Home > 本日の論! > W杯開幕!南アフリカ代表に胸を打たれた理由 by 藤江直人
W杯開幕!南アフリカ代表に胸を打たれた理由 by 藤江直人

■W杯南アフリカ大会・1次リーグA組
南アフリカ代表[勝ち点1] 1‐1(前半0‐0) メキシコ代表[勝ち点1]
[6月11日午後11時キックオフ@サッカーシティー競技場/観衆8万4,490人]
4年に一度のサッカー界最大の祭典が開幕を迎えた高揚感もあったが、それ以上に南アフリカの戦いぶりに胸を打たれた90分間だった。
下馬評では不利とされ、W杯史上で初めて初戦で黒星をつけられ、かつ決勝トーナメントにも進めない開催国になる、とも揶揄された。実際、FIFAランク17位のメキシコが同83位の南アフリカを試合開始直後から圧倒したが、南アフリカは自らを「弱者」であると認め、格上のチームから白星をもぎ取るためのベストのゲームプランをほぼ完璧に遂行していた。
最終ラインの4人とその前の4人のMFが自陣で強固なブロックを形成する。主導権を握られながらも、GKクネのファインセーブや守備陣の体を張った守りでゴールを死守。0対0の均衡を破れないメキシコの焦りを誘い、ボールを奪うや、これでもかとカウンターを仕掛け続ける。
後半10分にさしかかろうとしていた時だった。背後からプレッシャーを受けたメキシコFWドス・サントスがクサビのパスをトラップしきれず、大きくこぼれたボールをMFピーナールが拾った瞬間に、愚直に繰り返してきたカウンターがようやく功を奏した。
ピーナールからMFモディセ、FWムフェラとダイレクトでつながったボールは再びセンターサークル手前のモディセのもとへ。しかも、この時すでに左サイドをMFチャバララがフリーの状態で、スペースにパスを出せ、と右手で指示しながら駆け上がっている。
大会第1号ゴールは、トップスピードに乗ったままスルーパスを受けたチャバララが迷うことなく振り抜いた左足から生まれた。ピーナールがボールを拾ってから、わずか10秒。ゴール右隅に突き刺さる豪快な弾道に、鳥肌が立つ思いを禁じえなかった。
スコアレスドローに終わった昨年11月の日本代表との親善試合をテレビで観戦したが、正直、ここまで戦い方が徹底されたチームではなかった。
日本戦はブラジルを率いて1994年のアメリカ大会を制した、名将パレイラ監督の復帰初戦でもあった。アフリカ大陸初のW杯開催の名誉に燃える選手たちにチームの「現在地」を理解させ、7か月足らずの間に弱者が強者を下す戦い方を徹底して叩き込んできたのだろう。
それまで9戦8敗とドン底にいた南アフリカが指揮官交代を境に12戦無敗と「V字回復」し、強豪メキシコとも互角の戦いを演じた。
A組のもうひとつの試合、ウルグアイ対フランスはスコアレスドローに終わって大混戦に突入したことを見ても、南アフリカの決勝トーナメント進出は決して不可能ではない。
メキシコの猛攻に対して後手に回っていた左サイドバックを後半開始から交代させたさい配を含めて、その手腕にはあらためて驚嘆するしかない。
そして、南アフリカの戦いぶりは、ベースキャンプ地ジョージで試合をテレビ観戦していたはずの日本代表にもヒントと勇気を与えたはずだ。
14日の1次リーグ初戦で対戦するカメルーンに対して日本は弱者。これまで「ベスト4」と夢うつつだった岡田武史監督がようやく現実に目覚め、大会直前になって堅守速攻路線へ舵を切った。「遅まきながら」の感は否めないし、選手同士のコンビネーションにも不安が残るが、日本の現在地を考えれば番狂わせの類を演じるにはこの戦い方しかない。
強固なブロックを形成した南アフリカは、むやみにプレスを掛けてこなかった。1753メートルというヨハネスブルクの標高を考えればスタミナ温存の意味で最善の選択であり、実際、終了間際にもロングボールに抜け出したムフェラがポスト直撃の一発を放っている。
その一方で、ドス・サントスを中心とするメキシコの猛攻に対して最終ラインはズルズルと下がらず、勝ち点3を狙ったメキシコのプランを大きく狂わせた。実力で上回る相手にボールを持たせるのはリスクを伴うが、耐え抜いた先に相手の「焦り」という果実を得られる。
日本が初戦を戦うブルームフォンテーンの標高が1400メートルであることを考えれば、プレスを極力自重し、なおかつ決して退かない「二重の勇気」が何よりも求められる。
ボールポゼッションで後手に回っても、華麗にパスをつなぐ場面がたとえ数えるほどでも、開幕戦に臨んだ南アフリカからは熱いものが伝わってきた。
セットプレーから一瞬のスキを突かれて同点とされたGKクネが見せた、まるで敗者のように悔しがる姿には思わず胸を打たれた。文字通り泥臭く、死力を尽くして戦い抜いた選手たちには、勝利を信じて疑わなかった南アフリカ国民も納得したはずだ。
同じことが日本代表にもあてはまる。
ここまできたら、4月以降は勝ち星なしの4連敗というチーム状態や指揮官の迷走さい配うんぬんは関係ない。カメルーンも直近の2試合はともに大量失点での惨敗を喫している。もともと懐疑的なFIFAランクは、さらに意味をなさなくなる。
意地と意地、プライドとプライドが真っ向から激突するW杯だからこそ、勝者と敗者を隔てる境界線はほんの些細な部分となる。
開幕戦の南アフリカを日本に置き換えてみる。常に守勢を強いられ、冷や汗の場面が続き、カウンターにしか活路を見いだせなくても、心の底から応援できた。
先制ゴールの場面。ドス・サントスに突っ掛けたのが阿部。ピーナールが松井。モディセが長谷部。ムフェラが本田。そして、左サイドを一直線に駆け抜けたチャバララが大久保。こんなシーンを思い描いただけで、再び鳥肌が立ってきた。
カメルーン戦まであと2日。日本代表の魂が伝わる戦いを見せてほしい。
2010年6月12日 07:50|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
トラックバック(0)
この記事のトラックバックURL: http://sv62.wadax.ne.jp/~sports-times-jp/mt/mt-tb.cgi/387
コメント(0)
コメントを書く
- 井上康生 「最後の内また」
(2008/06/08 21:36) - 北京五輪100kg超級代表、石井彗の練習風景
(2008/05/24 22:25) - ばんえい競馬@帯広ばんえい競馬場
(2008/05/07 12:15)
カテゴリー
アーカイブ
編集部より