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災いを福に変えられなかったコートジボワール戦 by 藤江直人

■サッカー国際親善試合
コートジボワール代表代表 2‐0(前半1‐0) 日本代表
[6月4日午後7時25分(日本時間)キックオフ@スタッド・ド・トゥルビオン(スイス)]
テレビ画面の右上には「仮想カメルーン戦」のテロップが終始登場していた。
コートジボワールが同じアフリカ大陸の国だから。こうした単純な図式が浮かんでくるが、この試合を10日後に迫ったカメルーンとの1次リーグ初戦のシミュレーションの場としたいのならば、何をおいてもやるべきことがあったはずだ。
スイスとの時差が7時間。つまり、現地では正午すぎにキックオフされた試合だ。W杯本番を考えればありえない時間設定。なぜカメルーン戦と同じ午後4時の開始にできなかったのか。
開始当時の気温は23度。ピッチレベルはもっと暑かったはずだ。季節が真逆、つまり冬となる南半球においてはありえない気象条件と言わざるを得ない。
これでは本番直前の選手たちのコンディションに与える悪影響が懸念される。実際、試合中に頻繁に給水に走る選手の姿が、日本、コートジボワールを問わずに確認された。
実はこの試合、4月の段階でキャンセル寸前の事態に直面していたという。炎天下で行われる試合に対して、コートジボワール協会側が難色を示したためだ。
解決への折衷案としてキックオフ時間を2時間遅らせることが検討された。日本時間の午後9時すぎとなるが、この案を頑なに受け付けなかったのが生中継するTBSだ。
その理由が情けない。いわく「人気番組をずらしたくない」から。この日はコートジボワール戦に続いて『中居正広のキンスマ』が通常より20分遅れでオンエアされた。
つまり、本番を控えた日本代表のコンディションよりも局全体の視聴率が大事ということか。
いまとなっては、W杯ドイツ大会を終えた当時のジーコ監督が「日本国内で視聴率を稼げる時間帯にオーストラリア戦とクロアチア戦を組まされた」とテレビ局と広告代理店に噛みついたのもうなずける。悪しき拝金主義がまたも顔をのぞかせたことになる。
最終的にはジャパンマネーで無事開催にこぎつけたであろう試合は、当然のようにカメルーン戦のシミュレーションにも何にもならなかった。
体力を極力温存したかったのか。コートジボワールはなかなか前に出てこない。前半13分にDF田中マルクス闘莉王のオウンゴールで先制すると、その傾向はより鮮明になった。
時として身体能力の高さを垣間見せるシーンが訪れるものの、彼らのモチベーションの低さはテレビ画面を通してもはっきりと伝わってきた。
実際、日本代表の岡田武史監督はカメルーンに対して「前線からプレッシャーをガンガンかけてくる」と見ている。拍子抜けした雰囲気が実況アナの絶叫で空しいばかりに増幅された。
日本のメンバーはイングランド戦と変わらなかった。
アンカーにMF阿部勇樹を置いたイングランド戦から阿部と遠藤保仁のダブルボランチに変更し、長谷部誠をトップ下に据えたが、基本的にはまず守備ありき。先制を許せばいまの攻撃力では追いつけない、という岡田ジャパンの現状を反映させた布陣であることは変わらない。
そのシナリオは前半を無失点でしのぐこと。それがいきなり崩壊した後に露呈したのは、目を覆わんばかりの攻撃陣の体たらくぶりだった。
初めてのシュートは実に前半40分。ボールを奪って攻撃に転じてもパスやトラップで初歩的なミスを連発し、あっけなく相手ボールとしては再び守備に追われる。
守備重視の布陣で点を取るための最善策とは何か。日本の場合はセットプレーとなるが、果たしてその共通認識があったのかどうか。
コーナーキックは何本あったのか。フリーキックは何本あったのか。そもそも、流れの中でゴールを奪えないのならば何とかセットプレーを得る、という青写真は描けていたのか。
足元ではなく相手のウラへ。無難なパス回しではなく1対1の勝負を。これらを愚直に繰り返すことでコーナーキックを得られるし、相手のファウルも誘発できる。
しかし、特に前半の日本は相手に脅威すら与えられなかった。試合後に日本協会の犬飼基昭会長が「やけにびびっていた」と評していたが、まさに的を射るコメントだった。
極端にモチベーションを下げたコートジボワールに臆していたら、とてもじゃないがW杯本番でカメルーン、オランダ、そしてデンマークとは戦えない。
けがを恐れていたという見方もできるが、ならばこの時期に強豪国との強化試合を組む必要もない。W杯に出場しない格下の国相手の調整マッチで十分だろう。
そして、情けない試合展開にさらに拍車をかけたのが岡田監督のさい配だ。
守備重視の布陣でも先制されることは少なくない。W杯本番でもそうした状況に直面する時が訪れるだろうし、だからこそゴールを奪いにいくためのまたとないシミュレーションとしてコートジボワール戦の後半を活用してほしかった。
岡田監督は後半開始から中村俊輔、中村憲剛、稲本潤一のMF勢をピッチに送り出した。それぞれ本田圭佑、遠藤、阿部に代えたが、フォーメーションは4‐5‐1のままだった。
これがゴールを奪いにいく時の攻撃的なオプションとは思えないし、イングランド戦で出場機会のなかった3人を試したかった、という指揮官の意図もうかがえる。
しかし、本番における交代枠が3つしかないことを考えれば、シミュレーションとして最初に切るべきカードはFW森本貴幸を投入することではなかったのか。
この「論」でも何度も指摘してきたが、岡崎のワントップではW杯本番を戦うには厳しい。コートジボワール戦でもシュート0本のまま、後半10分に玉田圭司と交代している。
岡崎はアジア勢を相手に日本が優位にたち、ボールポゼッションが60パーセントを超える戦いの中で生かされるFW。劣勢の中では相手ボールを追いかける姿ばかりが目立った。
自ら仕掛けて状況を打開するプレーを求めるのは酷だし、森本には守備重視のセリエAでゴールをあげてきた実績がある。1対1にも強い。後半20分からの投入はあまりに遅すぎた。
実際、残り15分を切ってから森本と玉田のツートップに切り替えた布陣の方がボールはよく回った。ゴールの予感はともかくとして、岡崎のワントップよりははるかに機能していた。
12年ぶりの国際Aマッチ4連敗うんぬんよりも、攻撃のオプションをほとんど試せないままW杯本番を迎えることの方がはるかに深刻なのではないか。
後半から森本と岡崎のツートップにしてもよかったし、ワントップを岡崎から森本に代えた上で、さらに途中から玉田をFWとして投入するのもよかった。
直近の2試合で3つ目のオウンゴールという世界でも類を見ないほどの「災い」を、岡田監督には殻を破るようなさい配で「福」に転じさせてほしかったのだが。
背後から悪質なタックルを受けて負傷退場したDF今野泰幸の状態次第となるが、岡田監督は14日のカメルーン戦にも同じ11人を先発させるだろう。
ただ、FWはいきなり入ってもチーム内にそれほど大きな混乱は引き起こさない。それを考えれば、ワントップは岡崎ではなく森本を置いて戦うべきではないだろうか。
大黒柱と公言してはばからなかった俊輔を本田の控えに回すという非情な判断を下した岡田監督には、ぜひとも岡崎のワントップに対しても見切りをつけてほしい。
岡崎の頑張りは認めるが、それだけでは通用しないのがW杯だ。岡崎の長所を生かしたいのならば、彼が「使われる」FWであることを理解した上で過度な負担を軽減させるべきだ。
試合後の岡田監督は「戦える選手、戦えない選手がはっきりした」と明言したが、それが何を意味するのか。オウンゴールの責任を過剰に意識した闘莉王の無謀なニータックルでFWドログバが右腕を骨折し、その報復ではないだろうが、今野も右ひざに重症を負った。
残ったのは後味の悪さだけ。収穫どころかイングランド戦でわずかに見えた光明を自ら覆い隠してしまった状態で、日本代表はあす6日に決戦の地、南アフリカに入る。
2010年6月 5日 06:54|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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