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岡田ジャパン/閑散としたスタンドとブーイングが意味するもの by 藤江直人
■サッカー東アジア選手権決勝大会第1日
日本代表(勝ち点1) 0‐0 中国代表(勝ち点1)
[2月6日午後7時15分キックオフ@味の素スタジアム/観衆2万5964人]
不満が爆発するだろうな、というよりも爆発させるべきだと思っていたら、案の定だった。
ハーフタイムと試合終了後。ゴール裏に陣取っていたサポーターの青い一団から、日本代表へ容赦ないブーイングが浴びせられた。
ハーフタイムではスタメンを外れたFW平山相太へのラブコールも交錯していた。しかし、その救世主が後半17分から投入されても屈強な体格で肉弾戦を挑んでくる中国DF陣に圧倒され、前線でターゲットになれないどころかシュートすら放てない。
しかも、相手はアジア最終予選にすら進めずに南アフリカ行きの切符を逃している中国。時間とともに期待感が失望へと変わる。
「気持ちを見せろっ!」「ホームだぞっ!」
ブーイングにまじってこんな罵声も拡声器を通して飛び交った。
常に日本代表を後押ししてきたサポーターも、2日のベネズエラ戦に続く格下相手とのスコアレスドローに我慢が限界に達したのだろう。
しかも、後半36分にGK楢崎正剛が相手のPKをセーブしなければ負けていた試合だ。日の丸を背負ってピッチに立つ以上、「オフが明けて間もない」「試合勘が戻らない」といった類の言葉は理由にならない。
試合後に最も痛烈なブーイングを浴びた岡田武史監督はこう言うしかなかった。
「サポーターのブーイングに関しては、もちろん真摯に受け止めなければいけないと思っていますが、我々はいま、勝つため、強いチームを作るためにベストを尽くしています」
シュート数は日本の13本に対して中国が約半分の7本。しかし、日本が圧倒的に主導権を握っていた90分間ではなかったことは、日本の53.4パーセントに対して中国が46.6パーセントを数えたボールポゼッションが物語っている。
中国は4枚のDF、4人のMFがしっかりと2本のラインを形成し、日本の攻撃を網にかけてボールを奪うと無骨なまでにカウンターを繰り返す戦法を仕掛けてきた。
しかも、チャンスとみるやFW以外の選手もどんどんゴール前に飛び込んでくる。後半9分には日本のオウンゴール、というあわやのシーンもあった。
テクニックは日本が上だが、中国からは何がなんでも、という気迫と執念が伝わってきた。
「この試合のために10日間練習してきた。いい準備ができたことに非常に満足している」
試合後の公式会見。中国代表のガオ・ホンボ監督は周到な準備の末に手にした勝ち点1に再出発のへの手応えをつかみ、笑顔を浮かべた。
翻って、この試合における日本代表のテーマは何だったのか。
「選手をテストできるのはこの(東アジア選手権の)3試合しかない」
こう語っていた岡田監督が先発で送り出した11人は、いつもの代わり映えしないメンバー。ベネズエラ戦で存在感を示したMF小笠原満男、途中出場で及第点をもらった平山もいない。
公式戦である以上は結果も求められる。アジア最終予選を戦ってきた国内組のコンビネーションをより高めることも大切だが、ならばテストという言葉をなぜ用いたのか。
「メンタル、フィジカル両面で疲れが出てきて、体のキレがなくなってミスが出てきている。彼にはいい状況でいいプレーをさせたいという考えがあります」
ピッチに立たなかった小笠原についてこう言及した指揮官だったが、W杯本番では心技体を極限にまで追い込んだ状態で戦う。意味不明の理由にしか聞こえなかった。
攻撃陣に関して、岡田監督はこうも語っている。
「強引に動きを出すために、3トップという形をとりました。2トップでもこういう動きが出るようにしていかなければならないと思っています」
3トップとは岡崎慎司、玉田圭司、大久保嘉人の3人を指しているが、実質的には岡崎のワントップだった。玉田と大久保は守備にも必死に奔走し、必然的に岡崎との距離が開く。
全員攻撃、全員守備のハードワークを求めるのが指揮官のコンセプト。それが彼らの脳裏にこびりついている。何よりもまずコンセプトを実践しようとするあまりに、いざボールを奪っても前線に預けどころがない。
岡崎は一瞬のスピードを生かして相手のDFラインの裏に抜け出すのが最大の武器。これでは攻撃のスイッチが入らないのも当然だ。
コンセプトといえば、前半35分にこんな場面もあった。
大久保のパスに反応した岡崎が最終ラインの裏、ゴールのちょうど右横にあたりに抜け出す。ゴールラインぎりぎりで体を寄せてきたマーカーも強引に振り切った。
目の前にいるのはGKだけ。ポストとGKの間を狙って強烈なシュートを放つものとばかり思っていたら、選択したのはマイナス方向へのパスだった。
ニアサイドに味方の誰かが飛び込んでくれば昨秋からテーマにしていたパターン通りのゴールが生まれたはずだが、実際の試合では相手も死に物狂いで阻みにくる。
岡崎のパスはあえなく中国のDFにカットされ、ゴールへの期待感は一瞬にして萎んだ。
シュートを打てば、たとえGKに触られても何かが起こり得る。それを「ひと手間」増やせば必然的にゴールの確率は下がる。
頭で理解していても、いざその瞬間になると「コンセプト」が優先順位で上回ってしまう。
選手たちは何に縛られているのだろうか。
言い方は悪いが、対峙する中国代表と同時に、ベンチで眼鏡を光らせる岡田監督の存在をも過剰に意識しているのではないだろうか。
コンセプトを守らなければ代表から外される。憧れのW杯のピッチに立てない、と。
「サイドを崩しても最後のところで思い切りがなかった。もっと迫力を出さないと」
その岡田監督はハーフタイムに、本人いわく「強く言い過ぎた」という口調で攻撃に泥臭ささを求めたという。
果たして結果は、攻撃がさらに単調になる悪循環。指揮官は「背の高い相手に対して早く放り込み過ぎるところがあったかな」と振り返ったが、これこそが選手たちがベンチの視線に必要以上に過敏になっていることを示している。
閉塞感。いまの日本代表を象徴する言葉がこれではないか。
アジア最終予選を戦ってきた国内の主力組は生き残らんとするばかりに無理して背伸びをせず、新たに招集されたメンバーはチャレンジの舞台すら与えられずに悶々とする。
この試合の交代枠は3。平山以外の2人のカードを残り5分になるまで切らなかった理由を、岡田監督はこう語っている。
「ここ2週間くらいの練習などを見て、その中で交代で出す選手が劇的にゲームを変えられるとは判断しなかった。だから代えませんでした」
この日のスタメンと平山、指揮官いわく休養させた小笠原以外はすでに不合格の烙印を押した、とも受け取れる発言。後半40分からピッチに入ったFW佐藤寿人とMF金崎夢生も、大久保とMF中村憲剛に「疲労が目立った」ためのいわば代役だった。
これを伝え聞いた選手たちは何をどう思うか。おのずと想像できる。
これではチームにダイナミック感も、4か月後に4年に一度のサッカー界最大の祭典を控えたワクワク感も、そして一体感も生まれてこない。
この日の観客数は2万5964人。京王線飛田給駅の近くで利便性のいい収容人員約5万人の味の素スタジアムには、いたるところに空席が目立った。
大分石油ドームで行われたベネズエラ戦も2万7009人と低調だったが、これは平日のナイター開催。首都圏で週末に開催された代表戦とくれば、余計に寂しさが際立つ。
W杯イヤーなのに、なぜなのか。
会見ではこんな質問も浴びた岡田監督は、顔色ひとつ変えずにこう答えている。
「お客さんのことに関しては、そこまで背負い切れないところがあります。いろいろな事情があるとは思いますが、それに対して私がお客さんを呼ぶために人気のある選手を使うとかそういうことではなく、強いチームを作っていくことが使命だと思っています」
かつてはプラチナチケットだった日本代表戦のスタンドが満員で埋まらなくなって久しい。
潮目が変わったのはジーコジャパンが惨敗を喫した4年前のW杯ドイツ大会だが、それでもスタンドとピッチの「距離」がこれほどまでに遠く感じられたことはなかった。
岡田監督はこうも続けた。
「ある意味、そういうふうに評価されているのは当然だと、仕方ないと思っています。それを力にして、より強いチームを作っていく。私の仕事はそういうことだと思っています」
その仕事が成就された先におおいなる期待がもてれば、時間とともに魅力が増していくのであれば、いやがおうでもファンの関心は高まる。
しかし、閑散としたスタンドは、岡田監督が公言する「W杯でベスト4」という目標を、少なくとも現段階においてはファンが共有できていないことを物語っている。
W杯南アフリカ大会開幕まで残り4か月。その間、日本国内では東アジア選手権の残り2試合を含めて5戦が予定されている。
「シーズンが始まって間もない時点でこういう試合ができて、W杯に向けてそんなに大きな問題があるとは思ってはいません」
辛らつな質問も飛び交った公式会見で、岡田監督は最後まで強気な姿勢を崩さなかった。
指揮官がブレることなく方針を貫くことはもちろん必要だ。しかし、いまは会見で発した「日本人が勝つためにベストなサッカーをしている」「まだまだやれることがある」という言葉に、ピッチの上における結果で現実性をもたせなければいけない。
格下相手の連続スコアレスドローは、それだけの大きな代償を支払ったと言っても決して過言ではない。サポーターから浴びせられたブーイングがその何よりの証だ。
11日の香港戦を経て14日に待つ宿敵・韓国との一戦は、チーム内に巣食う閉塞感とファンから向けられる懐疑の目、いわば「内憂外患」を一掃できるかどうかの90分間になってきた。
2010年2月 7日 04:08|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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