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戦列復帰!今野泰幸が誓う10年越しの恩返しとは  by 藤江直人

戦列復帰!今野泰幸が誓う10年越しの恩返しとは  by  藤江直人

 10年越しの恩返しを果たせる最高の舞台が巡ってきたのではないか。
 あす19日にキックオフを迎えるオランダとの1次リーグ第2戦で、右ひざのじん帯を痛めていた今野泰幸がスタメンに復帰する、と報じられている。しかも、これまでのサイドバックではなく3人で組むボランチの中央、いわゆるアンカーの位置で起用されるという。
 南ア発のこの一報に「適材適所だ」と思わずにはいられなかった。


 1対0で勝利したカメルーン戦では阿部勇樹がアンカーの位置で及第点の働きを見せたが、後半ロスタイムにイエローカードをもらっている。
 デンマークとの第3戦をにらんで好調を維持する阿部を温存した、という見方もできるが、オランダ戦ではインテルでチャンピオンズリーグを制した司令塔のスナイデルが対面にくる。対人マークという仕事においては今野の右に出る者はいない。適材適所と思ったゆえんがこれだ。


 現在発売中の『論スポ』では、今野のインタビューページを掲載している。
 それによれば、東北高校を卒業したばかりの2001年。コンサドーレ札幌でプロとしての第一歩を踏み出した今野は、J1開幕直前のオーストラリアキャンプで当時コンサドーレを率いていた岡田武史監督と1対1の面談の場を持った。
 今野の記憶には、いわく「目からウロコが落ちた」というやり取りが鮮明に刻まれている。


岡田監督:お前の特徴は何だか分かっているか。
今野:いいえ、よく分かりません。
岡田監督:お前は守備のアプローチのスピードとボールを奪う力がすごい。それを伸ばせ。
 この瞬間からボランチという言葉すら知らなかった少年は長所を徹底して磨き、Jリーグでナンバーワンのボール奪取力と相手を辟易とさせるタイトなマークを身につけるに至った。

 
 何よりも、今野をプロの道に導いたのも岡田監督だった。
 JFL所属のソニー仙台への加入が内定していた今野だったが、プロへの夢を捨て切れず、東北高校の大森貞夫監督に思いの丈を訴えた。
 ほどなくして命じられたのが、コンサドーレの御殿場合宿への参加。2泊3日と限られた時間だったが、そのプレーが岡田監督の眼鏡にかない、最終日にプロ契約を打診されたのだ。


 あれから10年。岡田監督と出会わなかったら、岡田監督から長所を指摘されなかったら。高卒1年目からJ1の舞台でボランチやディフェンダーとして起用されなかったら。
「多分、いまでも迷っていたと思う」
 幾重もの偶然に感謝しながら、08年1月からは日本代表の監督と選手という関係で再び運命の糸が交わった中で、究極の恩返しができる舞台を待ち焦がれてきたわけだ。


 昨年9月の親善試合で日本はオランダに0対3で完敗している。
 この時はMF中村俊輔を中心とする布陣で真っ向勝負を挑み、全員攻撃、全員守備の弊害でスタミナ切れを起こす後半の20分すぎまでは0対0と食い下がった。
 ひたすらプレスをかけまくり、オランダの選手から「90分間体力が持つはずがない」と嘲笑された一戦に今野は出場していない。3人のボランチを並べる守備的な布陣でもなかった。


 そうしたデータがないからこそ効果がある。攻撃の軸となるスナイデルを徹底的にマークし、満足に仕事をさせないだけで「前回とちょっと違うぞ」と思わせることができる。
 ひたすら引いて守れば、アルゼンチンに粉砕された韓国の二の舞になるおそれがある。だからこそ、守りを重視する中で少しでもオランダのリズムを狂わせることができれば、そこから突破口を見出せる可能性も生じる。今野に課せられるであろうミッションは重要だ。


 インタビュー取材では、こんなことも聞いてみた。
:セルビア戦後に岡田監督は最終ラインの前にアンカーを置くことも検討したいと発言しましたが、守備力で言えば今野さんが最適です。「よっしゃ」と思ったのでは。
今野:よっしゃとは思わないですけど(笑)。そういった対策を施すことでチームがいい方向に行くならば、可能性がある限り狙っていきたい。試合前日までは全員がライバルですから。


 ボランチ、サイドバックに加えて所属するFC東京では昨シーズン途中からセンターバックを務めている。今回のW杯でも登録はDF。まさに守備のユーティリティープレーヤーだが、今野自身、そう呼ばれることに「誇りを感じる」だという。
「器用貧乏と言われないように。そこがけっこう難しいんですけどね(笑)。ポジションへのこだわりは特にない。与えられた仕事で常にベストの結果を出していかないと」


 FC東京の城福浩監督をして「オン・ザ・ボールにおける守備で彼を上回る選手はJリーグにいない」と言わしめる今野は、ひとつの「哲学」を抱いてピッチに立っている。
「能力のない選手ほど、それを補うためにファウルを犯す。大切なのは相手との距離感とアプローチの勢い。懐にスッと入って体を密着させれば、相手はボールキープに必死になって顔を上げられない。ボールを奪うのが理想ですけど、最低でもボールを後方に下げさせればいい」
 初のW杯のピッチ。相手はスナイデル。一世一代の戦いに燃えないはずがない。


 最近は「阿部ちゃんと役割が似てきた」とよく思うという。阿部もセンターバックやサイドバックで起用されたことがある。守備のスペシャリスト。イビチャ・オシム前監督の言葉を借りれば「ポリバレントな選手」。その象徴である今野には究極の目標がある。
「コイツがいてよかった、と監督から言われる存在になりたいんです」
 目標を成就させる舞台は整った。日本代表はきょう18日、決戦の地ダーバンに入る。

2010年6月18日 18:22|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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