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異例の会長交代で出遅れた日本代表新監督の人選 by 藤江直人
日本サッカー協会の技術委員会が推挙した人物に対して会長がOKを出し、最終的には理事会で承認される。日本の場合、代表監督選出の手順はこうした流れが原則とされてきた。
新生日本代表の初戦は9月4日。相手はW杯南アフリカ大会の決勝トーナメント1回戦でPK戦の末に苦杯をなめたパラグアイ代表と、日本国内で対戦することが決まっている。
一方で、日本協会の理事会は8月には開催されず、次は9月9日まで日程が空く。それらを考えれば、25日の理事会及び評議員会で何らかの決定がなされてしかるべきだった。
しかし、日本サッカー協会を取りまく状況はそれどころではなかった。最初にOKを出す会長を新たに選出しなければならなかったのだから無理もない。
2期目の続投が既定路線とされていた犬飼基昭会長に代わる第12代会長に選出されたのは、2002年から国際サッカー連盟(FIFA)理事も務める小倉純二副会長。その就任会見の席で、注目の新監督人事については「アジアの予選やW杯を総括して次の適任者を決めないといけない。大仁と原に全面的に委任するし、信頼している」と原則論を語るにとどまった。
大仁とは技術担当の副会長として留任が決まった大仁邦弥氏で、原とは特認理事から理事へ昇格することが決まった技術委員会の原博実委員長。前者は同席した新役員会見の席上で終始表情をこわばらせ、後者は後任監督人選のため海外滞在中で理事会を欠席した。
ジーコ、イビチャ・オシム元監督の例を見れば、W杯が終わって間もなく次期日本代表監督候補として一本化され、それぞれ2002年、2006年の7月中には就任が決まっていた。過去の選出事例と照らし合わせても、スピード感が大きく欠けている点は否めない。
岡田武史監督に率いられた日本代表の戦いを総括するレポートは、すでに原技術委員長から犬飼前会長宛に15日に提出されている。しかし、小倉新会長によれば、日本代表チームが今後に進むべき方向性に関する提言はまだ技術委員会から上がってきていないという。
日本代表が南アの地から凱旋帰国してからすでに1か月近い時間が経過している。その点を突っ込まれた大仁副会長は「新監督の選出のリミット? 分からない。原に聞いて」と日本にいない人物の名前を言い残すと、足早にエレベーターに乗り込んで姿を消してしまった。
まさに無駄な時間が浪費されてきたとも言えるが、その間、水面下では異例とも言える日本サッカー協会内の「権力闘争」が繰り広げられていたことは想像に難くない。
2008年に当時の川淵三郎会長からバトンを託された犬飼前会長は、慣例とされている「2期4年」をまっとうできるという前提で就任していた。7月5日に68歳を迎えた犬飼氏は日本サッカー協会の役員の定年となる70歳にちょうど1期分を残しているし、実際、W杯開幕直前の5月下旬には次期役員改選についてこう語りながら続投に意欲満々だった。
犬飼前会長「次期役員推薦委員会が決めることで、いままで2年間やってきたことがどう見られるかになるが、継続してやれ、と言われればやります」
日本が開催国として立候補している2022年のW杯では、5月に南米各国を訪問して積極的なロビー活動を展開。今年1月にスペイン協会と締結した若手育成、技術指導に関する包括的な協定を、今後はドイツ、フランス、メキシコの各協会とも結ぶ壮大なプランも披露していた。それだけに、配布された犬飼氏の退任コメントに違和感を覚えずにはいられなかった。
犬飼前会長「途中、幾度となく体調を崩したりした中で今後の2年間を考えた時、この責務を全うするための気力、体力を維持することができないと判断し、この度、辞任することを決意しました。(中略)実は、ワールドカップ開幕前に、私を推薦して下さった川淵名誉会長に辞意を申し出ました。川淵名誉会長からは強く慰留され、最後まで思いとどまるように説得されましたが、私が描いたビジョンが部長以下スタッフに浸透してきたことから、後顧の憂いなくバトンを渡すことができると確信し、辞任に至った次第です」
続投へ並々ならぬ決意を表明していたW杯前に辞意を申し出ていたとは到底考えにくいし、言葉は悪くなるが、いかにも事態の沈静化を図るような配慮が文面から伝わってくる。
会長を含めた新役員の選出は(1)川淵三郎名誉会長が委員長を務める次期役員候補推薦委員会が骨格をまとめ(2)日本協会の常務理事会で確認(3)評議員会の承認を受けた上で新理事による互選で決まる、という手順となる。今回は(1)の部分でいきなり難航し、7月14日に第1回が予定されていた会合が最終的に22日までずれ込んでいる。
常務理事からの異例の抜擢で犬飼氏を後任に据えた川淵名誉会長は続投を骨子とする人事案をまとめようとしたが、犬飼氏の強引とも言える協会運営手法に嫌悪感を抱いていた幹部が猛反発。ある関係者は「犬飼氏と刺し違えてもいいと言う人間もいた」とも語る。
Jリーグの秋春シーズン制移行に関するJリーグの鬼武健二チェアマン(当時)との対立に代表される歯に衣を着せない発言や、独断専行の形で決めた2022年のW杯招致。改革・急進派といえば聞こえはいいが、実情は犬飼氏に対して「何でもかんでも急いで決めすぎる」と眉をひそめる日本協会関係者は少なくなく、ほとんど「裸の王様」状態だったという。
それを物語るかのように、次期役員候補推薦委員会で理事25人の無記名投票で会長人事に関する意見を集約すると犬飼氏への票が伸びず、信任を得るまでに至らなかった。
これでは収集がつかなくなる、と判断した次期役員候補推薦委員会は小倉副会長の昇格を骨子とする案を急きょまとめたが、新会長は8月に72歳を迎える。FIFA理事を務めていることで「役員は就任時70歳未満」という協会既定の例外となる小倉会長は世界のサッカー界に顔が利き、明るい性格で協会内の人望も厚いが、そのFIFA理事も来年5月に退任する。就任会見では「1期2年」で退くことも明言し、次代を担う人材への「つなぎ」であることを自ら認めた。
実際、小倉氏は2年前の役員改選時にも会長候補に名前が挙がりながら「FIFA理事との両立は難しくてできない」と立ち消えになっている。
それだけを見ても今回の就任が緊急登板であることがうかがえるし、犬飼氏の後ろ盾だった川淵名誉会長が自身への責任論が及ぶ事態を回避させたかったという思惑も透けてくる。まさに梯子を外された形の犬飼氏は25日の理事会及び評議員会に姿を見せず、2年前に同氏が三顧の礼で迎えた平尾誠二、クルム伊達公子の両理事もわずか一期で退任する。
代わりに小倉新会長の指名で美術家の日比野克彦氏と、南アフリカで日本代表を率いた岡田武史監督が新たに理事に就任。岡田理事は得意とする環境分野を担当するという。犬飼氏との不仲が伝えられた田嶋幸三専務理事が51歳の若さで副会長を兼任するなど、まさに「犬飼色」が一掃された今回の人事だが、当然ながらファン不在の感はぬぐえない。
ライバル韓国はすでに韓国人のチョ・グァンレ新監督が就任。パラグアイも南アで指揮を執ったアルゼンチン人のヘラルド・マルティーノ監督が続投する。8月11日の国際Aマッチデーには王者スペインやアルゼンチン、ドイツ、日本に屈したデンマークも新チームで船出する。
この点だけを見ても、日本は大きく出遅れている、と言わざるをえない。小倉新会長のもとに後任の日本代表監督候補の名前がまだ報告されていない状況では、原技術委員長が意中とする人物との交渉開始までまだ相当の時間を要するのは必至だ。
小倉新会長は9月9日の日本協会理事会で新監督就任を「追認」する形もあると明言し、従来の手順にこだわらない柔軟な姿勢も見せたが、その一方で「急ぐよりいい監督を。大切なのは日本代表が2014年のW杯に出場すること。間に合わなければ原がいる」と状況によっては9月4日のパラグアイ戦を原博実監督代行で迎えることもほのめかした。
日本代表が予想を覆す快進撃を続け、感動的な戦いを続けた南アフリカ大会。自国開催大会以外では史上初の決勝トーナメント進出を決めたことで、前回ドイツ大会で喫した惨敗を引きがねにファン離れが加速していたサッカーへの注目度が再び急上昇に転じた。
Jリーグはこの熱気を集客アップにつなげたいとあれこれプランを練っているが、最大の求心力となるべき日本代表チームの動きが停滞。それもファンのあずかり知らぬ密室で繰り広げられた人事抗争が原因となればムードは一気にしらけ、潮は瞬く間に引いていく。
ましてや、目新しいカラーを何ひとつ打ち出せない中で「新生日本代表の船出」と謳えばどのような事態を招くか。誰の目に見ても明らかだし、因縁のパラグアイを招く意味もない。
新監督に就く人物も、せめて8月のJリーグを実際に視察した上で代表選手を選出したいはずだ。となると、残された時間は極めて少ない。一方で、優秀とされる人材はどんどん新たな契約を結んでいく。後になって「失われた2010年7月」と非難されないためにも、新たにスタートした日本協会の執行部や技術委員会にはより迅速な行動と対応が求められる。
少なくとも「分からない」とか「原に聞いて」と言っている場合ではない。
2010年7月26日 06:20|記事URL|コメント(3)|トラックバック(0)
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コメント(3)
こんな協会って日本だけなのでしょうか?こういうゴタゴタは、世界のどこのサッカー協会でもあるものなんでしょうか?
次期日本代表監督選びは、これまでは早かった気がします。川渕の「あっ、言っちゃったね」発言とか・・・急ぎすぎておかしな人選するなら、多少時間がかかってもしっかりこの監督だ!と思う人とじっくり交渉してほしいです。
攻撃サッカーを信条とする監督を連れて来てほしいですね。交渉が難航して結局、何のビジョンもないままJリーグと繋がりがあるという理由だけで、ブッフバルトを選ぶのだけはやめてほしいです。鹿島のオリベイラにも同じ事が言えるはずです。有能な監督ですが、Jリーグで監督をやっている、日本人をよく知っている、という安易な考えで日本代表を任せたら、痛い目にあうのは必至です。
ナオキ様
いつもコメントありがとうございます。返信が遅くなって申し訳ありません。犬飼基昭氏が日本協会会長に再選されなかったことで、ナオキさんが危惧しているギド・ブッフバルト就任の可能性は消滅したと言ってもいいでしょう。
昨日の報道では候補は3人に絞られたとのことですが、やはり過去2回のW杯後と比べても代表監督選出の動きは遅いと言わざるを得ません。ブラジルやアルゼンチンも新監督選出でゴタゴタがありましたが、協会内の権力闘争の煽りを受けて動きが停滞していた日本のレベルははるかに劣悪です。
救いなのは、次期監督の交渉を一任されている原博実技術委員長が犬飼前会長と行動をともにして辞任しなかったこと。もし原委員長までが辞任していたらすべてが白紙に戻るところでした。そうなれば、9月4日のパラグアイ戦まで時間がない、ならば日本をよく知っている人を、という理由で鹿島のオズワルド・オリヴェイラ監督に白羽の矢が立てられたかもしれません。ともかく、事態の推移を見守りたいと思います。
こちらこそいつも返信ありがとうございます。お忙しい中すみません。自分のコメントに反応があると嬉しいです。
今回の会長交代劇は「クーデター」だ、って声もあるそうですが、本当のところどうなんでしょう???
技術委員長の原さんが辞めなかったのは、よかったです、同感です。協会内では、原さんは、まともな考えを持った数少ない方だと思います。
ビエルサは、チリと代表監督契約延長したようですね。ビエルサが指揮する日本代表、見たかったです。
ペケルマンもないですかね?五輪代表とフル代表を兼任させたいならペケルマンは、適任だと思います。
スペインとパイプがある原さんなので、スペイン人監督を連れてくる可能性もけっこう大なのではないでしょうか?
前川崎F監督の関塚さんが、代表コーチとして入閣か!?というニュースは嬉しいです。中村ケンゴが好きで、川崎Fサポーターでして。
関さんは、代表の力になると信じています。
長々とすみません。またコメントします。
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