Home > 本日の論! > 新チェアマン誕生で封印される秋春シーズン制移行  by 藤江直人

新チェアマン誕生で封印される秋春シーズン制移行  by 藤江直人

 Jリーグの第4代チェアマンに、鹿島アントラーズの大東和美(おおひがし・かずみ)前社長が29日付けで就任する。
 20日に開かれたJリーグの総会及び臨時理事会で、定年の70歳で退任する鬼武健二チェアマンの後任として満場一致で選出されたものだが、大東氏が次期チェアマンとして一本化されたことがメディアでいっせいに報道されたのは総会のわずか4日前の16日。Jリーグという組織の巨大さを考えた場合、あまりに直前かつ唐突なタイミングだったと言わざるを得ない。


 実際、組織を司るトップの後任者の名前がなかなか伝わってこない状況に、Jリーグのある関係者は「一体どうなっているんだろう」との思いを禁じえなかったという。
 その間、7月に入ると日本サッカー協会の犬飼基昭会長がチェアマンを兼任するという仰天プランも報じられた。はたして水面下で何が起こっていたのか。犬飼チェアマンの選択肢もあったのか。鬼武氏にその点をぶつけてみると、単刀直入な答えが返ってきた。
「ない、ない、ない。そんなこと、ありえないですよ」


 もっとも、火のないところに煙は立たないと言われるるように、犬飼会長がチェアマンを兼任する動きはあったと見た方がいいだろう。仮にそうなった場合、同会長の悲願である「Jリーグ秋春シーズン制」へスムーズに移行できるというメリットが生じる。
 一方の鬼武氏は、昨年3月のJリーグ将来構想委員会で、Jクラブの総意として「各クラブの経営にマイナスの影響が出る」として現状の春秋シーズン制を堅持することを決定している。自らの退任とともに、その決定が覆される事態を迎えることだけは避けたかったはずだ。


 2010年が明けて早々に、鬼武氏はJリーグの理事を務めていた大東氏に次期チェアマンのバトンを託したい旨を伝えたという。
 鬼武氏はその理由として(1)Jクラブの経営をされた。それも1、2年ではなく4、5年のスパンで(2)スポーツに対して理解がある(3)決断力と決定力があり、信念と覚悟がぶれない(4)健康で体力があって明るい―の4点を挙げた上で「彼しかいない。かなり前から意識していた」と意中の人物だったことを明かしている。


 これには、もうひとつ、秘められた5番目の理由があったと見ていいだろう。もちろん、大東氏が現状の春秋シーズン制の堅持に賛同していることに他ならない。
 日本代表キャップ6をもつラグビー界出身の異色社長としてアントラーズのトップに就任したのがわずか4年前。当然、次期チェアマン就任は青天の霹靂に近い思いだったが、3月の終わりには「いまのステージを変えて意欲的に取り組んでみようと思うようになった」と受諾の意思を伝えたという。もちろん、20日の会見では春秋シーズン制を堅持することを明言した。


大東新チェアマン「すでに昨年の段階で方向性は出たと認識している。今後の日本サッカー界の発展のためにスタジアムやアクセスなどの環境の変化があれば議論することになるかもしれないが、現状では東北や日本海地域のチームからの理解は得られないと思っている」
 記者会見後に行われた懇親会でも、不退転の決意にも通じる持論が展開された。
大東新チェアマン「ヨーロッパを見ても春秋シーズン制で行っているリーグもある。すべてがすべて、秋春シーズン制がいいとは限らない」


 アントラーズ社長時代からのモットーは「ロマンとソロバン」。チームの強化をロマン、経営の強化をソロバンに例え、強化は2007年シーズンから続く前人未踏のリーグ3連覇を、経営では同じく2007年からの3年連続の単年度黒字達成で目標を成就させてきた。
 同じ理念を今度はJリーグのトップとして現在37を数えるJクラブに求めることになる。大分トリニータや東京ヴェルディの経営難が深刻化する中で「私は赤(字)が大嫌い。(アントラーズの)ユニホームの赤は好きだけど(笑)」と特に経営の強化を重点課題に挙げる方針だ。


 任期は一期2年だが、10月で62歳になる若さと、早稲田大学ラグビーのキャプテンとして日本選手権優勝を勝ち取った馬力とリーダーシップを考えれば長期政権になる可能性もある。当然、大東チェアマンの間は秋春シーズン制への移行も封印されることが濃厚だ。
「降雪地域のチームを抱えるリーグの宿命。(降雪地域に)真冬でもはってでも行きたいというスタジアムができれば別だけど、それには5年も10年もかかる。(春秋シーズン制の堅持は)私の中ではとっくに結論が出ていること。次のチェアマンはわからないけどね」


 Jリーグ名誉会員に就任する鬼武氏は、ギリギリまで名前を伏せてきた大東氏へ無事にチェアマン職をバトンタッチできたことに安どの表情を浮かべ、あらためて意を強くしていた。
 25日に日本協会会長に再選されることが濃厚な犬飼会長はおそらく秋春シーズン制移行への主張を曲げないはずだが、一方でトリニータやヴェルディ以外にも経営に問題を抱えるクラブが少なくない。まずは何が喫緊の問題なのか。車に例えれば両輪をなす日本協会とJリーグのトップには、日本サッカー界が迅速に正しい方向へと進む議論が求められる。

2010年7月23日 14:44|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

トラックバック(0)

この記事のトラックバックURL: http://sv62.wadax.ne.jp/~sports-times-jp/mt/mt-tb.cgi/409

コメント(0)

コメントを書く