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デンマーク撃破!2発のFKがさらに歴史を塗り変える! by 藤江直人

■W杯南アフリカ大会・1次リーグE組
日本代表[勝ち点6] 3‐1(前半2‐0) デンマーク代表[勝ち点3]
[6月25日午前3時半キックオフ@ロイヤルバフォケン競技場/観衆2万7,967人]
※日本代表の2大会ぶり2度目の決勝トーナメント進出が決定
フラッシュインタビューに応じたDF中澤佑二の声が一瞬だけ途切れた。2大会ぶりの決勝トーナメント進出を決めたことへの感想を聞かれた直後だった。
「(自分にとっては)初めての経験なので......とにかく嬉しいです」
1分け2敗と惨敗した4年前のドイツ大会の悔しさと、W杯イヤーに入ってからの日本代表の低空飛行ぶりに対する情けなさ。ふたつの思いのはざ間でもがき、「泥臭くても1対0で勝つのが強いチーム」と思いの丈を訴えたこともある32歳のベテランを感極ませるほど、ルステンブルクのピッチに躍った青いユニホームの一団はしぶとく、たくましく、気高さすら感じさせた。
後半開始直後から執拗に繰り広げられたデンマークのロングボール攻撃をはね返し続けた集中力。最後まで出足の衰えない、鋭利な刃物のようなプレス。チャンスをつかむや、何人もの青いユニホームが敵陣目指して駆け上がるスタミナ。対カメルーンの勝利、対オランダの惜敗を経た日本代表は短期間で相手を辟易とさせるほどの泥臭さを身につけていた。
後半36分に許した失点にしても、FWヨン・ダール・トマソンのPKをGK川島永嗣が執念でセーブしながらこぼれダマを押し込まれたもの。PK自体も微妙な判定だったし、何よりも1点どころか2点、3点とチーム全員が貪欲なまでにゴールを追い求めた。
中澤はかねてからこうも話していた。
「とにかくセットプレーで点を取りたい。日本がセットプレーで点を取れるようになれば、他の国に与える脅威が増すと思うので」
待ち焦がれた瞬間は前半17分に訪れる。MF長谷部誠が突っ掛けて獲得したフリーキック。右45度。距離にして約35メートル。この試合もワントップを託された本田圭佑の左足から放たれた無回転の弾道は4枚のカベを超えてから急降下。コースも左にスライドさせながら、ダイブしたGKトーマス・セーレンセンをあざ笑うようにゴール左に吸い込まれた。
「受けに回らないように」
岡田武史監督のこんな指示もあり、キックオフ直後の日本は従来の4‐2‐3‐1の攻撃的な布陣で打って出て、逆にデンマークに攻め込むスペースを与えていた。
いわば指揮官のさい配ミスを打ち消した先制点はW杯の舞台で日本が挙げた10得点目で、これがコーナーキックを含めたセットプレーから生まれた初めてのゴール。引き分けでも決勝トーナメント進出が決まる日本を心理的に優位に導いた衝撃的な一撃は、13分後にはさらなる「副産物」を日本にもたらすことになる。
ゴールほぼ正面。距離にして27メートル。本田との鮮やかなワンツーでゴール前に抜け出したFW大久保嘉人が倒され、相手ディフェンダーのファウルを誘った瞬間、MF遠藤保仁は「ここはオレが蹴る」と譲らなかったという。
「キーパーが(本田)圭佑をケアしていたのでチャンスだと思った。ある程度スピードをつけてカベを越せばいけると思った。狙い通りだった」
本田のスーパーゴールの残像が脳裏から消えないのだろう。GKソーレンセンの反応は、振り抜かれた遠藤の右足に対して明らかに遅れていた。
カベも作り方が中途半端で、しかも右側の選手は背が低い。デンマーク代表のモアテン・オルセン監督は対戦相手を徹底して分析することで知られるが、遠藤がフリーキックを得意とするというデータの一項目はあっても、そこまで正確無比だとは思っていなかったのだろう。
この勝負は相手を甘くみたデンマークの負け。試合を決定づける2点目が、こすりあげるようにしてカーブ回転をかけられた弾道から鮮やかにゴール右隅に吸い込まれた。
前半で2点のリードを奪う、ほぼ完璧な試合運び。カメルーン戦後は「大番狂わせ」とか「最も退屈な試合」と酷評していた海外のメディアが賛辞の嵐と化したことは言うまでもない。
本田の一撃を「剛」とするなら、遠藤の芸術弾は「柔」と表現すべきだろうか。タマ質も弾道も異なるフリーキッカーを左右対で擁していることを、勝利とともに今後の対戦相手に示したことのメリットは計り知れないほど大きい。
29日の決勝トーナメント1回戦の相手はF組を1位で勝ち抜いた南米代表のパラグアイ。ファウルを厭わないアグレッシブな守備を伝統としているが、遠藤はこうも語っている。
「危険なエリアでファウルを犯せないと相手ディフェンダーの頭にも入れられた」
これこそが、中澤が指摘してきた「他の国に与える脅威」に他ならない。
しかも、クリスティアーノ・ロナウドの無回転弾をほうふつとさせた本田の射程距離は長い。35メートルの位置からも狙えることを証明したのだから、さらに脅威は増す。
前線でのボールキープ。苦しい時間帯にファウルやコーナーキックを獲得する狡猾さ。後半42分のFW岡崎慎司のゴールをアシストした冷静さ。最後まで攻める気持ちを忘れないアグレッシブさ。出色のプレーを見せた本田という存在そのものの脅威も十二分に与えたはずだ。
2対0で迎えたハーフタイム。その本田が引き揚げてくる時に、すれ違ったMF中村俊輔から労をねぎらわれた。この瞬間、ひとつの確信を抱かずにはいられなかった。
「僕たちは本当にチームがひとつになって戦っている」
ゲームキャプテンの長谷部がこう話すのを何度も聞いてきたが、どこか懐疑的に思えならなかった。遠因は14日のカメルーン戦後に本田が発した言わずもがなの言葉にあった。
「この大会は誰が試合に出る、いままで出ていた選手が出られないという面でいろいろな問題があった。勝負の世界だから仕方ないことだし、みんなで戦っていることを示したかった」
決勝ゴールをあげた直後にベンチの仲間のもとへ駆け寄った理由を明かしたものだが、この中で触れられた「いままで出ていた選手」が誰を指すのかは明白だった。
大会直前に岡田武史監督が堅守速攻に舵を切ったことで、それまで不動の大黒柱だった俊輔がポジションを失った。いまの日本代表に最も適した戦い方であり、実際に一戦ごとに自信を深めて攻守両面で成熟し、攻撃面では創造性が顔をのぞかせる時も出てきたが、ベンチで戦況を見つめる俊輔自身は忸怩たる思いを抱えていることは想像に難くない。
カメルーン戦後の本田は「これで雰囲気がよくなると思う」とも続けている。ということは、それまではチームが一丸ではなかったのか。どこかに内紛の火種がくすぶっていたのか。
本田の言葉を聞いて、必然的にこんな思いを巡らせてしまった。本田と俊輔が「話さない」と報じられたのもこの直後だった。
そうした懸念も、ハーフタイムに2人が交錯したシーンを見て吹き飛ばされた。俊輔同様に大会直前に川島にポジションを明け渡したGK楢崎正剛が、ベンチで大声を張り上げている姿が何度もテレビに映っている。試合後に選手全員がつくった輪の中央で、率先して歓喜の音頭を取っていたのは「心に残る試合をしたい」と誓っていたベテランのMF稲本潤一だった。
4年前のドイツ大会は「史上最強」と称されながら、主力組と控え組の間に生じた温度差が原因で最後まで一体感が生まれなかった。そうした苦い経験があるからこそ、ドイツ大会後には一時的に代表を引退していた中澤が言葉を詰まらせたのかもしれない。
その中澤はこう話しながら苦笑いしたこともある。
「代表だと意外と周りが厳しくて、セットプレー一発だけだとブーイングが起きかねない」
そんなことはない。鬼気迫るセーブを連発した川島。ゴール前の城壁と化した闘莉王。攻守に無尽蔵のスタミナを発揮した駒野友一と長友佑都。バイタルエリアの番人としてデンマークの前に立ちはだかった阿部勇樹。この試合も精魂尽き果てるまでピッチを駆け抜けた松井大輔と大久保。ダメ押し弾を決めた岡崎は相手のクロスを至近距離で2度も顔面で防いだ。
ピッチに立った14人だけではない。サブメンバー、4人のサポートメンバー、首脳陣やスタッフが一丸になってもぎ取った、泥臭さあふれる勝利には惜しみない拍手を送りたい。
もちろん、戦いはまだ続く。テストマッチ4連敗の泥沼から自国開催以外のW杯における初勝利、決勝トーナメント進出とハードルを超えてきた日本に、もはや失うものは何もない。こうなると、過去の対戦成績やFIFAランクもほとんど意味をなさなくなる。
「あとはどれだけ神様が運をくれるか。でも、運は自分たちで引き寄せるものですから」
本田が頼もしい言葉を残せば、長谷部はさわやかな笑顔の中に闘志をのぞかせた。
「タマ際の強さでは絶対に負けない。どこまでも突っ走りたい」
遠く南アのピッチで魂がほとばしる瞬間を、日本の地でもっと共有したい。陳腐な表現となるが、歴史を塗り変えていく戦いを、もっと、もっと見てみたい。
2010年6月25日 13:50|記事URL|コメント(2)|トラックバック(0)
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コメント(2)
デンマーク戦勝利、国外ワールドカップでの初決勝T進出、と素直に喜びたいですが、心の底から嬉しいかと聞かれたら嬉しくない自分がいます。今後どこまで勝ち上がるか分かりませんが・・・
オシムの後を引き継いで、ワールドカップ開幕まで岡田のやってきたサッカーには疑問があります。それを棚に上げて忘れ去り、喜んでいたら、これまでの日本サッカーの悪さを繰り返すことになると思います。ワールドカップ後、岡田本人は監督はもうやらないと決めているようですが、次回の2014年ブラジル・ワールドカップまで岡田代表監督続投をバカな協会が打診しないことを切に願います。
次期日本代表監督は、有能な外国人監督にしてほしいです。やはり一度はヒディングにやってほしいのはやまやまですが、トルコ代表監督になってしまうので。候補は、オットー・レーハーゲル、カレル・ブリュックナー、クラウス・トップメラー、ハビエル・アスカルゴルタ、ハビエル・イルレタ、ヘンク・テンカーテ、マルセロ・ビエルサ、ルイス・フェリペ・スコラーリなどがいいかなと考えます。
ナオキ様
いつもコメントありがとうございます。
パラグアイ戦からかなり時間が経ってしまいましたが、パラグアイ戦を含めた今大会の日本代表の戦いの検証と、今後への指針を1日付けで記しました。
私もナオキさんの意見に賛成です。確かに日本はよく戦いましたが、日本協会までが浮かれていては、選手たちの頑張り自体が無駄に終わってしまいます。岡田体制の是非をしっかりと検証して、今後に日本のサッカーが進むべき道を明確に示し、それを実践できる指導者に新監督のオファーをしてほしいものです。
コラムでも書きましたが、優秀な指導者ほどすぐに契約していくので、迅速な対応が必要です。そうした一連の動きについても、これからも取材していきます。
今後もご愛読宜しくお願いします。
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