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難航する日本代表監督選定とJクラブが募らせる不信感 by 藤江直人
岡田武史監督の後任となるサッカー日本代表の新監督がいっこうに決まらない。
日本協会は当初、今月16日に新監督及び新体制を発表するスケジュールを組んでいた。しかし、ヨーロッパで意中の人物の代理人と交渉に当たっている原博実強化担当技術委員長から吉報は届かない。1週間がすぎた23日になっても依然として進展はないという。
原委員長とともに新監督選定に当たる立場の大仁邦弥副会長は、交渉ごとに対する見通しの甘さを指摘する声に「そう思われても仕方ない」と半ば開き直った態度を見せる始末。しかも、その副会長自身が先週を夏季休暇に充てていたというから拍子抜けしてしまう。
現時点における筆頭候補はFCポルトやベティス、セルタ、サラゴサで監督を務めた経験のあるスペイン人のビクトル・フェルナンデス氏とされているが、スペイン在住の日本人ジャーナリストは「スペイン人という点でまず不安がある」とこう指摘する。
「スペイン人はものすごく寂しがり屋でホームシックになりやすい。もし遠い日本で日本代表の指揮を執ることになれば、引き連れてくるスタッフの数は1人や2人では済まない」
ヘッドコーチにGKコーチ、フィジカルコーチら4、5人が要求された場合、その家族らを含めた滞在費や母国との往復航空運賃などの負担で予算は軽くパンクしてしまう。
条件面で交渉が難航しているという報道は的を射ている、と言ってもいいだろう。
実際、クラブチームを含めた世界を見渡しても、国外で指揮を執る著名なスペイン人指導者はインテルのラファエル・ベニテス監督くらいしか思い浮かばない。
新聞報道では同じくスペイン人で元ビジャレアル監督のエルネスト・バルベルデ氏も3人の最終候補の一人として名前が挙げられていた。バルベルデ氏は古巣のオリンピアコス監督に復帰したが、そもそもなぜスペイン人の指導者がいいのか。W杯南アフリカ大会でスペイン代表が悲願の世界一を勝ち取ったからなのか。かつてはリーガ・エスパニョーラの解説者を務め、スペインサッカーへ憧れに近い思い入れのある原委員長の志向が影響しているのか。
8月の上旬に日本協会の小倉純二新会長のインタビュー取材を行った際、求めている新監督像については「点を取ることのできるサッカーを構築できる人」と明言している。
確かにスペイン代表の華麗なパスサッカーはW杯を制したが、すべてのスペイン人指導者がスペイン代表やバルセロナ、レアル・マドリッドのようなサッカーを志向しているとは限らない。バルセロナとレアル・マドリッドの2強に対抗するために、堅守速攻のスタイルで臨むチームも決して少なくない。エスパニョールの中盤を省略したカウンターサッカーの中で中村俊輔が居場所を失い、シーズン途中で退団したのはその典型的な例と言えるはずだ。
小倉会長は新監督人事について「付け焼刃はよくない」とも言及している。南アフリカ大会における日本代表の戦いの跡をしっかりと総括した上で、2014年のブラジル大会までの4年間を託すことのできる指導者を招へいする考えにはもちろん大賛成だ。
ディエゴ・マラドーナ氏を解任したアルゼンチンは、代行監督で先の親善試合を戦った。しかし、日本の場合は事情が大きく異なる。9月4日にパラグアイ、7日にはグアテマラを招いて親善試合を行うことがまず決定。特に南アフリカ大会でPK戦の末に苦杯をなめたパラグアイとの一戦は「リベンジ」という言葉とともに、新生日本代表の船出として位置づけられている。
しかし、肝心の「船頭」が決まらない。労働ビザの取得など時間的な問題を考えれば、外国人監督が9月の2試合で指揮を執る可能性は極めて小さくなったと言わざるを得ない。
代表選手は今週中に発表される予定だが、現状では技術委員会が選考に当たることになる。こうした状況に、選手を送り出すJクラブは日本協会へ不信感を募らせている。
「監督が決まらないのに試合をする必要があるのか、ということ。(大仁)副会長や(原)技術委員長が(代表選手を)決めて一体どうするの。スポンサーのための試合でしょう」
あるチームの関係者は呆れ果てた表情でこう言い放った。
9月1日と8日にはナビスコカップの準々決勝が組まれ、同5日には天皇杯2回戦も全国各地で行われる。特に天皇杯に関しては、犬飼基昭前会長のツルの一声でJクラブ勢は2回戦からの登場を命じられ、しかもベストメンバーでの試合を求められている。
「それで代表招集って、現場を軽視しているとしか考えられない。あまりにもおかしい」
半ば興行的な代表招集に前出の関係者が吐き捨てれば、別のチーム関係者もこう続いた。
「このタイミングで集まれ、と言われてもきついし難しい。特にヨーロッパはシーズンが始まったばかり。大事な時期に監督不在の日本に呼ばれれば、いろいろな意見が出てくると思う」
日本代表チームの強化につながる、という親善試合本来の目的ならばJクラブ側も喜んで所属選手を送り出すだろう。それが新監督の注目の初陣となれば、なおさらだ。
大仁副会長は「ここまで延びるのは予想外だった」と日本協会側の不手際を認める発言も残している。24日には原委員長が一時帰国し、夕方に状況説明会見を行う。果たして、ファンを納得させ、Jクラブ側が募らせる不信感を解消させることができるのか。
交渉の経緯と現状や今後はもちろん、意中の人物に白羽の矢を立てた理由、日本代表の敗退後も原委員長が南アの地に留まり、スペインが登場した決勝戦までを観戦した必要性や新監督選定における初動の遅れの有無など、説明責任が果たされてしかるべき点は多い。
2010年8月24日 01:03|記事URL|コメント(0)|トラックバック(0)
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