動機付けにもなる。


 確かに「松田理論」は的を得ているかもしれない。しかし、常識的に考えれば「ベスト4」は非常に厳しい目標と言わざるを得ない。
 何よりも、恩恵を受けられる自国開催以外のW杯で日本はまだ白星を挙げたことがない。悲願の初出場を果たした98年フランス、まだ記憶に新しい06年ドイツの両大会はともに1次リーグで敗退。通算成績は1分け5敗で、ゴール数もわずかに3だ。
 FIFAランクがすべてを反映するわけではないが、最新の順位を見ても43位の日本より下位に位置するのは韓国、北朝鮮、ニュージーランド、南アフリカの5か国しかない。11位のカメルーンを率いるフランス人のポール・ルグエン監督が「オランダのグループ首位はかたい」と見通しを語っていたが、まさにその通りだ。
 ヨーロッパや南米から見れば日本は完全なるアウトサイダー。決勝トーナメントへの残り1枠を争う構図に割って入るためにも、まずは初戦のカメルーン戦が極めて重要になってくる。


 3戦目で対戦するFIFAランク26位のデンマークは、日本が苦手とするフィジカルを前面に押し出してくるチーム。W杯出場こそ4回目だが、ポルトガル、スウェーデンと同組になったヨーロッパ予選を1位で通過してきた実力は本物だ。
 予選10試合の成績は6勝3分け1敗。唯一の黒星はW杯出場を決めた後の消化試合でハンガリーに喫したものであり、対ポルトガルは1勝1分け、対スウェーデンは2勝と寄せ付けなかった。
 アーセナルに所属する1メートル91の大型FW、ニクラス・ベントナーの存在も日本の守備陣にとっては脅威になるだろう。
 となると、3戦目で「絶対に勝たなければいけない」という状況を作ることは極力避けたい。理想は勝ち点4(1勝1分け)か3(1勝1敗)でデンマーク戦に臨む状況。9月の親善試合で0対3と完敗を喫しているFIFAランク3位のオランダと第2戦で当たることを考えれば、カメルーンとの初戦では必勝を義務付けられると言ってもいい。


 日本以外の地でのW杯初勝利。そのために、残された7か月あまりで何をするべきか。
 日本サッカー協会の犬飼基昭会長は、以前に冬場の南半球で開催される今回のW杯を歓迎した上で、ほとんどの試合会場が海抜1500メートル前後にあることに危機感を抱いてもいた。
 カメルーン戦が行われるブルームフォンテーンの海抜は1400メートル。心肺機能のアップなどを含めた高地対策が必須となってくることは言うまでもない。
 屈指のスピードを誇るFWエトーにどう対処するか、も重要になってくる。
 9月にオランダで行われたガーナとの親善試合。GKからのロングキック一発で日本最強と思われていたDF中澤佑二の牙城がいとも簡単に破られ、ゴールを陥れられたシーンは「日本はこの手の強引な戦法に弱い」という情報となってすでに敵国にも伝わっているはずだ。
 テレビのインタビューで犬飼会長が勝利へのキーワードとして挙げた「点を取ること」は言わずもがな、だ。テーマは「どうやって取るか」であり、その答えは長く弾き出されていない。


 3月3日に設定されている次の国際Aマッチデーは、カメルーン対策として強力なエースFWを擁する同じアフリカ勢のコートジボワールかナイジェリアと組む必要もあるだろう。
 同日に組まれているバーレーンとのアジアカップ最終予選を一刻も早く他の日にずらすなど、協会内の背広組の交渉力も問われてくる。
「オランダ、カメルーンもいるので、やりがいのあるグループだと思う。相手はちょっと(実力が)上かも知れないが、十分に対応できる範囲。そんなに悪くないグループだと思う」
 今春に取材した時には「ブラジルかアルゼンチンと初戦を戦うんじゃないかと思っている」と腕をぶしていた岡田監督は、シードから漏れたフランスやポルトガルと同組にならなかった抽選の結果に務めて余裕の表情を浮かべたが、カメルーンのルグエン監督は日本について眼中にないとばかりに「あまりよく知らない。これから研究する」と話すにとどまった。
 岡田監督がいくら「ベスト4」を掲げても、これが現実。思い描くサプライズへの第一歩は、当面の照準を「2009年6月14日」に合わせて「不屈のライオン」をブルームフォンテーンのピッチにはいつくばらせることから始まる。


 以下は各組の当落予想を下記に記します。

A組 南アフリカ  ◎メキシコ  △ウルグアイ  ○フランス
B組 ◎アルゼンチン  ○ナイジェリア  △韓国  ギリシャ
C組 ◎イングランド  ○アメリカ  アルジェリア  △スロベニア
D組 ◎ドイツ  オーストラリア  △セルビア  ○ガーナ
E組 ◎オランダ  △デンマーク  日本  ○カメルーン
F組 ◎イタリア  ○パラグアイ  ニュージーランド  △スロバキア
G組 ◎ブラジル  北朝鮮  △コートジボワール  ○ポルトガル
H組 ◎スペイン  △スイス  ホンジュラス  ○チリ

2009年12月 5日 04:57|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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