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日本代表DF中澤佑二が繰り返す失点パターンへの不安  by 藤江直人


■J1第8節
横浜F・マリノス[勝ち点11] 1‐3(前半1‐1) 鹿島アントラーズ[勝ち点15]
[4月25日午後5時キックオフ@日産スタジアム/観衆43,025人]


 鹿島アントラーズのGK曽ヶ端準が思い切りボールを投げる。自陣の中ほどで受けたMF野沢拓也が余裕をもって反転し、ドリブルから狙いすましたように横浜F・マリノスのゴール前に生じていた大きなスペースへ向けてパスを送る。
 試合を決定づけるFWマルキーニョスの3点目がゴールネットを揺らすまでわずか数秒。スタンドを埋めたマリノス・サポーターの悲鳴とともに後半15分に訪れたシーンが、つい最近の日本代表の試合とダブって見えた。


 4月7日に大阪・長居スタジアムで行われたセルビア代表戦。前半15分にFW興梠慎三のパスミスを拾ったゼルビアが、センターサークル付近から迷うことなく浮き球のパスを日本の最終ラインのウラとGK楢崎正剛の間に送る。
 これに素早く反応したのはFWムルジャ。背後をとられた中澤佑二と栗原勇蔵のCBコンビは追いつくことができず、0対3の惨敗の呼び水となる先制点を献上したシーンだ。


 くしくも、この日もCBの2人は同じ顔ぶれだった。
 アントラーズ戦の状況を説明すれば、野沢をマークする味方の選手がいない。しかも、中澤が出ていくには距離が空きすぎている。ならばマルキーニョスをケアしようにも、気がつけばトップスピードに乗られていて対処できない。
 残された最後の手段はパスカット。しかし、一か八かで懸命に伸ばした中澤の足をかすめたボールはマルキーニョスへと渡ってしまう。この時点でGK飯倉大樹と1対1。万事休すだ。


 試合後の会見。アントラーズのオズワルド・オリベイラ監督が、してやたっりの表情を浮かべながらハーフタイムに送ったある指示を明らかにした。
「マリノスの両サイドバックはかなり攻撃的だ。彼らが攻撃に参加すればウラには大きなスペースが生じる。CB2枚とボランチが残っていても、サイドのスペースはがら空きだ。理論上、FWはCBより足が速いので、競争させればFWが勝つ確率の方が高くなる。そこを狙えばチャンスが増えるだろうと考えていた。それが、今日の3点目のシーンにつながった」

 
 ここに挙げた2つのゴールシーンに共通するものとは何か。
 中澤が絡んでいることもそうだが、見逃せないのは失点の直前まで日本代表およびマリノスが攻めていた点だ。攻めている時こそ危機管理、カウンターに対するリスクマネジメントを忘れない。サッカーにおける鉄則が守られていなかった、と言われても仕方ないだろう。
 日本代表の岡田武史監督も口を酸っぱくして唱える「攻守の切り替え」において、そのスピードが絶対的に不足しているわけだ。


 この日のマリノスは小椋祥平のワンボランチで臨んでいた。当然、中盤にはスペースが生じる。しかも、状況はマリノスの1点ビハインド。ホームの大声援を背に、何がなんでも同点、そして逆転とばかりにチーム全体が前がかりになる。
 だからこそ、自身やチームメートのポジショニングを含めたより細心のケアが必要だった。
 実際、ハーフタイムに指揮官の指示を受けたマルキーニョスは中澤と栗原のちょうど中間地点にポジションを取り、虎視眈々と得点チャンスをうかがっていた。いとも簡単に術中にはまった中澤は「今日は何も聞かないでください。ご覧の通りです」と切り出すしかなかった。


 昨年9月のガーナとの親善試合でも相手GKからのゴールキック一発で中澤とFWギャンとの1対1の状況を作られ、最後は中澤が吹き飛ばされてゴールを決められている。
 この時も直前まで日本が攻めていた。攻守の切り替えの遅さは、中澤をフォローするDF陣がいなかったことが物語っている。こうした負の連鎖は、そのまま開幕まで2か月を切ったW杯南アフリカ大会への不安につながっていく。カメルーンのエトー。オランダのロッベンとファン・ペルシー。間違いなくマルキーニョスやセルビア代表のムルジャよりスピードがある。


 というより、これが危機管理意識の欠如だけによるものならまだいい。W杯までの残り時間で徹底して思考回路に鉄則を再入力すれば、対処できる可能性は十分にあるだろう。
 その一方で、中澤は前節からアントラーズ戦までの間に体調不良で4日もマリノスの練習を休んでいる。2月から日本代表戦6試合とマリノス、それもJ1とナビスコカップの計10試合にフル出場してきた疲労は確実にその体に蓄積されているはずだ。


 そして、もっとも心配なのが、今年2月で32歳を迎えた肉体に忍び寄る「衰え」となるのではないか。ストイックなまでに節制を重ね、誰よりも体調管理に余念のない中澤だが、アントラーズ戦後にはこんな言葉も漏らしている。
「なかなか試合に入っていけなかった。入っていこうにも、アントラーズの選手が前にいたり、後ろにいたりして......人についていけなかった」
 蓄積疲労に衰えが拍車をかけている、となれば事態は一気に深刻度を増してくる。


 岡田監督はゴール前の番人となるCBを中澤と田中マルクス闘莉王の2人でほぼ固定し、W杯アジア予選を含めた代表戦を戦ってきた。選手を試せる親善試合の場でも、周囲の批判を受けながら不動の2人のコンビネーションを磨くことを優先させてきた。
 当然のように、来たるW杯本大会においても選択肢はない。つまり、中澤がこけた時点で指揮官が描くW杯構想は根本から崩壊する。


「体が重いとか、そういうのは全然ない」
 体調面の不安を一掃した中澤だが、同じパターンで何度も食らってきた失点の連鎖は何を物語っているのか。
 中澤本人が「優勝しているチームとの差を痛感した」と振り返るように、この日の失点がマリノスとアントラーズのチーム力の差に起因しているものであるならば、ヨーロッパ視察中の岡田監督を悩ます種にはならないのだが。

2010年4月25日 01:30|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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