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岡田ジャパン/惨敗で露呈したW杯青写真の破綻  by 藤江直人

■サッカー東アジア選手権決勝大会最終日
韓国代表(勝ち点6) 3‐1 日本代表(勝ち点4)
[2月14日午後7時15分キックオフ@国立競技場/観衆4万2951人]
※最終順位 1位:中国 2位:韓国 3位:日本 4位:香港


 日本代表にあって韓国代表になかったものは何か。
 日韓対決に先駆けて行われた一戦で中国代表が2対0で香港代表を下し、勝ち点を「7」に伸ばした瞬間、韓国代表が優勝する可能性は消滅していた。
 対する日本代表は2点差以上の勝利を収めれば中国代表を得失点差で上回り、4回目にして大会初制覇を達成できる条件が整っていた。
 ならば、韓国代表にあって日本代表になかったものとは何なのか。
 残念ながら、答えは「勝利への執念」となる。
 日本サッカー協会の犬飼基昭会長の言葉を借りれば「ファイティング・スピリット」であり、タイトルを手中にできる権利を得ている側が肝心な場面で圧倒され続ける。
 そんな稀有な光景が、ホームの国立競技場で繰り広げられた。


 両国の差を何よりも象徴するシーンは、1対1で迎えた前半39分に訪れた。
 敵陣のほぼ中央でパスを受けたFWイ・スンヨルが、ためらうことなく左足を一閃する。ゴールまでの距離は約25メートル。無謀にも映った一撃はブロックに飛び込んできたDF中澤佑二の背中をかすめ、弾道を変えてGK楢崎正剛の頭上をゆっくりと越えていった。
 勝利への執念が生んだ勝ち越しゴール。前半のシュート数がゼロに終わった岡崎慎司、玉田圭司の日本代表のツートップとはあまりにも対照的だった。
 もちろん、日本代表からも闘志は伝わってきた。しかし、相手ゴールに迫るほどにそれは萎え、勝負を仕掛けるべき場面でヨコや後方へのパスが選択される。
 W杯イヤーに入ってからの国際試合で何度も見せられてきた、責任を転嫁するような姿勢。日本代表に欠けているのは「決定力」ではなく「責任力」であり、そこには日の丸を背負う気概も誇りも感じられない。


 93年のJリーグ発足以降に行われた日韓戦では初めてとなる2点差での完敗。しかも、日本代表の得点はPKによる1点のみ。なぜこのような惨状を招いてしまったのか。
 3日前の中国戦で0対3と惨敗した韓国代表には危機感が充満していた。パク・チソンらの欧州組が不在の今大会で結果を残さないと南アフリカのピッチに立つことはできない、と。
 しかも、相手は宿命のライバル日本。ただでさえ「敗北」の二文字が許されない一戦がサバイバルへの舞台と化した以上は、もはや優勝の可能性うんぬんは関係ない。
 翻って日本代表はどうだったのか。
 岡田武史監督は「現時点での最強メンバーで勝ちにこだわる」と公言していたが、案の定、フタを開けて見ればいつもの代わり映えしない11人。その中には08年6月以来、国際Aマッチでゴールを決めていないMF大久保嘉人も含まれていた。
 アピールする必要も何もないのだから、チームの中に競争心や刺激が生まれるはずがない。ホームで相手に気迫で圧倒されるのも無理はない。MF小笠原満男やFW平山相太といった新戦力を招集し、1月下旬から行ってきた一連の合宿の目的は何だったのか。


「何を言ってもいい訳になる。批判は甘んじて受けるが、我々はここで足踏みしているわけにはいかない」
 試合後の記者会見で岡田監督はチーム作りの遅れを認めながらも、問題解決への「処方箋」をMF中村俊輔をはじめとする欧州組に求めるしかなかった。  
「今回足りなかったところ、見極めたところに関しては考えなければならないことはあるが、大幅にチーム作りを見直すことは考えていない。チームというのは常に最高のパフォーマンスができるというわけではない。その中で海外組や1人、2人と新しい選手が入れば前に進める」
 しかし、指揮官が頼りにする俊輔にしても所属するエスパニョールで出場機会に恵まれず、新聞紙上で「Jリーグ復帰」が取り沙汰される状態が続いている。


 何よりもチームの中に巣食う「どんよりとした空気」は、岡田監督が頑なまでにメンバーを固定してきた弊害だ。
 DF田中マルクス闘莉王の一発退場で急きょ出場したDF岩政大樹は、これが代表2キャップ目。経験が圧倒的に足りない以上、不甲斐ないプレーが目立ったのもうなずける。
 その一方で、最悪の場合、闘莉王には公式戦2試合の出場停止処分が科される恐れがある。対象は3月3日のバーレーン戦と、カメルーンとのW杯1次リーグ初戦。代役となる岩政をこれまでほとんど起用しなかった点を取っても、岡田監督による危機管理がまったくできていないことが計らずも明白になった。


 ここに欧州組が加わっても状況が劇的に好転するとは思えない。W杯本番への青写真が破綻していることはもはや疑いようのない事実であり、当然のように試合後には協会トップに岡田監督続投への是非が問われた。
 慎重に言葉を選びながら、犬飼会長は「解任」の二文字を否定した。
「監督解任にはいいところと悪いところがあるが、現時点では新しい人に任せるのはリスクが大きいと判断した。いままで積み上げてきたものを発揮するのが最善の策であり、ここから4か月で新しく作り直すのは不可能です」


 もっとも、犬飼会長自身も現状には大いなる不満を抱いている。
「こんな試合、見ている人に失礼。本番では絶対に許されない。本当に残念。こういう試合でやれるという姿勢を見せないと(W杯本番に)間に合わない」
 試合後のロッカールームからまったく覇気が感じられなかったことを明かしながら、「打ちひしがれている暇はない」と異例の檄も飛ばした。
 W杯イヤーに入って以降の3試合で空席だらけだったスタンドが、宿命の日韓対決ということも手伝って約4万3000人で埋まった。
 その眼前で喫した惨敗。試合終了直後こそブーイングが渦巻き、スタンドには「岡チャン不合格 決断セヨ日本サッカー協会」の横断幕が張られたが、フランス大会出場をかけた97年のアジア最終予選時のような一触即発の怒気が充満することはなかった。
 ブーイングの対象になるならまだいい。すでに見放されかけているのであれば、サッカー界を取りまく状況は限りなく末期的だ。


 記者会見では岡田監督にも進退を問う質問が浴びせられた。
「進退に関しては契約上、勝とうが負けようが協会が権利を持っている。そのために会長や技術委員長が見ている。選手がついてきている限り、私は選手だけを投げ出すことはできない」
 表情を変えることなく不退転の決意を貫いた指揮官は、あらためて南アフリカの地における目標として「ベスト4進出」を掲げ、その上で「可能性がある限りそれに向かってチャレンジしていくつもりです」と明言した。
 しかし、後半ロスタイムになるまで、日本の攻撃陣が取られたオフサイドの反則はゼロだった。これが何を意味するのか。
 岡崎、途中出場の佐藤寿人と最終ラインの裏に抜け出す動きを得意とするFWが生きなかったことは、「国内におけるベスト」と指揮官が位置付けるメンバーの中においても、パスの出し手とのコンビネーションに狂いが生じていることを物語っている。


 試合後の関係者ロビーには、5つの国を率いてW杯を戦った経験をもつボラ・ミルチノビッチ氏の姿があった。
 5つの国には02年日韓共催大会で初出場を果たした中国も含まれる。その中国の東アジア選手権制覇を見届けるために来日したと思われるが、W杯本番をにらんで監督交代でチームの浮揚を図るギリギリのタイミングであるこの時期に、現在はフリーの世界的名将が日本代表の試合を観戦していた。
 この事実に報道陣がざわついたのも無理はない。しかも、ミルチノビッチ氏はイビチャ・オシム前監督が脳梗塞に倒れた07年11月に、「私はフリーだ」と日本代表監督就任に名乗りを挙げた人物でもある。偶然で片付けるにはあまりにも出来すぎだ。
 岡田監督が掲げる「世界で勝つための戦法」で東アジアにすら風穴をあけられない現実を叩きつけられた中で、犬飼会長は「彼らが何をしたいのか確認したい」と代表首脳陣と緊急会談の場を設けることを明言した。
 問題を解決するため、と協会トップが強調するほど、風雲急を告げる舞台裏がすけてくる。

2010年2月15日 03:52|記事URLコメント(1)トラックバック(0)

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コメント(1)

すみません、ボラ・ミルティノビッチは現イラク代表監督では?

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