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指揮官の悲痛な叫び。清水エスパルスが迎えた正念場  by 藤江直人

■J1第19節
アルビレックス新潟[勝ち点31] 4‐1(前半2‐0) 清水エスパルス[勝ち点36]
[8月17日午後7時キックオフ/東北電力ビッグスワンスタジアム/観衆3万0076人]


 Jリーグ史上で最も印象に残るハーフタイムコメントと言ってもいいだろう。
「中2日。移動して疲れているのは分かるが、相手に負けるな!」
「この展開では昨年と一緒。お前たちを信じている」
 前半の戦いを総括した上での戦術的な確認事項が並ぶのがこれまでのハーフタイムコメントの常だったが、アルビレックス新潟に2点のリードを許した清水エスパルスの長谷川健太監督のそれからは、悲痛な叫びに近いものが伝わってきた。最後にはこう綴られている。
「1点取れば、この試合、まだ分からないぞ!!」


 その前半に放たれたシュートはMF兵働昭弘の2本のみ。決定的な場面はゼロだった。
「チーム全体で動きにキレも覇気もない状態。攻め手も何もなかった」
 嘆く司令塔の小野伸二に、W杯南アフリカ大会を戦ったFW岡崎慎司も続いた。
「動けないなりの戦い方があるはずなのに、先制されて気持ちが落ちてしまった」
 もはや戦術うんぬん以前の問題。わずか15分間のハーフタイムで気力を奮い立たせ、疲弊した体にエネルギーを補充するしか手立ては見つからない。長谷川監督が発した「信じている」にはそんな思いが込められていたが、悲しいかな、笛吹けど選手たちは躍らなかった。


 後半開始からわずか4分。次の1点を奪ったのはアルビレックスだった。
 FWミシェウのスルーパスに抜け出したFW矢野貴章が豪快に右足を振り抜いた瞬間、勝負は決した。ロスタイムにもPKを献上するなど、4失点は今シーズンにおけるワースト。3位に後退してしまった現実を、長谷川監督も素直に受け入れるしかなかった。
「選手はよく戦ったが、中2日で新潟に移動するのはきつかった。特に前半は選手たちの体が非常に重たいと思った。いつものアグレッシブさが影を潜め、相手に自由にやられてしまった。遠路はるばる応援に駆けつけてくれたサポーターの期待に応えられなかった。申し訳ない」

 
 ともに前節で黒星を喫したチーム同士の対戦。連続無敗記録を「11」で止められたアルビレックスの選手たちの動きは、ホームの大声援と中3日という日程のアドバンテージとあいまって確かに鋭かった。しかし、それ以上にエスパルスの状態が酷すぎた。
 ホームのアウトソーシングスタジアム日本平で横浜F・マリノスに屈したのが3日前。異常ともいえる酷暑が続いていることを考慮すれば、わずか2日間の練習で気力と体力を回復させるのは至難の業。日程は公平に作成されているはずだが、焦る気持ちに体がついていかない選手たちを見ていると、この時期の過密日程にはどうしても首をひねりたくなる。


 もっとも、エスパルスにとって問題は蓄積疲労だけにとどまらない。
 長谷川監督のハーフタイムコメントに「この展開では昨年と一緒」と記されているように、エスパルスには大きなトラウマが刻まれている。
 夏場から13戦無敗と破竹の快進撃を続け、実に10年ぶりとなる首位に立ったのは昨年10月3日。この時点で残りは6節。就任5シーズン目の長谷川監督の厳しい指導のもと、初のJ1初制覇となって大輪の花を咲かせるかと思われた矢先に今度は13年ぶりとなる5連敗を喫してしまう。終わってみれば7位。「重圧と言われても仕方ない」と兵働は振り返っている。

 
 今シーズンを振り返れば、7日の王者・鹿島アントラーズ戦で劇的な勝利を収めて首位ターンを決めた直後から初の連敗を喫した。ネガティブな予感が顔をもたげるのも無理はない。
「苦しい状況で何もできなかった自分自身に責任を感じている」
 発展途上のチームに経験を注入する役割をも担い、ブンデスリーガのボーフムから加入した小野も動きに精彩を欠いたまま後半20分に交代を命じられた。優勝戦線に残れるのか。悪夢が繰り返されるのか。「昨年はズルズルと連敗が5にまで伸びた。ここからが真価を問われる戦いになる」とチーム関係者が表情を引き締めたように、まさに正念場を迎えている。


 選手たちもそのことを肌で感じているのだろう。岡崎がチーム全体の決意を代弁する。
「長いシーズンにはこういう時期が必ず訪れる。そこで最低でも勝ち点1を取れないところが、まだまだ未熟なんだと思う。でも、終わったことをあれこれ言っても仕方ない。次の試合で必ず勝つ。それだけの強いメンタリティーがないといけない」
 次節は通算成績で13勝4分け20敗と負け越しているジュビロ磐田との静岡ダービー。ここ数年はふがいない成績が続くジュビロだが、エスパルス相手には目の色を変えて臨んでくる。7月17日の対戦でも、エスパルスのホームでスコアレスドローに持ち込み意地を見せた。


 幸いにも22日のジュビロ戦へは中4日で臨める。翌23日からは2日間のオフを設け、心身ともに疲れ切った選手たちをリフレッシュさせる予定だ。真夏のバトルも残り2試合。「お前たちを信じている」と異例のハーフタイムコメントを残した指揮官は「しっかりとコンディションを整えて、いい準備をしたい」と下を向くことなく静岡ダービーを次なる照準に定めた。
 7勝3分けと開幕ダッシュに成功した今シーズン。5月8日に初黒星をつけられたアルビレックスには残念ながら返り討ちにあってしまったが、9月25日の名古屋グランパス、10月2日のアントラーズと続く「秋の大一番」を前に、このまま失速するつもりは毛頭ない。

2010年8月18日 16:33|記事URLコメント(0)トラックバック(0)

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