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試合を重ねるごとに中村俊輔の存在感が薄くなる by 藤江直人
■J1第5節
横浜F・マリノス[勝ち点7] 1‐2(前半0‐2) 清水エスパルス[勝ち点11]
[4月3日午後3時キックオフ@日産スタジアム/観衆27,114人]
Jリーグの試合では後半になると両チームの監督のハーフタイムコメントが配布される。清水エスパルスに2点のリードを許した横浜F・マリノスの木村和司監督のそれは意味深だった。
「途中からはウチのリズムになっていた。あとは思い切りのよさ。もっと積極的に仕掛けよう」
結果として1点差で敗れたものの、後半だけでF・マリノスの攻撃陣は実に15本ものシュートを浴びせてエスパルスを自陣に釘付けにした。
ならば、前半のどこがターニングポイントとなったのか。思い浮かぶのはひとつしかない。
前半27分。MF中村俊輔アウト。MF狩野健太イン。
エスパルスの長谷川健太監督はF・マリノスのひょう変ぶりをこう振り返っている。
「中村が下がって、F・マリノスは逆にアグレッシブになってボールをよく動かされた」
俊輔が相手選手との接触で痛めていた左足の甲を強打したのは前半20分過ぎだった。
痛みでバランスを崩したのか、その5分後には自爆気味に転倒。日本代表の盟友として長く戦ってきたMF小野伸二に助け起こされた直後に、自ら交代を求めるサインをベンチに送った。
「キックした後に相手選手のかかとに当てたらしい。あの状況では代えざるを得なかった」
木村監督は早々に俊輔をベンチに下げた理由をこう説明したが、運動量豊富な狩野を中心に活性化した自軍の攻撃陣には「勝ちたい気持ちが出ていた。そういう気持ちはある程度、大事だよね」と敗戦における収穫として挙げている。
実際、けがをするまでの俊輔は覇気なし、運動量なし、見せ場なしで終わっている。
3日前のナビスコカップを含めて、エスパルス戦がJリーグ復帰5戦目。しかし、試合を重ねるごとに存在感が希薄になっていくのだから、視察に訪れていた日本代表の岡田武史監督の心中もさぞかし穏やかではなかったはずだ。
俊輔を警戒していた敵将の長谷川監督も、拍子抜けの感をぬぐいきれなかったようだ。
「中村は疲れていたと思う。運動量というところでは、いい時の彼がどのくらいの動きをするかは分からないけれど......もっといい動きをすると思いますけど」
6月のW杯南アフリカ大会を見すえて、憧れの地スペインでの挑戦を志半ばで終えた。
事実上の戦力外となったエスパニョールに留まっていては、試合勘がどんどん薄れてしまう。しかし、復活を期した古巣でも試合を重ねるごとに輝きが失われる悪循環に陥っている。
一体なぜなのか。木村監督は俊輔のコンディションがまだ十分でないことを理由に挙げた。
「内転筋がちょっと痛いんだと思う。プレーできる範囲のけがだし、俊輔も試合勘を落としたくないだろうから。トレーナーと相談して、ある程度は使いながらですね」
F・マリノスに移籍する直前の2月に入っての練習中に右太ももの裏を痛めた。
幸いにも肉離れには至らず、日本代表の一員として臨んだ3月3日のバーレーン戦でも先発して後半42分までプレー。しかし、第2節から復帰したJリーグでは後半になると故障箇所に張りを訴え、途中交代を余儀なくされてきた。
3月27日に行われたヴィッセル神戸との復帰3戦目で初の90分間フル出場を果たしたが、その反動と8日間で3試合の過密日程を考慮されて31日のモンテディオ山形とのナビスコカップ予選リーグは後半13分から途中出場。万全を期して臨んだはずの強豪エスパルスとの一戦だったが、さらに精彩を欠いた姿を露呈してしまった。
チーム側は右太ももの裏の張りを「回復過程における症状」と前向きにとらえていたが、回復自体のスピードが上がらない原因はどこにあるのか。
最近では左足の付け根にも痛みが出ているが、2年前に患った「グロインペイン」の再発か、とたずねられると珍しく怒りをあらわにするという。
6月で32歳を迎えるとあって、それだけ故障の二文字に対して敏感になっているのだろう。
木村監督は「そのへん、俊輔も悔しい思いをしていると思う」と試合中に病院へ直行した司令塔の忸怩たる心中を慮ったが、事態はそれだけにとどまらない。
開幕戦以来の黒星を喫したF・マリノスは暫定5位に後退した。タイトル奪取を掲げ、退路を断つ意味で1年契約で就任した木村監督にとっても、俊輔の状態が上向かなければ、勝つためのさい配と復調を期しての俊輔起用のバランスに苦心するはずだ。
「どこかで90分やらしたろと思っていた。あいつのことを思えば代えられなかったのもある」
前節のヴィッセル戦後には日本代表OB、それも同じ司令塔としての「親心」をのぞかせていた指揮官だが、ベクトルがF・マリノスの勝利からそれればサポーターの我慢も限界に達する。
7日のセルビア代表との親善試合にも意欲を見せている俊輔だが、移籍当初の青写真通りに状態は上向いてくるのか。過密日程を自らに課すことが裏目に出ることはないのか。
W杯までの時間が刻一刻と減っていく中で、岡田ジャパン最大の懸案事項には解消の兆しがいっこうに見えてこない。(写真=高須力)
2010年4月 4日 02:10|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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