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新理事・貴乃花親方が目指す最初の改革とは  by 藤江直人


 貴乃花親方は相撲界の何をどう改革したいのか。
 世間をアッと驚かせた1日の理事選当選を受けた記者会見では具体的なプランは明かさなかったが、周囲の声を取材すると、真っ先に取り組みたい案件がおぼろげながら見えてくる。
「私の考え方と(貴乃花)親方の考えは重なる部分がある」
 投票を終えて国技館を後にした大山親方(元幕内大飛)は冷たい雨が降る中を傘もささずに10分近くも立ち止まり、その「重なっている」部分について報道陣にこう明言している。
「相撲は日本の民族文化である、ということです。ただのスポーツではない、と(貴乃花)親方も言っている。もちろん強いことはいいが、強いだけではダメ。歴史をよく考えなければいけない。だから、私は所作をちゃんとすることがまず大事だと思っている」


 「所作」を辞書で調べると「行い。振る舞い」とある。
 ここまで言えば、大山親方が知人男性への暴力事件騒動の渦中にある横綱朝青龍のことを念頭に置いて話しているのは明白だ。
 大山親方は今回の理事選で九重親方(元横綱千代の富士)を擁立した高砂一門に所属している。当選した九重親方の獲得票数(13)と高砂一門の親方衆の数(12)を比較すれば、大山親方も一門の立候補者に投票したはずだ。
 しかし、それとは別の次元で、一門の枠を超えて賛同できる部分があるというわけだ。
 入門直後の外国人力士の教育にあたる相撲教習所の教頭格でもある大山親方は「報道でしか見ていない」と前置きした上でこうも続けている。
「一般の人に暴力をふるったのであれば、それはあっちゃならんことです」


 理事選後に行われた新理事会では、成立したと伝えられる示談に関する確認書類が朝青龍の師匠の高砂親方から提出されるはずだった。
 しかし、高砂親方は理事選で投票こそしたものの、肝心の書類は持参しなかったという。ある親方は「書面による何かしらの報告があると期待したんだが」と呆れ顔で話した。
 泥酔した挙げ句の暴力騒動も言語道断だが、そもそもは朝青龍の個人マネージャー、つまり身内が被害者ということで一件落着になりかけてもいた。
 それが週刊誌の報道で一般人が殴られて鼻骨骨折など全治1か月の重傷を負ったことが発覚すると、高砂親方の説明も二転三転。挙げ句の果てには「被害者と申し出たマネージャーが悪い」と言い出したが、どうみても虚偽報告であり、個人マネージャーに全責任を押し付けるのはトカゲの尻尾切りでしかない。


 ここ数年、暴行された力士の死亡事件や外国人力士の大麻吸引事件に揺れてきた角界。弟子の大麻問題で引責辞任した北の湖理事長からバトンを受けた武蔵川現体制になっても何ら変わらない現状に、高い志をもちながら年功序列の慣例や一門の縛りで身動きが取れなかった親方衆が義憤の念にかられても何らおかしくない。
 その結果が、貴乃花一派以外から投じられた3票であり、現職では最年長の大島親方(元大関旭国)を破っての最年少理事の誕生につながったことは容易に想像できる。
 いまだに関取力士を育てられない貴乃花部屋の指導を問う声もあるが、貴乃花親方は自身の現役時代をなぞるように、筋トレに頼ることなく伝統の四股とてっぽうを中心に若い弟子を地道に叩き上げている。
 けいこ最優先主義の貴乃花新理事にとって、頻繁にモンゴルに帰国し、場所前も場所中もけいこで土俵に上がる回数が極端に少ない朝青龍は対極の位置にいる力士なのだ。


 あえて多くを語らない同志の心中を慮るように、大山親方はこう続けた。
「相撲界は正しくやりましょう、ということ。いい部分は残して、悪い部分を治さないと」
 今後は4日の理事会で新理事の新しい役職が決まり、第2次武蔵川政権が船出するが、喫緊に取り組むのがすでに調査委員会も設置されたこの「朝青龍問題」となる。
 つまり、貴乃花親方が掲げる改革のひとつであろう「正しい相撲界」への第一歩となるのだ。


 票が流れたとされる二所ノ関や立浪の一門内で「造反者」探しが行われる懸念もある。旧主派は必死に巻き返してくるはずだが、今回の理事選で選挙管理委員長も務めた大山親方は「筆跡鑑定もできない」とばかりにこう断言した。
「(確定後に)すぐ投票用紙を処分したから、それは無理ですよ。そもそも、投票用紙には立候補者の名前がすでに印刷されていて丸を記すだけですから。(投票用紙を)二つ折りにしたらすぐ投票できるように箱を目の前に置きましたからね」


 机をはさんで座っている5つの一門の立会い人にチェックされることもなく行われた投票では、現時点で貴乃花一派以外に投票した3人は明らかにされていない。
 もちろん明らかにする必要もないし、そもそもは昭和43年から2年ごとに理事選が導入されながら今回が4回目の投票、つまり大半において定員ちょうどの親方が年功序列で、しかも一門内の調整を経た後に手を挙げていたこと自体がおかしい。一種の談合であり、一門の立会人が投票直前に誰に入れたかをチェックするなんてもってのほかだ。
「皆さん、緊張してみたいですね」
 投票の様子を尋ねられた大山親方は、苦笑いしながらこう補足した。
「でも、これが一般の(選挙の)やり方でしょう」
 これも貴乃花親方の出馬がもたらした「改革」のひとつと言えるはずだ。
 

2010年2月 2日 16:40|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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