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ザッケローニ新監督に全権委任しての船出でいいのか  by 藤江直人

ザッケローニ新監督に全権委任しての船出でいいのか  by  藤江直人

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 日本代表のアルベルト・ザッケローニ新監督が17日に母国イタリアから再来日した。
 11日間だった前回滞在時は基本的に観光客扱いとなり、4日のパラグアイ戦、7日のグアテマラ戦ともスタンドで観戦せざるを得なかった。今回は就労ビザを取得し、コンビを組んで27年目になるヘッドコーチのステファノ・アグレスティ氏ら4人の腹心スタッフを引き連れての来日。JFAハウスで行われた囲み取材では並々ならぬ決意とやる気が伝わってきた。
「前回よりさらにハッピーな気持ちだ。荷物もたくさん持ってきた。ようやく日本をベースに活動できる。これから戦うべき大会へ向けて自分の目で選手を選べる。非常に楽しみだ」


 さっそく今日18日には名古屋で名古屋グランパス対横浜F・マリノス、大阪ではガンバ大阪対セレッソ大阪と昼夜はしごでJ1を視察。翌日にはアルビレックス新潟対京都サンガが行われる新潟へ飛び、他のスタッフも分散して2日間でそれぞれ2試合ずつを観戦する。
 ようやく本格的に始動する新生日本代表。特に57歳とは思えないザッケローニ新監督の行動力は頼もしい限りだが、同時に気なる点も見え隠れする。初陣となる10月8日のアルゼンチン戦までに視察できるのはわずか3節。あまりにも時間が限られている中で、日本サッカー協会として助言をするなり、必要な情報を提供することが必要になるのではないか。


 しかしながら、原博実強化担当技術委員長の発言は実に素っ気ないものだった。
「この前見たから、ある程度は分かっていると思う。聞かれれば技術委員会として答えるけど、スタッフには関塚も和田も入っているからね。我々はサポートをしていきます」
 この前とは技術委員会主導で代表選手が選考されたパラグアイとグアテマラ戦。関塚とは日本人コーチとして入閣する関塚隆・前川崎フロンターレ監督を、和田とはジーコ時代から分析のスペシャリストとしてチームをサポートしてきた和田一郎アシスタントコーチを指しているが、果たしてこれで十分なのか。首を傾げたくなるのは「聞かれれば」という部分だ。


 発売中の『論スポ』では、紆余曲折を重ねた今回の次期日本代表選定問題について、日本サッカー界に携わっているいろいろな方々の意見を掲載している。
 その中でイビチャ・オシム元日本代表監督と、評論家で日本サッカー協会理事の風間八宏氏に共通しているのが「新監督に何を求めるのか」だった。特に風間氏はこう指摘している。
「今後の日本に求められるのは『どう』するのかを明確にすること。英語に訳せば『HOW』となるが、それを決めるのは監督じゃない。日本協会です。(中略)工事現場に例えれば監督はあくまで棟梁であり、設計図を描く優秀なプランナーがいなければ話にならない」


 ここで言うプランナーとはもちろん日本協会であり、常に能動的な立場で現場と意見を交わしていかなければ、日本代表の進むべき道はその都度監督任せとなってしまう。
 実際、トルシエ氏、ジーコ氏、オシム氏、そして岡田武史氏と、これまでは代表監督が代わるたびに目指すスタイルも変わってきた。自国開催大会以外では初めてとなる決勝トーナメント進出を南アフリカの地で果たし、5大会連続のW杯出場を目指す今だからこそ、日本代表がこれから何世代にもわたって共有できる「土台」を明確にすべきだと風間氏は説いている。
 その上で今回はイタリア人指揮官の力を借りる。いわば主従の関係が望まれるわけだ。


 もちろん日本協会が「主」となるはずだが、原委員長の「聞かれれば」や「サポート」という言葉を聞く限りでは、残念ながらすでに「受け身」の状態になっている。
 まだ人選が難航していた8月下旬。原委員長は理想とする監督像について「日本をもうワンランク上のステージに連れて行ってくれる人」と明言している。あまりにも抽象的な表現であり、ワンランク上げるために『どう』すべきかがまったく語られていない。
 スペインサッカー路線のはずがいつの間にか方向転換。水面下でドタバタ劇が繰り広げられていたことは、前ポルトガル代表監督のカルロス・ケイロス氏が「私にも話があった」と日本協会から打診を受けていたことを暴露した一件からも明らかだ。


 ようやくもって契約にこぎつけた相手が、セリエA優勝監督という肩書きをもち、それなりに世界でも名前が知られるザッケローニ氏。技術委員会としては面目が保てたかもしれないが、だからと言って「ようこそ日本へはるばる来てくれました。これから宜しくお願いします。何かあればいろいろと聞いてください」ではザッケローニ新監督自身も戸惑うのではないか。
 実際、指揮官は「Jリーグはすべて見るつもり。すべての選手に代表への門戸が開かれていると思っていただいていい」と語る一方で、当面の代表選手選考基準をこう明言している。
「W杯を戦ったメンバーを中心に今後は仕事をしていく」


 あまりにも時間と情報とが限られ、ほとんど「お任せ」的になっている現状においては、自分の目で見た直近のパラグアイ戦とグアテマラ戦をベースにするしか術はない。だからなのか、目指すスタイルを聞かれても必然的に中途半端な表現とならざるを得なかった。
「日本人であれ外国人であれ、日本代表というチームの監督になったからには日本人の特徴を尊重しなければならない。そうしたコンセプトをずらすことなく、私がヨーロッパで培った経験をプラスして、スタイルを持った代表チームを作っていきたい。当面の目標は2つある。アルゼンチンに我々の力を試すことと、同時に新しいチームを作っていくことだ」


 言葉は明瞭ながら、それでいてイメージがなかなか沸いてこない。
 日本協会から明確な指針が示されていないのであれば、全権を託されたザッケローニ氏のカラーがより前面に押し出されることになる。結果が重視されるセリエAではまず守備組織をしっかりと構築し、必要最低限の手数で素早く攻める形がひとつの文化として定着している。
 もっとも、そのスタイルは南アフリカで岡田監督に率いられた日本が採った戦い方であり、イコール、ベスト16が精いっぱいのサッカーでもある。新指揮官の采配については現時点で推測の域を出ないが、果たして同じ路線で日本をもうワンランク上に導けるのか。


 連休明けの21日にはザッケローニ新監督と4人の腹心スタッフ、関塚コーチをはじめとする日本人スタッフが一堂に会し、目的意識を共有するための初のミーティングが開催される。
「緊張感もあるが、モチベーションもものすごく高い。最高の仕事をしたい」
 8月31日の就任会見同様に、この日の対応にも温厚で誠実なザッケローニ新監督の人柄があふれ出ていた。仕事に対する意欲も旺盛。だからこそ棟梁に専念できる環境が必須となるが、プランナーとなるべき日本協会の技術委員会はJリーグ技術委員会との統合・再編の過程で事実上の活動休止状態に陥っている。9日の理事会で決まるはずだった新体制も先送りにされた。とてもじゃないが、将来へ向けた日本代表の設計図を描くどころではない。


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2010年9月18日 03:21|記事URLコメント(2)トラックバック(0)

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コメント(2)

はじめまして。
毎回内容の濃いコラムを楽しみに拝読しております。
海外リーグを中心に追いかけている一般サッカーファンです。

私は監督ごとに方向性を変えるな、という最近の風潮に
違和感を覚えています。
WC16強に入ったとはいえ、日本には世界と比してまだまだ足りないものが多いように感じるからです。
もっと色々なものを取り入れるべきだと考えています。


南アWC16強という結果も、第一次岡田政権のフランスWC3連敗の後にトルシエ氏、ジーコ氏、オシム氏それぞれが持ち込んだ
それまでの日本に不足していた要素の積み重ねです。

「コンパクトな状態にして人数をかけたプレッシング」
「選手個々の1対1における責任と自主的判断能力の強化」
「フリーランの強化によるフィジカル的ハンデの克服」

これら3氏がそれぞれの基礎的カラーとして持ち込んだ要素は、いずれもフランスWCの時点では不足していて南アWCでの日本代表では見られたものです。
逆に言えばこれらの積み重ねを否定して岡田氏個人「のみ」の功績であるとは思えないのです。


ですから、今後もまだフランスWC?南アWCの事例のように
まず南アが土台となる上に色々な未知のサッカーを取り入れて、その後に日本人監督のもとでそれらを日本人の特性、メンタリティに合うようオーガナイズする。
これでも良いのではないでしょうか。
貪欲な進取と加工する力が日本人の特長でもあることですから。

「新監督に何を求めるのか」ですが、
ザッケローニ氏に対してはどんどん「ザック流」にやってもらい、また新たな誰も見たことのない日本代表を見せて欲しいですね。
ザッケローニ氏のサッカーはイタリアにおいてはかなり攻撃的なサッカーだったと記憶しています。

それに、本場から来た「棟梁」に比べてそこまで優秀なプランナーが協会にいるとも正直まだ思えないのです。
自分達の組織でゴタゴタしてるようでは…。
新監督の件に限らず、協会にはしっかりしたリーダーシップを発揮していただきたいですね。

ふろむ様


コメントありがとうございます。トルシエ、ジーコ、オシムの3人の歴代日本代表監督が日本代表持ち込んだそれぞれの要素に関する記述、なるほどと共感させられました。


評論家の風間八宏氏とはパラグアイ戦の翌日にじっくりと話をしましたが、南アフリカ大会における収穫を2つ挙げるとすれば、日本の選手全体が自信と勇気を持ったことと、私たちメディアやファンを含む日本のサッカー界に今後へ向けて議論する素地が生まれたことだと強調していました。


ふろむ様のコメントを読み返していくうちに、風間氏が指摘する「議論」という効果を思い出さずにはいられませんでした。新しい日本代表が育っていく上で、ほんの少しでもいいので、こうした「議論」がその一役を担えればこれほど嬉しいことはありません。


私もザッケローニ新監督には遠慮することなく、思う存分に采配をふるって欲しいと考えています。ただ、そのためには「お任せ」ではなく、日本協会が最低限の方向性を示すことが必要だと感じ、9月18日付けのコラムを記した次第です。現時点では、小倉会長は「点を取れるサッカー」、技術委員長の原さんは「ピッチをワイドに使った攻撃的なサッカー」とかなり抽象的ながらも目指す形を口にはしています。


その注文をザッケローニ氏がどのように理解し、チームを色づけていくのか。ふろむ様が指摘するように、日本人の進取の精神は世界に誇れる気質だと思っているので、チームが作られていく過程で、日本サッカー界にとって未知数のイタリアンサッカーをどう吸収&アレンジしていくのか。そうした点をこれからも注視して取材を重ね、このHPのコラムや季刊の総合スポーツ誌『論スポ』誌上にて記していきたいと思います。もっとも、現状において新監督は「私のサッカーは攻撃的と思われているが、私が最も好む言葉は『バランス』だ」と所信を表明しているところが気にはなりますが。


今後もご愛読のほど宜しくお願い致します。


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