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まだ間に合う!岡田ジャパンに求められる緊急手術  by 藤江直人

まだ間に合う!岡田ジャパンに求められる緊急手術  by  藤江直人

 サッカーの日本代表がまだ雪景色の残るスイスのリゾート地ザースフェーで、W杯南アフリカ大会へ向けた最終調整合宿に入った。
 出発直前の24日に行われた韓国代表との壮行試合で完敗を喫し、その直後に岡田武史監督が日本協会の犬飼基昭会長に進退伺を口頭で伝えたことを自ら明言。前代未聞の大騒動を引き起こした末の旅立ちとなったが、その震源地となった指揮官本人は進退伺に関する質問に「もういい加減にしてもらいたいんですけど」と露骨に不快感をあらわにしていたという。


 日韓戦から一夜明けた25日には「冗談のつもりで言ったんですけど」と不気味なまでの笑顔を浮かべながら釈明に追われていた姿を見ると、理想と現実のはざ間でかなり情緒が不安定になっていると思わざるを得ない。
「修正というか、このチームはこんなものじゃないと信じている。けがやコンディションの問題はあるけど、やり方は大きく変えない。まだまだできる選手たちだと思っている」
 キャンプ初日を終えた後には再び強気な姿勢を取り戻していたが、宿命のライバル韓国から叩きつけられた「現実」をあらためて考えると、緊急手術の必要性を感じずにはいられない。


 日本国内で行われた国際Aマッチに関しては公式記録にボールポゼッションも記される。
 日韓戦におけるそれは日本の48.9パーセントに対し、韓国は51.1パーセントだった。第2次岡田体制になって以降、日本のボールポゼッションが50パーセントを割り込んだこと、つまり対戦相手より劣ったことは記憶にない。
 岡田監督自身、ボールポゼッションに関しては「私が就任して以来、60パーセントを切ったことはほとんどない」と絶対の自信を寄せていた。「60パーセントと言うと、こちらが圧倒的に支配していること」とまで言い切っている。


 つまり、韓国戦では07年12月の就任以来、岡田監督が積み上げてきたサッカーの根本をなす部分が無残にも崩壊したことになる。
 しかも、南アフリカの地で対戦するカメルーン、オランダ、デンマークの3か国はいずれも韓国よりも格上だ。これまでのような高いポゼッションを志向するサッカーはまず通用しない。
 岡田監督にはこうした現実を直視し、発想を転換させることが求められる。ポゼッションサッカーの担い手となってきた中村俊輔と遠藤保仁の両MFを勇気を持って外すこと。そろってコンディションが悪い2人に頼り切ったサッカーからの脱却を図るくらいの大胆さがなければ、1次リーグで3連敗を喫することはもはや避けられないだろう。


 ならば現状の23人で考えれば、どんな布陣がベターなのか。
 前提として攻撃の軸をMF本田圭佑に据えることと、韓国戦でも露呈したように、その本田の足が決して速くないことを考慮すれば、本田はトップ下に固定しておくしかない。
 その上でワントップには岡崎慎司ではなく森本貴幸を据える。岡崎の頑張りは認めるが、残念ながら日本が圧倒的なボールポゼッションをキープし、数多くのチャンスを作り出す中でしか結果を残せていない。
 岡崎本人も「強い国からは点を取れていない」と認めている。その豊富な運動量を生かして、左右どちらかのサイドで汗をかいてもらう役目が適任だ。


 韓国戦で途中出場した森本の存在感は劣勢の中で際立っていた。
 後方からのロングボールに対する一歩目の反応の早さ、相手守備陣に与えるプレッシャーの大きさというふたつの点で、現状の5人の中ではもっともFWらしいFWだ。
 日本はロングボールで攻められることに神経質になっているが、それは対戦相手も当てはまる。日本が劣勢となり、押し込まれる場面が多くなるほど、ロングボールで状況打開への活路を見出すパターンが増える。
 セリエAの中で決して強豪ではないカターニアでプレーしていた森本には、そうしたワンチャンスにかける集中力とメンタリティーが宿っている。


 次はサイドとなるが、ここは左右ともに豊富な運動量で汗をかき、あるいはその攻撃力で相手のサイド攻撃に対する抑止力となる任務を負わされる。
 岡崎に加えて韓国戦では闘争心を前面に押し出していた大久保嘉人、運動量が豊富な矢野貴章、故障による別メニューから復帰した玉田圭司、松井大輔と適任者は多い。精根尽き果てたら交代すればいい。そのくらいの覚悟でキックオフ直後からピッチを走り回る。
 例えば右サイドからクロスが上がった場合は、左に配された選手が3人目のアタッカーとしてゴール前にも飛び込む。逆もしかり。そうした仕事の質を考えれば、スイスの地で別メニュー調整を余儀なくされている俊輔には残念ながら居場所がない。


 そしてボランチとなるが、2人のうちまず守備がしっかりとできる選手が必要だ。フィジカルの強さ、ボール奪取力、そして経験値を考慮すれば、適任者は稲本潤一しかいない。
 その上で、蓄積疲労でまったくといっていいほど精彩を欠いている遠藤ではなく中村憲剛とコンビを組ませる。韓国戦でもはっきりしたように、日本の攻撃に決定的に欠けているのはタテへの強引な推進力だ。「タテパスがなければ自分じゃなくなる」とまで言い切るほど、タテパスに絶対の自信を持つ憲剛を起用しない手はない。
 代表では2列目の起用が多いが、所属する川崎フロンターレでは04年から昨シーズン途中までボランチを務めていた。ポジションに対する不安もない。


 ピンチを一瞬でチャンスに変える意味でタテパスは必要不可欠。憲剛はその状況判判断にも長けているし、相手が攻撃から守備に回る際に陥る一瞬のエアポケットを常に狙っている。
 特に左サイドへのロングパスを得意とし、その左サイドに代表の中でもっともコンビネーションを磨いている岡崎を配置すれば強力なホットラインが生まれる可能性もある。
 この2年間、岡田ジャパンでボランチの一角を務めてきた長谷部誠は右サイドバックに回す。所属するボルフスブルクで経験のあるポジションであり、運動量と攻撃力の面で、体調不良を抱える内田篤人への不安を補って余りある存在となる。


 中澤佑二と組むセンターバックは「条件」付きで田中マルクス闘莉王となる。その「条件」とは、流れの中でむやみに攻め上がらないこと。これ以外にない。
 日韓戦を前にテレビで過去の代表戦を検証する番組を見たが、あらためて目を覆いたくなったのが昨年9月のオランダ戦で喫した2点目だった。MFスナイデルに振り切られた中澤の姿がクローズアップされていたが、画面にはもう一人のセンターバックである闘莉王がジョギング並みのスピードでゆっくりと戻る後ろ姿が何度も映し出されていた。
 センターバックの本職とは何なのか。これが理解できない、あるいは納得できないというのであれば、今野泰幸と代わるしかない。闘莉王はゴールが欲しいシチュエーションでのパワープレー要員として前線に投入すればいい。


 長谷部の右サイドバックをはじめとして、これまで試さなかった布陣だけに当然、リスクもつきまとう。しかし、そのくらいの覚悟を決めなければチーム状況は絶対に好転しない。
 幸いにも日本にはテストマッチがあと2つも残されている。30日にオーストリア・グラーツで対戦するイングランドはベストメンバーを組んでくるという。
 日本としても望むところだろう。あとは岡田監督の決断次第だが、日本を発つ前に南アでの目標をきかれた指揮官は「そんなもの、いまさら変えても仕方ない」と言い放った。
 目標として掲げてきたベスト4が「そんなもの」なのかどうかはともかく、日本代表監督という肩書きが持つ言葉と責任の重さをいま一度かみ締めた上で、ベストの選択をしてほしい。

2010年5月27日 15:38|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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