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湘南ベルマーレ社長が掲げたJ1残留へのハードル by 藤江直人
■J1第19節
湘南ベルマーレ[勝ち点14] 2‐2(前半0‐0) 京都サンガ[勝ち点11]
[8月18日午後7時キックオフ@平塚競技場/観衆9302人]
今シーズンのJ1優勝戦線も大激戦の様相を呈してきた。名古屋グランパス、鹿島アントラーズ、清水エスパルス、川崎フロンターレと勝ち点3差の中に4チームがひしめきあい、夏場に入って調子を上げてきたセレッソ、ガンバの大阪勢も虎視眈々と殴りこみを狙っている。
毎年のようにドラマを生み出す最終節は12月4日。それまでは目が離せない展開が続くが、一方でJ1残留へ向けた戦いも本格化してきた。16位以下の3チームがJ2に自動降格するシステムは今シーズンも変わらないが、残留への目安となる勝ち点のボーダーラインが過去2シーズンと比べて減少する、とJリーグ関係者の間では見られている。
15位で残留したチームの勝ち点を見ると、2008年はジェフ千葉が「38」、昨シーズンは大宮アルディージャ、ヴィッセル神戸、モンテディオ山形が「39」で並んでいる。こうした流れから、今シーズンの目安は開幕当初から「40」なら間違いなし、とされてきた。
「確かにそう言われてきたけど、いまは38から35にまで下がってきた、と思っている」
11年ぶりのJ1復帰を果たしながら苦しい戦いを余儀なくされ、第19節を終えた時点で17位に低迷している湘南ベルマーレの眞壁潔社長はこう数字を弾く。3勝5分け11敗で勝ち点「14」のベルマーレに当てはめれば、あと「21」、ちょうど7勝分が必要になる計算だ。
ボーダーラインが当初予測より下がったのはなぜか。理由はJ1全体の「二極化」にある。
これまでならシーズンも折り返し点の第17節を過ぎると
(1)J1優勝を含めて翌シーズンのACL出場権を獲得できる上位を狙うチーム
(2)負けないことを第一義的に戦い、何がなんでもJ1残留を目指すチーム
(3)そのどちらでもなく、シーズンの目標を半ば見失ってしまったかのようなチーム
の3つに分けることができた。しかし、現時点において、今シーズンのJ1には(3)のグループに分類されそうなチームがなかなか見当たらない。
徹底した堅守速攻が酷暑の中での戦いに見事にはまり、すべて1対0で3連勝をマーク。苦杯をなめた横浜F・マリノスの木村和司監督をして「あの徹底ぶりが怖い」と言わしめ、9位にまで急上昇してきた絶好調のモンテディオまでが(1)に入ると見ていいだろう。
一方で3連敗中の10位のサンフレッチェ広島は、ミハイロ・ペドロヴィッチ監督自身が「チーム自体が難しい時期に来ている」とギブアップ宣言とも受け取れる弱音を吐露。W杯による中断から再開された7試合で1勝1分け5敗と失速に歯止めがかからず、11位とかつては考えられない位置に低迷している浦和レッズとともになかなか光明を見いだせないでいる。
しかも、12位のアルディージャから16位のベガルタ仙台まではダンゴ状態。チーム状態やこれまでの勝ち点の伸び具合から見ても(2)に舵を切らざるを得ないチームとなる。
この中には昨シーズンのナビスカップを制したFC東京も含まれ、日本代表DFの今野泰幸も「危機感があります」と現状に警鐘を鳴らしている。今後はこうした(2)のグループが(1)への勝ち点供給源=草刈り場となりかねず、その一方で(2)のグループ同士が星を潰し合う。残留へのボーダーラインが下がると予測される理由がここにある。
だからこそ、これからの1勝はもちろん、引き分けで勝ち点1を拾っていくことも非常に重要になってくる。まず負けないことが12月に胸をなでおろせるか否かを左右する。
その意味では、18日の京都サンガ戦はベルマーレにとって悔恨の結果に終わった。
ベルマーレが勝てばベガルタを抜いて16位に浮上し、サンガが2点差以上をつけて勝てばベルマーレに代わって最下位を脱出できる。ベルマーレは7月18日にサンガに1対0で勝って以来、6戦ぶりの勝利を目指し、そのベルマーレ戦から連敗地獄につかったままのサンガがもし完封負けを喫すれば、7試合連続無得点とJ1ワースト記録を更新する。
あらゆる点で注目を集めた今シーズン最後の直接対決。雨上がりで蒸し暑さと不快指数が増した平塚競技場には、9302人のサポーターと大勢の報道陣とが詰めかけた。
勝ちたいけど、負けたくない。
切実なる思いが両チームからひしひしと伝わってきた前半はスコアレスのまま終了。後半からMFドゥトラを右サイドに投入したサンガが一転して執拗なサイド攻撃を仕掛ける。迎えた後半14分。左サイドを突破したFW金成勇が627分ぶりとなるゴールをチームにもたらすと、まるでリーグ優勝を決めたかのようにサンガの控え選手やスタッフが狂喜乱舞した。
もちろんベルマーレも黙っていない。ゲームキャプテンに指名されたFW田原豊が2年前に解雇された古巣相手に奮起。24分に豪快な同点弾を突き刺し、36分にはペナルティーエリアへの強引な侵入から勝ち越しとなるMFエメルソンのPKをゲットした。
残り10分あまり。しかし、眞壁社長の脳裏を不安がかすめたのもこの時間帯からだった。
「勝ちたいあまりに、全体が引きすぎちゃう。去年のJ2の時はこうじゃなかった」
4分が提示された後半ロスタイム。途中から出場していたFW柳沢敦のヘディングシュートがバー、MF角田誠の一撃が右ポストを叩くと、社長が抱く不安により拍車がかかる。
「シュートを打たれること自体がダメなんだよ。ああいう時こそ前に行かないと」
勝利の神様は3度目の幸運までは与えてくれなかった。角田のシュートのこぼれ球を拾われ、クロスを上げられ、再び柳沢が体勢を崩しながら左足を一閃すると―。
当たり損ねのシュートがワンバウンドして、ベルマーレ守備陣の頭上を超えていく。前へ詰められないどころか、今度は動くことすらできない。コマ送りのようにボールが緩やかにゴールへ吸い込まれる。試合後の公式会見。反町康治監督も最後のプレーに珍しく感情的になった。
「選手全員が(ボールを)見ちゃっている。人に対する厳しさの面で物足りなさが残る。サッカーに対する甘さがあったというか......私を含めて深く反省している」
目の前でするりと逃げた4勝目。終了とほぼ同時に再び降り始めた大雨に、眞壁社長も「これがサッカー。涙雨かな」と苦笑いした。「勝ち点35」が口を突いたのはこの直後だ。
サンガ戦を終えた時点で残りは15試合。最大にして唯一の目標となるJ1残留へ向けて新たに設定されたボーダーライン「35」に到達するには、「21」もの勝ち点を積み上げなければならない。計算上では7勝で届くが、3月の開幕以来のチームの苦闘の軌跡や現有戦力を考えれば6勝3分け、あるいは5勝6分けといった星勘定を現実的な目標とせざるを得ない。
「厳しいことは分かっている。(7勝には)1勝1敗のペースだけど、頑張らないと」
眞壁社長がネバー・ギブ・アップを宣言すれば、反町監督も務めて上を向いた。
「言葉が見つからないが、見つかったところで勝ち点は戻らない。すぐ次の試合も来る」
ベルマーレの日程を見ると、11月14日のエスパルス戦を皮切りにグランパス、ガンバ、セレッソ、アルビレックス新潟と(1)のグループの強敵との5連戦でシーズンを終える。
つまり、21日のレッズ、28日のベガルタ、9月11日のジュビロ磐田と続く(2)のグループとの3連戦は、必然的にJ1残留への可否を左右しかねない正念場となる。
「勝ち切ることが残留ラインに届くカギになる。2試合連続の引き分けで勝ち点を積み重ねたと言っても、1勝すれば簡単にそれを上回る。内容が伴わなくてもいいから勝ちたい」
真夏の段階で「残留」を口にするのは歯がゆい。それでも、11年ぶりのJ1挑戦をこのままで終わらせたくない。なりふりかまわず勝つ。田原の熱い叫びはベルマーレの総意でもある。
2010年8月21日 02:10|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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