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ウルグアイ散る。学ぶべき点が多かった南アでの軌跡 by 藤江直人

■W杯南アフリカ大会・準決勝第1試合
オランダ代表 3‐2(前半1‐1) ウルグアイ代表
[7月7日午前3時半(日本時間)キックオフ@グリーン・ポイント・スタジアム]
※オランダが32年ぶり3度目の決勝戦進出
満身創痍のエース・フォルランはすでにベンチに退いていた。今大会で3ゴールを挙げているスアレスと左サイドバックのフシーレは出場停止。精神的支柱のキャプテン・ルガーノ、天才レフティーとして一躍脚光をあびたロデイロも故障でプレーできない。
2点のビハインドで突入した後半ロスタイム。それでもウルグアイはあきらめなかった。攻撃参加した右サイドバックのマキシミリアーノ・ペレイラが1点を返す。さらに怒涛の勢いで敵陣に迫り、オランダを顔面蒼白にさせる。あと一歩及ばずに終戦を告げるホイッスルを聞くと、今度は一部の選手がオランダの選手たちと何やら言い争っている。
その光景に、執念を通り越した怨念のようなものを感じずにはいられなかった。
大会前の下馬評は決して芳しいものではなく、40年ぶりに歩を進めた準決勝でも、主力が不在という苦境も手伝って簡単にオランダの軍門に下ると見られていた。
実際に前半18分にオランダDFファンブロンクホルストの目の覚めるようなロングシュートで先制されたが、ここからウルグアイが真骨頂を発揮する。オランダにあえてボールを持たせながらその実はゲームを支配し、虎視眈々とカウンターのチャンスをうかがう。
例えるなら、肉を切らせて骨を断つ、か。狙い通りに前半41分にカウンターからフォルランの鮮やかなミドルシュートで同点に追いつき、その後もペースを渡さない。時には主導権を握って攻勢に出るなど、オンとオフの時間帯を巧みに、意図的に織り交ぜた。
後半25分にオランダに勝ち越しのゴールを許してしまったが、オフサイドを取られてもおかしくないプレーだったのも事実。さすがに気持ちが切れかかったのか、その3分後にFWロッベンに奪われた3点目が結果的に決勝点となってしまったが、かつてW杯を2度制した古豪が弱者のサッカーに徹し、オランダを苦しめた90分間には正直、感動させられた。
実は準々決勝からウルグアイというチームに不思議と魅せられていた。
延長戦にもつれ込んだガーナとの死闘。その後半のロスタイムに放たれた相手のシュートをバレーボールのブロックのごとく両手で阻止し、一発退場を命じられたスアレスのプレーは、スポーツマンシップの観点で論じれば絶対に許されるべきものではない。
しかし、W杯が時に戦争になぞらえることも考えれば、退場を覚悟の上で自らの身を犠牲にして、相手のゴールが決まると同時に試合が終わる絶体絶命の危機を救ったスアレスの行為に対して、怒りや幻滅とは対極の位置にある感情を覚えていたのも事実だ。
スポーツはルールに則って行われる。そのルール通りにスアレスはゲームから追放され、準決勝の出場停止処分を科され、ガーナにはPKが与えられた。
決めればアフリカ勢初のベスト4が決まるPKをバーに当てて外したギャンが、臆することなくPK戦の1番手を務めて豪快に決めた。運命がめまぐるしく、まさに秒単位で入れ替わっていく中で、8万人を超える大観衆の執拗なブーイングを受けながらウルグアイの選手たちは4人が平然とPKを成功させ、GKムスレラは2本を止めた。
これだけを見ても、ウルグアイのメンタルの強さが並大抵ではないことが分かる。
ネット上ではヨーロッパのメディアを中心に今大会のウルグアイに対して批判的な意見が飛び交い、ベスト4そのものを疑問視する声も少なくない。
すべてはガーナ戦でスアレスが犯したファウルに集約されている。将来のプロサッカー選手を夢見る子供たちには絶対に真似をしてほしくない行為であることは間違いないし、自らを美化するスアレスのコメントはいただけない部分もあった。しかし、個人的な意見としては、あのワンプレーだけで今大会でウルグアイが刻んだ軌跡を全面否定することは到底できない。
2度目のW杯制覇は60年前の話で、すでに風化しかけている。前回ドイツ大会はオーストラリアとの大陸間プレーオフで敗れて出場を逃し、今大会も南米予選でかろうじて5位を死守。コスタリカとの大陸間プレーオフを制して何とか出場権獲得にこぎつけた。
まさに息も絶え絶えだった状態からフランスと引き分け、開催国の南アフリカを3対0で一蹴し、強敵メキシコの猛攻を1対0でしのぎ切り、韓国の気迫をうっちゃり、ガーナの執念をもねじ伏せた。NHKの解説を務めた山本昌邦氏は「したたか」という言葉を連呼していたが、躍進の背景にたった一言には収められない要因があるのは明白だ。
スペインリーグで2度も得点王に輝いたフォルラン、オランダリーグ得点王のスアレスを筆頭に、ほとんどの選手がヨーロッパのクラブでプレーしている。ヨーロッパのビッグクラブの草刈り場になっている感もぬぐえず、実際に国内リーグが空洞化して久しいが、それでも人口わずか336万人の小国がなぜも次々と優秀な選手を輩出しているのか。
勝利への怨念とも呼ぶべき強靭なメンタルの源泉を探るだけでなく、若手年代からの育成システムも日本はおおいに参考にするべきではないだろうか。日本がこれからも堅守速攻路線を踏襲するのであれば、意思が統一されたウルグアイの戦い方はその最高のお手本になる。
その意味では、組み分けを含めた詳細はこれからになるが、来年7月にアルゼンチンで開催されるコパ・アメリカ(南米選手権)に日本が招待参加することは大歓迎だ。
ウルグアイとは2008年8月に札幌ドームで対戦し、1対3で完敗を喫している。この時は親善試合で、日本も直後に始まるW杯アジア最終予選の選手選考のテストを兼ねていた。南米各国が目の色を変えて臨んでくる文字通りの戦争の場で、願わくばアルゼンチンと並ぶ最多の優勝14回を誇るウルグアイと対戦できれば。W杯ブラジル大会へ向けて新たなスタートを切る日本にとって、足りないものを身をもって吸収するまたとない機会になるはずだ。
2010年7月 7日 18:40|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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