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横浜ベイスターズ/アナライジング・ベースボール作動せず  by 藤江直人

■プロ野球
横浜ベイスターズ(1勝3敗) 3‐4 読売ジャイアンツ(2勝2敗)
[3月30日午後6時試合開始@横浜スタジアム/観衆21,382人]


 勝てた試合だった。というよりも、2年連続の最下位からの逆襲を掲げる横浜ベイスターズにとっては勝たなければいけない試合展開だった。
 0対1で迎えた7回裏。それまで散発3安打で零封されてきた読売ジャイアンツの先発左腕・藤井秀悟を無死一、二塁と攻め立て、7番・カスティーヨが起死回生の逆転3ランを放つ。
 左中間スタンドに弾丸ライナーで飛び込んだ新助っ人の来日第1号ともに膨らんだ勝利への期待は、しかし、直後の8回表に一気に暗転してしまう。


 先頭打者の1番・坂本勇人が初球をレフト前に運ぶと、続く2番・松本哲也が0‐1からの2球目を左中間に弾き返す。わずか3球で無死二、三塁のピンチを招くと、3番・小笠原道大の内野ゴロ、4番・ラミレスの犠飛でアッという間に同点とされてしまう。
 こうなると、巨人に傾いた試合の流れは止まらない。9回には2番手で登板した守護神・山口峻が一死満塁のピンチを招き、坂本に決勝の犠飛を許してしまう。
「選手は粘り強く闘ってくれた。力はついてきたと思う」
 淡々と試合を振り返る尾花高夫新監督の表情には悔しさがにじみ出ていた。


 無理もない。昨シーズンの対ジャイアンツの成績が6勝18敗。そのジャイアンツで投手コーチを4年間務めた経験と情報をフル活用し、「最低でも五分の星にしないと何も始まらない」と並々ならぬ決意で臨んだ本拠地開幕戦。指揮官は古巣との3連戦をこう位置付けていた。
「今シーズンのベイスターズを占う3連戦。相撲の蹴たぐりでも何でもいいから必ず勝つ」
 実際には奇襲どころかがっぷり四つの白熱した攻防となったが、就任と同時に掲げた改革への旗印「アナライジング・ベースボール(分析野球)」が肝心な場面で作動しなかった。


 ベイスターズの先発投手は千葉ロッテマリーンズから移籍した右腕・清水直行が務めた。
 4回に7番・阿部慎之助に右中間の最上段に突き刺さる超特大の先制弾を浴びたものの、粘り強いピッチングを披露。7回を終えた時点でタマ数は90に達していたが、6回、7回と連続で三者凡退に抑えて味方の逆転を呼び込んだ投球内容に、指揮官は「しり上がりによくなっていた」と絶対の自信を持って続投させた。
 8回を任せられるセットアッパーが確定していないチーム事情もあるが、ならばバッテリーにはそれまで以上の「細心」が求められたはずだ。


 坂本は必ずといっていいほどファーストストライクを振ってくる。この試合でも第2、3打席と初球打ちで凡退していたが、そうしたデータが勝負どころのイニングで生かされていない。
 続く松本には第3打席でも外角高めのストレートをセンターの左におっつけられ、俊足で二塁を陥れられている。非力を自任する松本にとって、外角のストレートは絶好のヒットゾーン。VTRでも見ているかのような失投に、清水もこう嘆くしかなかった。
「(松本には)引っ張ってくると思ったところをおっつけられた。タマ数をつかってでも様子を見るなりして、もっと最善のケアをするべきだった。8回は悔いが残る」


 2月の宜野湾キャンプを前に、尾花監督は選手に具体的な「数字」を求めた。
「ミス2割減、技術2割増、トータルで4割のチーム力アップ」
 指揮官の要求の中には、リーグワーストの3割に満たない出塁率に終わった打線に四球を選ぶことを口を酸っぱくして求める、といった項目も含まれている。
「一番手っ取り早く塁に出られるのが四球ですからね」
 カスティーヨの一発が出る直前。チーム内で進む意識改革の一端が顔をのぞかせている。


 淡白な打撃内容で昨シーズンは極度の不振にあえいだ6番・吉村裕基が実に5球連続でファウルで粘り、最終的には藤井が根負けして一塁に歩かせる。
 落胆した左腕が続くカスティーヨへの初球で気の抜けたようなストレートをど真ん中へ投じてしまったのは、吉村の粘りと決して無関係ではないだろう。
 1点を追う最終回の攻撃でも、二死走者なしから8番・橋本将が際どいボールを見極めて四球で出塁。代走・野中信吾の盗塁と代打・下園辰哉の執念の内野安打で、ジャイアンツの守護神クルーンをあと一歩まで攻め立てた。


「技術的なことを含めていろいろな要素がある。そんなに急にうまくいくとは思っていない」
 たかが1敗、されど1敗。尾花監督のコメントが決して本音ではなかったことは、帰りのタクシーを待たせながら40分近くも続けられた緊急スタッフミーティングが何よりも物語っている。
 初回、6回と2度も送りバントを失敗した2番・石川雄洋。8回裏一死二塁の場面ですべてボール球を振って三振に倒れた4番・村田修一。山口は9回表無死一塁の場面で無警戒の状態で初球に二盗を許し、イ・スンヨプへの余計な死球でピンチを広げた。
 8回表のバッテリーの配球以外にも露呈した細かいミスの積み重ねが、最終的に1点差の黒星につながったのだ。


 試合前には加地隆雄新社長自らライトスタンドに乗り込み、ベイスターズの改革元年をアピールした一戦。昨シーズンに何度も痛い目に遭わされた小笠原とラミレスをそろって無安打に封じ、最後の最後まで勝利への執念を見せたてスタンドをわかせたことは昨シーズンとの違いだが、結果としては「1敗」という事実だけが刻まれる。
「あと一歩という差が大きいのか、小さいのか。(ジャイアンツとの)残り2試合で分かると思う」
 スタジアムを引き揚げる主砲・村田の言葉には、「惜しかった」だけでは何の慰めにもならない、非情なる勝負の世界に生きるプロ戦士の危機感が凝縮されていた。

2010年3月31日 03:45|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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